探偵の調査費用は裁判で請求できますか? - 不倫の慰謝料に強い大阪の弁護士法人ロイヤーズハイ

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探偵の調査費用は裁判で請求できますか?

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ポイント説明

最近、夫や妻の様子がおかしい。決定的な証拠はないが、どうやら不倫をしているようだ。
このような場合、決定的な証拠を得るために真っ先に思い浮かぶのが「探偵に依頼する」ということではないでしょうか。配偶者と不貞相手が、ラブホテルに出入りしている様子等が探偵の調査報告書から判明した場合、それは肉体関係を示す強力な証拠になるからです。
しかし、探偵をつけてもなかなか決定的な場面が訪れず、時間と費用だけがかさみ、気付いた時には探偵の費用で100万円!?なんてこともあるのです。不倫のせいでこんなに出費したのだから、不貞相手に慰謝料とあわせて探偵費用も請求したい。そう思っても、裁判上この請求は認められるのでしょうか。

今回の記事の流れ

1 探偵費用の請求が認められる場合とは?

探偵費用の請求が認められる場合とは?

損害賠償請求は、被告の行為と因果関係の認められる損害についてのみ認められます。探偵の調査費用についても、被告の行為(=不貞行為)と費用の支出との間に、因果関係が認められなければなりません。
裁判所は、「相当因果関係」が存在する場合のみ、探偵の調査費用を損害として認めています。ここでは、具体的な裁判例をもとに、どのような場合に「相当因果関係」が認められるのかを解説していきます。

 

2 探偵費用の請求が認められた裁判例

(1)【東京地裁平成23年12月28日判決】

この事例では、不貞行為の存否が争われており、不貞相手の素性が明らかでなかったことから、原告が探偵社に調査を依頼していた、というものでした。そして、探偵の調査の結果、不貞関係の状況が判明した、という事案であったため、裁判所は、不貞行為の立証のために探偵の調査は必要であった、と認定しています。
もっとも裁判所は、調査費用全額を直ちに損害と認定することはできず、「通常必要とされる調査費用」の限度で、被告の不貞行為との相当因果関係を認める、と述べています。

 

(2)【東京地裁平成15年11月6日判決】

この事例は、メールの内容から一応不貞行為の存在を推知できる、という状況ではあったものの、裁判所は、不貞の事実を明らかにするためには探偵の調査は必要であったと認め、一応の因果関係はあるとされています。
もっとも裁判所は、探偵の調査は立証方法の1つにすぎなかったと認定し、被告の不貞行為と相当因果関係の認められる調査費用は10万円のみである、と判断しています。ちなみに、原告が請求した探偵費用は約190万円でした。

 

3 探偵費用の請求が認められなかった裁判例

(1)【東京地裁平成27年12月2日判決】

この事例では、被告も不貞行為の存在を認めており、そもそも不貞の有無が争われている事案ではありませんでした。不貞が争われていない以上、原告が探偵に依頼してまで積極的に不貞行為の存在を立証する必要はなかった、ということになります。そのため、裁判所は不貞と調査費用の支出との間の相当因果関係を認めませんでした。
一方で裁判所は、相当因果関係があると評価はできないとしつつも、調査費用を支出したこと自体は、慰謝料額の算定の一事情として斟酌すべきであると述べています。

 

(2)【東京地裁平成22年12月21日判決】

この事例では、不貞行為の存否が争われてはいたものの、SNSの書き込みから不貞行為の存在は立証が可能であり、原告自身、そのSNSの書き込みを認識していた、というものでした。つまり、探偵に依頼せずとも不貞関係の立証はできた、ということになります。
裁判所も、原告が探偵に調査を依頼せざるを得なかったということはできず、調査の必要性及び相当性を認めることはできない、と判断しています。

 

4 まとめ

まとめ

以上の裁判例から分かるように、裁判所は

①そもそも不貞行為の存在が争われているのか
②探偵の調査は不貞行為の立証のために必要性が高いものか
③支出した費用は相当額と言えるか

という点を考慮して、探偵費用を損害として認定しているといえます。

被告が不貞関係を認めていれば探偵に依頼する必要はありませんし、不貞行為の存在が争われている場合でも、他の証拠から不貞関係を立証できる場合には、費用を支出してまで探偵に依頼する必要はありません。このように、不貞行為の立証の観点から、探偵への依頼が本当に必要であったか、支出した額が高すぎないかなど、考慮される点は多々あります。

更に、裁判所は調査の必要性を厳しく判断する傾向にあるため、探偵の調査費用を損害として認めてもらうのは容易ではありません。もっとも、探偵の調査費用そのものを損害として認定できない場合でも、東京地裁平成27年12月2日判決から分かるように、裁判所が、費用の支出を慰謝料額の算定の際に、一定程度考慮してくれる可能性も残されてはいます。

直接的な証拠を得るために探偵に依頼して費用がかかっても、裁判上相手に請求できない可能性はかなり高いのです。これから探偵への依頼を考えている方、探偵に依頼すべきか悩んでおられる方は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。探偵に依頼しなくても、現在お持ちの証拠だけでも、不貞行為の立証は可能かもしれません。ご相談いただければ、具体的なアドバイスをさせていただきます。

このコラムの監修者

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