「夫と離婚をしようと思っています。私たち夫婦は５０代で、子供たちはもう自立しています。夫は、会社を経営しており忙しく、私は専業主婦をして長年家庭を守ってきました。夫が昔から家の外で女性をつくっているのは知っています。不倫は現在も続いており、子供が自立するまでは家庭を守ろうと知らぬふりをして我慢してきました。その間、探偵を雇って証拠を集めてきました。証拠を突きつければ夫もさすがに不倫を認めるでしょう。そこで、慰謝料の相場を知りたいのです。夫と話し合って決める際の参考としたいのです。」

近年、長年連れ添った夫婦が別々の道を歩み始めることは珍しいことではありません。

会話がない、スキンシップがない、好きな異性ができた、配偶者の親の介護が辛いなど様々な理由があげられます。

離婚するのであれば、できるだけ話し合って紛争とならずに解決することを望むでしょう。

そんな時、慰謝料の相場を知っておくと話し合いがスムーズになります。

１　５０代の協議離婚で慰謝料を求める理由とは？

（1）５０代の協議離婚で慰謝料を求める理由

５０代夫婦の離婚は、俗にいう熟年離婚です。

熟年離婚をする原因・理由には、以下のようなものがあげられます。

参考コラム：熟年離婚の慰謝料請求特徴

ただし、協議離婚で常に慰謝料を求めることができるかというと、そうではありません。

慰謝料とは、精神的苦痛をお金で償うものであるため、相手に離婚原因がある場合に限られます。

たとえば、配偶者の不倫やDV（暴力・モラハラ）などによって離婚となった場合には、精神的苦痛が生じたとして、慰謝料請求が可能となります。

一方で、離婚原因１位である「性格の不一致」は、どちらにも離婚の責任があるとはいえないと考えられるため、慰謝料の請求ができない可能性があります。

参考：令和２年度　第１９表　婚姻関係事件数―申立ての動機別申立人別｜司法統計

（2）協議離婚とは

協議離婚とは、夫婦が話し合って離婚の条件を決め、離婚届けを役所に提出して離婚するというものです。

調停委員が話し合いに介入するという点で、調停離婚とは異なります。

判決によって離婚やその条件が決まるという点で、裁判離婚とは異なります。

離婚するにあたっては、９割近くが協議離婚です。

協議離婚は，調停離婚や裁判離婚と比べて、時間や費用、労力をほとんど必要としないからです。

参考：令和４年度 離婚に関する統計の概況｜人口動態統計特殊報告｜厚労省

協議（話合い）でまとまった結果については、あとで争い生じないよう離婚協議書や公正証書を作成し、証拠を残しておくのが一般的です。

この点，離婚協議書や公正証書をつくっておかないと，後からやっぱりお金がもっと欲しいなどと言われて，紛争が蒸し返される可能性があります。

そこで，少なくとも離婚協議書や公正証書は弁護士に作成を依頼しておくのが無難です。

書面作成費用だけであれば，比較的安価にすることが一般的です。

２　５０代の協議離婚での慰謝料の相場はどれくらい？

慰謝料の相場は、５０万円～３００万円程度です。

このように大きく差が生じるのは、離婚した原因によって配偶者の責任や受ける精神的苦痛の大きさが異なるからです。

たとえば、配偶者の不倫（不貞行為）が原因となる場合は、１００万円～５００万円と高額になる傾向があります。

また、婚姻期間の長さや子供の有無など、個別の事情によっても慰謝料は異なってきます。

慰謝料の判断は、様々な事情を踏まえたうえでなされますので、ご不安でしたら一度弁護士に相談されることをお勧めします。

３　５０代の協議離婚での慰謝料が増額になる要素とは？

慰謝料が増額になる要素としては、以下のものがあげられます。

・浮気・不倫していた期間が長い

・浮気・不倫の頻度が多い

・婚姻期間が長い

・自立していない子供がいる

・離婚原因となった配偶者の行為が悪質

・配偶者の収入や資産が多い　など

４　５０代の協議離婚での慰謝料が減額になる要素とは？

逆に、慰謝料が減額になる要素としては、以下のものがあげられます。

・浮気・不倫した期間が短い

・浮気・不倫した回数が少ない

・浮気・不倫がすでに終了している

・婚姻期間が短い

・未成熟の子供がいない

・不貞行為の開始当時、すでに子供が自立していた　など

５　協議離婚で慰謝料請求する際の注意点

（1）金額設定について

協議離婚は、夫婦の話合いで離婚条件を定めるため、夫婦が合意すれば慰謝料の金額は自由です。

慰謝料の相場はありますが、これは裁判となった場合に認められる可能性のある金額です。

しかし、あまりに高額な金額の慰謝料を求めると、相手に合意してもらうことは難しくなるでしょう。

その場合、話合いが長引くどころか調停や裁判となる可能性があります。

そうなると、上で述べた通り、時間や費用、労力がかかってしまいます。

そのため、相場を参考に慰謝料の金額を設定すると、スムーズな話合いが可能となるでしょう。

（2）証拠の重要性

相手と合意にいたらない場合、調停離婚や裁判離婚において、証拠は必ず必要となります。

また、協議離婚であっても、決定的な証拠や複数の証拠があると、話し合いに応じてもらいやくなります。

そのため、必ず証拠はそろえるようにしましょう。

複数の証拠をそろえることが望ましいです。

（3）証拠を出すべきタイミング

せっかく集めた証拠も出すべきタイミングを誤れば、意味がなくなるかもしれません。

証拠を出すべきタイミングを誤ったために、不貞行為を認めさせることができず、慰謝料請求や離婚もできなくなる可能性もあります。

証拠はベストなタイミングで出しましょう。

詳細については、以下のコラムをご参照ください。

参照コラム：不貞行為の証拠を出すタイミングは？夫または妻が不倫を認めない場合の対処法

６　まとめ

今回は、５０代の協議離婚の慰謝料相場について解説しました。

５０代で離婚される理由は様々ですが、離婚の理由によって慰謝料の請求ができるか、慰謝料の金額がどうなるかが変わってきます。

協議離婚の場合、夫婦が同意すれば、慰謝料の金額は自由です。

しかし、あまりに高額な慰謝料を求めると、相手が話し合いに応じない場合があります。

そのため、スムーズな話し合いが行えるよう、慰謝料の相場を知り、証拠をそろえておきましょう。

法律事務所ロイヤーズ・ハイでは、慰謝料請求に関し経験豊富な弁護士が在籍しております。

慰謝料請求についてお悩みのある方は、当事務所の弁護士にご相談いただくことをお勧めします。