離婚調停は自分でできる?弁護士に依頼しないメリット・デメリット
「離婚について夫婦で話し合ったけど、まとまらなかった。」
「そもそも、離婚の話し合いに応じてくれなかった。」
離婚しようとする場合、夫婦間での話し合いがうまくいかなければ、離婚調停を検討することになります。
離婚調停とは、家庭裁判所を通じて、調停委員の仲介のもとで離婚に向けた話し合いを行う手続きのことです。
夫婦間のみでの話し合いがうまくいかなくても、第三者である調停委員が間に入ることで、離婚条件などがまとまり合意にいたる可能性があります。
そんな離婚調停を弁護士に依頼せず、自分で行うことができるのか。
以下で、詳しく解説します。
目次
1 離婚調停は自分でできるのか
結論から言うと、離婚調停は自分で行うことも可能です。
必ず弁護士に依頼しなければならないわけではありません。
自分で行う場合のメリットとデメリットをそれぞれ理解したうえで、自分で行うかどうか判断しましょう。
2 離婚調停を自分で行うメリットとデメリット
(1)自分で行うメリット
離婚調停を自分で行った場合、かかる費用が安くすみます。
単に離婚の調停を申し立てるための費用は、3000円もかかりません。
弁護士に依頼した場合は、弁護士費用がかかるため、数十万円はかかることになります。
離婚調停を自分で行なって満足する結果を得られるのであれば、自分で行なったほうがいい場合もあるでしょう。
ただし、次に述べるデメリットを理解したうえで、自分で行うようにしましょう。
(2)自分で行うデメリット
①時間と労力がかかる
調停は書面で申し立てなければなりません。
慣れていない書面の作成は、面倒でありストレスを感じることもあるでしょう。
また、調停は月に1回ほど平日に裁判所に出頭する必要があります。
もし、平日に仕事をしていて、簡単に休むことができないような方は、対応が難しくなるかもしれません。
また、調停では、自分の主張を行い、質問に答えるという作業が必要となります。
ご自身で、法的な観点から主張を組み立てたり、書面を事前に準備したり、証拠を集めるという作業はなかなか大変かもしれません。
調停が成立するまで事情によっては半年以上かかる場合もあります。
そのため、どうしても時間と労力を要します。
他方で、弁護士に依頼をすれば、平日に裁判所へ出廷して対応してくれますし、証拠を整理して、法的な主張をしてくれますので、上記のような事情がある方は、お金がかかっても弁護士に依頼した方がよい場合もあります。
②交渉で不利になる場合がある
法律の知識が不十分であったり、慰謝料などの相場が分からなかったりすると交渉が不利になってしまう場合があります。
調停は、第三者である調停委員を通じて交渉を行う場です。
調停においては、調停委員を納得させる的確な主張や証拠の提出をしなければなりません。
自分で離婚調停を行う場合には、法律の知識が不十分で、的確な主張や証拠の提出が難しくなるかもしれません。
一方で、相手は弁護士に依頼している場合があります。
調停委員は、中立の立場の人間ですが、あなたの味方をすることもしませんので、仮に不利な条件であっても、あなたが不利であると分からぬままに、合意してしまうと、不利な条件で調停が成立することになってしまう可能性もあります。
③結果として金銭的に損する場合がある
離婚調停を申し立てる際、別途費用はかかりますが、同時に慰謝料や財産分与などを申し立てることができます。
ご自身で調停を行う場合には、慰謝料や財産分与、婚姻費用、養育費の相場が分かりません。
特に、不倫やDV、モラハラといった慰謝料が発生するような事情がある場合や、一定の財産がある場合には、争いになりやすいです。
また、相手方が直近で収入に増減があったり、会社を転職していたり、ダブルワークをしていたり、自営業者であったり、会社の社長や役員であったりすると、収入が問題になりやすく、養育費や婚姻費用の点で争いになりやすいです。
このように慰謝料や財産分与なども申し立てる場合には、弁護士費用を差し引いても弁護士に依頼した方が金銭的にプラスとなることも多いです。
3 離婚調停を自分で行う方法と流れ
離婚調停を自分で行なうには、家庭裁判所に対して、離婚調停を申し立てることが必要です。
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
申し立て後は、調停期日が指定されることになります。
以下で、離婚調停を申し立てる際の必要書類や注意点につき簡潔にまとめてあります。
離婚調停を自分で行う場合の参考としてください。
(1)証拠を揃える
離婚調停では、調停委員を納得させる証拠が必要となってきます。
配偶者の不倫やDVなど、離婚の原因となる証拠を集めましょう。
交渉を有利に進めるためにも、証拠はできる限り複数用意することが望ましいです。
(2)必要な書類を揃える
以下①~④の書類は、申し立てる際に必ず必要となってくるものになります。
以下⑤~⑧の書類は、裁判所に求められた場合など、状況に応じて必要となってくるものになります。
①夫婦関係調整調停申立書とその写し1通
夫婦関係調整調停申立書とは、要するに離婚調停の申立書のことです。
離婚調停の申立ては書面でしなければならないため、申立書を作成することは絶対です。
書式や記載例は、裁判所のホームページでダウンロードすることも可能です
相手方へ送付する分として、写しを1通提出する必要があります。
②収入印紙
申立てに必要な費用として、収入印紙1,200円分が必要となります。
収入印紙は、郵便局やコンビニなどで購入することができます。
③郵便切手
管轄の家庭裁判所によって必要となる切手の金額や内訳は異なります。
申立てされる家庭裁判所へ確認してください。
なお、大阪家庭裁判所の場合(※)は、140円×1枚、84円×5枚、50円×5枚、20円×10枚、10円×10枚、1円×20枚、合計1,130円分となります。
※令和5年5月時点
④戸籍謄本(全部事項証明書)
離婚調停を申し立てる際に必要となるものです。
本籍地の役所にて取得することができます。
手数料は、1通450円となります。
⑤事情説明書
裁判所ができる限り詳しい事情を知るために、調停の開始前に提出を求められる書面です。
書式は、申し立てる家庭裁判所で取得することができます。
各裁判所が運営するホームページの「裁判手続きを利用する方へ」の中でダウンロードすることもできます。
⑥進行に関する照会回答書
裁判所が調停を進行していくうえで、参考とするために提出を求められる書面です。
調停期日の希望日時などを記載します。
書式は、申し立てる家庭裁判所で取得することができます。
各裁判所が運営するホームページの「裁判手続きを利用する方へ」の中でダウンロードすることもできます。
⑦連絡先等申告書
書類の送付や連絡が確実にできるよう提出が求められる書面です。
書類を受け取る住所や連絡先を記入します。
書式は、申し立てる家庭裁判所で取得することができます。
各裁判所が運営するホームページの「裁判手続きを利用する方へ」の中でダウンロードすることもできます。
⑧年金分割のための情報通知書
年金分割割合についての申立てが含まれている場合には、年金分割のための情報通知書が必要となります。
日本年金機構や共済組合に請求することによって取得できます。
請求については、それぞれの窓口にお問い合わせください。
(3)家庭裁判所に提出する
申立先は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所です。
管轄裁判所を調べたい方は、以下のホームページをご参照ください。
なお、大阪家庭裁判所の場合は、大阪市にある本庁のほかに、堺支部、および岸和田支部があります。
4 離婚調停の手続きで発生する費用
離婚調停の手続で、必ず発生する費用は以下になります。
・収入印紙代:1,200円 ・郵便切手代:1,130円(大阪家庭裁判所の場合です。家庭裁判所によって異なります。) ・戸籍謄本(全部事項証明書)の取得費用:450円 |
上記の費用に加え、事案によって発生する費用は、以下のようなものになります。
・住民票取得費用:200円~300円(大阪市の場合です。自治体によって異なります) ・その他の申立費用:1200円~ |
離婚調停においては、婚姻費用分担請求や養育費請求の調停も同時に申し立てることができます。
そのような場合、その他の申立費用として収入印紙代が必要となります。
5 まとめ
離婚調停は、弁護士に依頼せず自分で行なうことも可能です。
離婚調停を自分で行う場合、費用は最小限に抑えることができます。
しかし、自分で行なう場合には、証拠集めや調停における主張、調停手続きなどの面において時間や労力がかかってきてしまいます。
単に、時間や労力がかかるだけならいいのですが、交渉を有利に進めることが難しくなる場合もあります。
自分で離婚調停を行う場合には、必ずこのようなデメリットを理解したうえで行うようにしましょう。
もし、不安な様でしたら、一度弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。