離婚前と離婚後の慰謝料請求の差 - 不倫の慰謝料に強い大阪の弁護士法人ロイヤーズハイ

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離婚前と離婚後の慰謝料請求の差

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ポイント説明

配偶者の不貞相手に慰謝料を請求したいけど,いくら請求すればいいのか分からない,という方は多いはずです。不貞相手に請求した後に,「やっぱりもっと請求すればよかった…」と思っても,一度成立した合意をなかったことにするのは,ほぼ不可能です。
あなたの精神的苦痛に見合った慰謝料を得るためにも,事前に相場を知っておくことは不可欠です。そこで,ここでは,不貞の慰謝料の相場について,最近出された最高裁判所の判例を踏まえて,解説していきます。

今回の記事の流れ

1 慰謝料相場の考慮要素

慰謝料相場の考慮要素

不貞の慰謝料は,婚姻関係が破綻したことに伴う精神的苦痛を損害として捉えるものです。そのため,婚姻関係の破綻の程度が大きければ,その分慰謝料額も高額になるでしょう。
慰謝料額を決める考慮要素は複数ありますが,以下のような事情を考慮することが多いでしょう。

  • ①婚姻期間
  • ②未成年の子供の有無
  • ③不貞の期間
  • ④不貞による妊娠の有無
  • ⑤不貞発覚後の事情(反省しているか,発覚後も不貞関係が継続しているか等)
  • ⑥不貞に対する態度(不貞に積極的であったか等)
  • ⑦不貞相手の社会的立場,経済力
  • ⑧社会的制裁の有無(不貞が原因で職を辞するに至った等)

様々な考慮要素はありますが,婚姻関係の最たる形が「離婚」です。そのため,これまでは離婚の有無によって慰謝料額はおおよそ以下のように考えられていました。

  • 離婚・別居なし=50~100万円
  • 別居=100~150万円
  • 離婚=100~200万円

しかし,最近離婚慰謝料について新たな最高裁判例が出されました。

2 最高裁判所平成31年2月19日判決

(1)事案の概要

この事案は,不貞が原因で離婚をしたことに伴う,離婚慰謝料を不貞相手に請求した,というケースです。
原告が,配偶者の不貞及び不貞相手を知ったのは平成22年5月頃でした。その後,平成26年4月頃に別居,平成26年11月頃に離婚調停を申し立て,平成27年2月に離婚が成立したというものです。

不法行為に基づく損害賠償請求の時効は,不法行為及びその加害者を知った時から3年です。
このケースでは,平成22年5月頃に不貞の事実及びその相手方が判明しており,訴えを提起した時点(平成29年時点)で,不貞の慰謝料請求権は時効により消滅していました。そのため,原告は「不貞慰謝料」ではなく,「離婚慰謝料」のみを請求したと考えられます。

(2)最高裁判所の判断

本判決で最高裁は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である」から,不貞により夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,不貞相手は,「直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない」と述べています。
そして,不貞相手に離婚に伴う慰謝料請求ができるのは,「特段の事情」がある場合に限る,と判示しています。
ここでいう「特段の事情」について最高裁は,「単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき」場合であると述べています。

(3)考察

この最高裁判例が,特段の事情がない限り認められないと判断したのは,あくまでも「離婚慰謝料」です。「不貞慰謝料」については,これまで通り請求できるものと考えられます。そのため,本判決を受けても,不貞慰謝料の請求が困難になるということはありません。
本判決でも,最高裁は,「不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして」と前置きしたうえで,離婚慰謝料の不法行為責任について判断しています。

これまでは不貞によって離婚に至った場合,慰謝料額は高額になると考えられてきました。理論的に考えれば,これは,「不貞慰謝料」とあわせて「離婚慰謝料」も請求しているからだといえます。
最高裁判所で,「特段の事情」がない限り離婚慰謝料が認められないと判断された以上,今後は,裁判上認められる不貞慰謝料の額は,離婚や別居の有無によっては,変動しない可能性が高いといえるでしょう。

離婚慰謝料の請求が認められる「特段の事情」について,最高裁は本判決で一定程度の基準は示しているものの,具体的な事情については触れられていません。どのような場合に「特段の事情」が認められるかは,今後の裁判所の判断を待つしかないでしょう。

3 おわりに

以上述べてきたように,今後は「離婚」が慰謝料増額の考慮要素にはならない可能性があります。しかし,不貞相手の行動によっては,離婚慰謝料も認められる場合があるのです。また,離婚の有無以外にも,慰謝料の増額要素は様々考えられます。ご自身が気付いていない増額要素があるかもしれません。
不貞相手に慰謝料請求を考えておられる場合,あなたの被った苦痛に見合うだけの慰謝料を得るためにも,弁護士にご相談されることをお勧めします。

このコラムの監修者

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