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結婚25年の熟年離婚、妻への財産分与はどうなる?

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結婚25年の熟年離婚、妻への財産分与はどうなる?

「私には結婚25年になる妻がいます。

コロナ禍の影響で就業先の勤務がリモートとなり、出勤時間の減少などから家にいる時間が多くなりました。

妻とはこれといった共通の趣味もなく、子供達は自立しているため、妻とは必要最低限の会話のみとなっていました。

そのため、お互いに一緒の空間にいることが息苦しくなり、離婚して新たな人生を歩みたいと考えるようになりました。

ところが、夫婦の財産は妻が管理しており、離婚後に一人で生活していけるのか不安です。離婚時の財産分与はどうなるのでしょうか。」

 

1 熟年離婚について

熟年離婚について

(1)熟年離婚とは

熟年離婚に明確な定義があるわけではありませんが、長年連れ添った夫婦がそれぞれ別の道を歩み始めていくことが熟年離婚といえるでしょう。

熟年離婚には、様々な原因があります。一緒にいることが辛い、会話が辛い、長い間スキンシップがない、好きな異性ができた、配偶者の親の介護が辛いなど、一般の離婚原因に加えて熟年離婚ならではの原因もあります。

関連記事:熟年離婚の慰謝料請求特徴

 

(2)近年の傾向(統計)

近年、離婚の割合同居期間が「20年以上」の離婚した夫婦の割合は上昇傾向にあり、令和2年には5組に1組が熟年離婚といえます。離婚件数でいうと、年間約4万組となります。

引用元:令和4年度 離婚に関する統計の概況|厚生労働省

 

(3)熟年離婚における財産分与

では、熟年離婚における財産分与はどうなるのでしょうか。一般の離婚における財産分与とは異なる注意点もあるため、以下で詳しく述べます。

 

2 熟年離婚で財産分与できるものとできないものは?

熟年離婚で財産分与できるものとできないものは?

(1)財産分与とは

財産分与とは、結婚生活中に夫婦の協力によって築き上げてきた財産を離婚時に分け合うというものです。

結婚生活の中で得た財産の公平な分配、離婚後の生活保障、離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があり、特に財産の公平な分配が基本とされています。

参照:財産分与|法務省

関連記事:離婚財産分与の時効について

 

(2)財産分与できるもの

離婚で財産分与できるものは、共有財産です。

共有財産とは、基本的に結婚してから夫婦の協力によって築きあげてきた財産をいいます。

例えば、預貯金や家、自動車が挙げられます。家の名義が夫婦いずれか一方の名義であっても、結婚してから夫婦の協力によって築きあげた財産であると判断できる場合には、共有財産として財産分与の対象となります。

他方で、結婚前に夫婦の一方がもっていた財産や別居後に築いた財産は、財産分与の対象とはなりません。

 

(3)財産分与できないもの

離婚で財産分与できないものは、特有財産です。

特有財産とは、夫婦の財産として扱われない財産をいいます。

(夫婦間における財産の帰属)

民法762条

1 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。

 

例えば、前述した結婚前に夫婦の一方が持っていた財産や別居後に築いた財産が挙げられます。また、相続や贈与などが原因となった財産など、夫婦の協力によって築きあげてきたとはいえない財産は、原則として財産分与の対象になりません。

ただし、夫婦一方の特有財産であっても、その財産の維持や増加に夫婦の協力が貢献したといえる場合には、財産分与の対象となる可能性があります。

例えば、結婚する前に夫婦の一方が有していた家を結婚してから他方がリフォームしたり、賃貸して運用管理するなどして財産的価値を高めたといえる場合です。

 

3 熟年離婚の財産分与の割合はどう決まる?

熟年離婚の財産分与の割合はどう決まる?

(1)原則2分の1

財産分与の割合は、財産の公平な分配という考えから原則として2分の1です。

例えば、夫婦の一方が専業主婦(夫)であっても、夫婦の寄与度は公平であると考えられるため、原則として割合は2分の1です。

 

(2)例外 ~特殊な事情がある場合~

上述したように、財産分与の割合は原則として2分の1です。

しかし、2分の1とするとかえって公平でないという特殊な事情がある場合、分与割合が修正されることもあります。

・財産形成に夫婦一方の特有財産が寄与したケース

 夫婦の共有財産となるゴルフ会員権の購入代金の大部分が、夫の所持していた株式など特有財産の売却によるものであった場合、分与割合が夫64%、妻36%となった東京高裁平成7年4月27日判決があります。

・夫婦一方の特殊な才能で財産形成したことを理由に修正されたケース

 夫が医療法人を経営する医師であった場合、分与割合が夫60%、妻が40%となった大阪高裁平成26年3月13日判決があります。

・夫婦一方の浪費が原因で財産分与の割合が修正されるケース

 夫婦共働きで夫のみが浪費していた場合、分与割合が夫30%、妻70%とした裁判例があります。

以上のような例外は、原則である2分の1という割合が修正されたケースの一部であり、具体的な事案に応じて財産の公平な分配が行われます。

 

(3)夫婦の話し合いによる場合

なお、財産分与の原因となる離婚が後述する協議離婚である場合、共有財産の分配は自由です。財産分与割合の基本的なルールは、裁判所が判断するときの原則であって、夫婦が話し合って決める場合には適用されません。

しかし、財産分与の対象であるか否か、いかなる割合とするかについて大きな紛争になることもありますので、弁護士に相談することをおすすめします。

 

4 熟年離婚で財産分与する手続きの流れと注意点

(1)熟年離婚で財産分与する手続きの流れ

熟年離婚であっても、手続については通常の離婚と変わることはありません。離婚時に財産分与をするか、離婚をしてから財産分与を請求することになります。

①夫婦間での話し合い ~協議離婚~

まずは、夫婦間で話し合うことから始まります。

離婚を切り出し、お互いが合意すれば協議離婚が成立します。

財産分与については、離婚条件になりますのでじっくりと話し合うことが大切です。

 

②離婚調停による離婚

話し合いによって離婚に合意できない場合、家庭裁判所へ離婚調停を申し立てることになります。離婚については、まず話し合いで解決することが望ましいと考えられているため、いきなり離婚訴訟を起こすことはできません。

申立てについては、ご自身で行うことも可能です。ただし、財産が相当程度あったり、当事者間で財産分与についてもめそうであったり、相手方が自営業者や会社経営者の場合には、弁護士を入れた方が、妥当な結論を得やすくなります。

調停では、家庭裁判所の調停委員を介して話し合いが進められます。そのため、調停委員に自分の言い分をうまく伝えることが重要となります。

 

③離婚裁判による離婚

離婚調停で話し合っても離婚に合意できない場合、調停不成立となって、離婚訴訟を提起することとなります。

離婚訴訟で離婚が認められるためには、法律上の離婚事由(原因)が必要です。そのため、離婚事由を裁判所に対して主張・立証しなければなりません。

離婚訴訟についても、ご自身で行うことが不可能ではありません。

ただし、訴状の作成から書面の作成、裁判官とのやり取りなど、法的知識がなければ困難ですので、事前に弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

 

(2)熟年離婚で財産分与する際の注意点

①離婚の時から二年間

財産分与は離婚時におこなうのが望ましいですが、離婚後であっても財産分与の請求をすることができます。

ただし、離婚の時から二年を経過したときは、家庭裁判所に申立てをすることができなくなりますのでご注意ください。

(財産分与)

民法768条

1 協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。

2 前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から二年を経過したときは、この限りでない。

3 前項の場合には、家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。

②退職金について

熟年夫婦の中には退職をきっかけに離婚するケースは少なくありません。

すでに退職金が支払われている場合、同居期間や退職金形成の貢献度から財産分与の割合が決定します。

離婚後に退職金が支払われる場合でも、退職時期が確定していたり、退職金を手にする可能性が極めて高かったりする場合には、財産分与として認められる可能性があります。

 

③年金分割制度の利用

熟年離婚の場合、一方が専業主婦(夫)であった場合には、夫婦間で受け取れる年金に特に大きな差が生じます。

しかし、離婚の際に年金分割制度を利用すれば、その差が是正されます。

年金分割は、離婚した場合に、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。具体的には、離婚時の年金分割が行われると、婚姻期間中について、厚生年金の支給額の計算の基となる報酬額(標準報酬)の記録が分割されることになり、年金額をお二人で分割できます。

ただし、原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなります。また、既に離婚当が成立し、相手方死亡した日から起算して1カ月を経過すると請求できなくなりますのでご注意ください。

参照:離婚時の年金分割|日本年金機構

 

5 まとめ

今回は、熟年離婚における財産分与について解説しました。

長年連れ添った夫婦がそれぞれ別の道を歩み始めていくことは少なくありません。熟年離婚は割合として近年増加傾向にあります。

それぞれの道を歩み始めるにあたって、財産は非常に重要です。

もし、どうすればいいか分からず不安な様でしたら、一度弁護士に法律相談をすることをお勧めします。弁護士に依頼した場合、財産分与のみならず、慰謝料請求や離婚についても相談が可能です。また、証拠収集から示談交渉、裁判手続に至るまでを弁護士が代わって処理することで、ご依頼主の心理面、労力面での負担が大きく緩和されます。

弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイには、男女問題に関する豊富な経験と知識を有する弁護士が多く所属しています。また、弁護士費用に関してもご安心下さい。当事務所は、地元に密着し、依頼者に寄り添う法律事務所として、良心的な費用を設定しております。

また、初回法律相談は無料となっておりますので、離婚でお悩みの方は、お一人でお悩みになるのではなく、一度、当事務所にご相談下さい。誠心誠意ご対応させていただきます。

このコラムの監修者

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