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離婚慰謝料請求の算定要件

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ポイント説明

離婚の慰謝料を請求しようと考えた時に、どのくらい請求できるのか気になるという人は多いでしょう。

しかし、離婚の慰謝料は様々な要因が絡み合って決まるので一概にいくら請求できるとは言い切ることができません。

そこで今回は、離婚慰謝料を請求する際の計算方法や注意点、どのような要因が慰謝料の絡んでいるのか、高額になるのはどのようなケースなのかといった点についてご紹介しましょう。

今回の記事の流れ

1 離婚慰謝料の計算方法

まずは、離婚慰謝料の計算方法から見ていきましょう。ただし、離婚慰謝料を算出するための厳密な計算方法が決められているわけではないため、必ずここで紹介した計算式に当てはめるとは限りません。

あくまでも参考として覚えておくようにしてください。

(1)計算式

離婚慰謝料は、以下の計算式に当てはめることで算出できます。

  • 『基本慰謝料120万円+相手の年収の3%×実質的婚姻年数(最高20年)×有責度×調整係数』

実質婚姻年数は、実際に結婚していた期間のことです。

有責度は、相手が極めて悪い場合は1、相手が悪い場合は0.9~0.2、お互い同じくらい悪い場合は0となる考え方をされます。

※有責度の数値化は、実務としてどう利用されるかは個別の事案によって判断が異なる為、あくまで目安程度に留めておくことをおすすめします。

そして調整係数は、配偶者と同じくらいの収入がある場合は0.7、就業経験がない場合は1.3となります。

この計算式は、東京弁護士会が過去に試算したものです。

(2)計算の例

パートタイムで勤務している妻・Aさん(40歳)と会社員として勤務している夫Bさん(47歳)のケースで計算をしてみましょう。

婚姻年数は15年、夫の収入は年収650万円です。
離婚の原因は夫の不貞行為で、夫が一方的に悪い場合を想定して計算します。

  • 基本慰謝料(120万円)+(年収650万円×3%)×実質婚姻年数(15年)×有責度(1)×調整係数(1.0)=412.5万円

この事例だと、412.5万円の慰謝料を請求できることになります。

 

2 離婚慰謝料を計算する時の注意点

離婚慰謝料を計算するときの注意点

離婚慰謝料を計算する際に、いくつか注意しなければいけないポイントもあります。
続いては、どのような注意点があるのか見ていきましょう。

(1)離婚慰謝料に厳密な計算方法が定められているわけではない

離婚慰謝料は、先ほどの計算式を使って参考となる金額を算出することはできます。
しかし、その計算式が全てではありません。

DVや悪意の遺棄などがあるとそれに応じて慰謝料は高額になっていきます。
また、裁判の判例を参考にして慰謝料を請求しようと考える人もいるかもしれませんが、裁判所の結果も事例ごとに異なります。

そのため、協議離婚で話し合って慰謝料を決める場合は、相場よりも高くなったり、安くなったりする可能性があるのです。

それだけではなく、離婚に至った理由を述べてもそれを示す根拠がないと慰謝料に反映されません。

根拠をきちんと提示し、慰謝料をきちんと請求するためには証拠を残しておかなければいけないということになります。

(2)養育費と慰謝料は分けて考える

養育費は、慰謝料とセットにして考えるケースもありますが、養育費と慰謝料は全く別物です。

そのため、個別に請求するようにしましょう。
養育費と慰謝料をまとめて支払った場合、養育費を受け取っていないと親権を持つ親が主張する可能性もあるからです。

トラブルを回避するためにも、別物として考えるようにしてください。

(3)財産分与とも分けて考える

養育費と同じように、財産分与も慰謝料と分けて考える必要があります。
財産分与は民法768条に定められているもので、婚姻中に夫婦で築いた財産の貢献度に応じて財産を分配することを取り決めています。

精神的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与の3つがあり、慰謝料と共に請求するのは慰謝料的財産分与です。

一緒に請求しても良いのですが、それでは本来請求できる金額よりも低くなってしまう可能性があります。そのため、財産分与と慰謝料は分けて考えるようにしましょう。

(4)離婚をしても慰謝料を請求できないこともある

離婚をすれば必ず慰謝料を請求できるわけではありません。
慰謝料を請求できるのは、相手に婚姻関係が破綻する原因が認められる場合のみなのです。

つまり、性格の不一致や親族との不和、価値観の違い、お互いに原因がある、信仰上の対立、夫婦関係が破綻しているといった場合では、慰謝料を請求できない可能性が高くなってしまいます。

 

3 慰謝料は様々な事情を考慮して決められる

離婚慰謝料は、一概にいくらと決められているのではなく、様々な事情を考慮して決められます。

では、どのような場合に慰謝料が高額になりやすいのか見ていきましょう。

(1)配偶者と不倫相手の年齢

配偶者と不倫相手の年齢

配偶者と不倫相手の年齢差が大きいほど、慰謝料は高くなります。なぜなら、若い相手とでは思慮分別に差がありますし、配偶者が主導権を握っている可能性が高くなります。

(2)婚姻期間の長さ

婚姻期間の長さも慰謝料には大きな影響を与えます。不倫やDVされた側の心情に配慮して考えると、離婚後の再スタートが難しくなってしまうことは明白で、婚姻期間が長いほど慰謝料は高額になりやすい傾向にあります。

(3)子どもの有無

子どもの有無

子どもがいる場合は、夫婦関係の破綻が大きな影響を与えます。また、精神的な損害も大きいと考えるのが一般的なので、慰謝料の増額につながる可能性が高いです。

(4)不倫を否認

不倫を否認

不倫を否認するという行為は、被害者の気持ちを踏みにじったと見なされます。特に、不倫が明らかに認められるのにそれを否認し続ける場合は、高額な慰謝料を請求できる可能性が高まります。

 

4 離婚慰謝料が高額になった事例をご紹介

離婚慰謝料は、それぞれの事例ごとに金額が異なります。
最後に、高額な慰謝料を請求した事例についてご紹介しましょう。

(1)婚姻期間が長かった事例

婚姻期間が長ければ長いほど離婚した時の精神的なダメージは大きくなるため、慰謝料は高額になりやすいです。

仙台地方裁判所の判例の中には、婚姻期間が33年以上であることや不倫をして妻に与えた精神的苦痛を考慮し、500万円の慰謝料が妥当だと判断された事例があります。

婚姻関係のながさはもちろんですが、その他にも様々な要因が関係してこの金額になったのです。

(2)不倫相手との間に子どもができた事例

不倫をしていれば、肉体関係も持っている可能性が高いです。
その中で、避妊をしていても100%子どもができないとは言い切れないため、不倫相手との間に子どもができてしまうこともあるでしょう。

そのような場合に慰謝料が高額になった事例もあります。
東京地方裁判所の判例の中にある不倫相手との間に子どもができた事例では、450万円の慰謝料が妥当だと判断されました。

配偶者に愛人がいて、自分の子どもと同じくらいの時に愛人にも子どもが生まれていたと知った時の妻が受ける精神的苦痛や衝撃は計り知れません。

この判例では、双方の子どもが生まれたタイミングも考慮して慰謝料が算出されています。

(3)有責配偶者の態度が悪質だった事例

慰謝料は、約束を破っていたり、悪質性があったりする場合も高額になるケースが多く見られます。

東京地方裁判所では、そのような事例もありました。
調停の席では不貞関係に関する約束を取り決めたのにそれを破り、不倫を続けたという事例です。

この事例では、500万円の離婚慰謝料が妥当だと判断されました。

5 まとめ

離婚をする際に慰謝料を請求するケースは多いですが、離婚慰謝料の具体的な計算方法はありません。

それぞれの状況によって、大幅に金額が変動するためです。
そのため、離婚慰謝料を請求しようと考えている場合は、離婚関係の問題に詳しい弁護士へ相談した方が良いと言えるでしょう。

弁護士に相談すれば、裁判の際に有利になるように動くこともできますし、必要な証拠も把握しやすくなります。

このコラムの監修者

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