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不貞行為(不倫・浮気)に対して示談書や和解条項に入れる接触禁止文言(接触禁止条項)とは

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ポイント説明

1 はじめに

不倫をした配偶者や不倫相手に対し慰謝料請求をし,示談や和解で慰謝料の支払いの合意がなされたとしても,その後不倫をした配偶者と不倫相手とが再び接触を取っ
た場合,争いが再燃するだけでなく,慰謝料請求が無意味になるおそれがあります。
このような危険を回避する手段として接触禁止文言があります。

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2 接触禁止文言とは?

接触禁止文言とは?
接触禁止文言とは,不倫慰謝料請求について示談や和解をする場合,配偶者と不倫相手とが今後関係を断つことを約束させる趣旨で示談書や和解条項に入れる文言をいいます。
例えば,AさんとBさんが夫婦でありBさんがCさんと不倫した場合で,AさんがCさんに対し不倫慰謝料請求を行い,のちに示談や和解をする場合を考えます。
このとき,示談書や和解条項に次のような接触禁止文言を入れることがあります。
「Cさんは,Bさんに対し業務上正当な理由がない限り連絡しない。」
「Cさんは携帯電話からBさんに関する一切の情報を削除する。」

 

3 示談書や誓約書に接触禁止文言を入れる方法

示談書や誓約書に接触禁止文言を入れる方法
不倫慰謝料請求の方法として交渉による請求裁判による請求があります。
交渉による請求で交渉がまとまり示談となった場合両当事者の合意により接触禁止文言を入れることができます。
裁判による請求で和解が成立する場合,両当事者の合意により接触禁止文言を入れることができます。しかし,和解が成立せず,判決になる場合には,裁判所は慰謝料の額について判断するだけであり,接触禁止文言を入れることはできません。
このように,示談や和解の場合で両当事者が合意する場合に限り,接触禁止文言を入れることができます。
上の例によれば,AさんとCさんの双方が合意をしなければ示談書や和解条項に接触禁止文言を入れることができません。

関連記事:不倫慰謝料の示談書の書き方と弁護士の役割

 

4 接触禁止文言の利用方法

不倫慰謝料を請求する側にとっては,配偶者が今後不倫相手と連絡を取って欲しくないと思います。
上の例によれば,AさんはCさんに対して「慰謝料を減額する代わりに今後Bとは接触するな」と言って接触禁止文言を交渉に用いることが考えられます。
一方,不倫慰謝料を請求される側にとっては,慰謝料の支払いを減らしたいと思います。
そこで,CさんはAさんに対して「接触禁止文言を入れていいので,慰謝料を減額してほしい」と言って接触禁止文言を交渉に用いることが考えられます。
このように,不倫慰謝料を請求する側とされる側のいずれにとっても,接触禁止文言を入れるメリットがあり,接触禁止文言は不倫慰謝料請求の交渉材料として利用できます。

 

5 接触禁止文言を入れる場合の例文と注意点

接触禁止文言を入れる場合の例文と注意点
接触禁止文言を入れる場合には,その内容を明確にしなければなりません。
例えば,次のような文言を入れると,争いが再燃したり,慰謝料の請求が困難になることがあります。
・「CさんはBさんに対し今後一切連絡しない」という内容の接触禁止文言の場合
不倫慰謝料を請求するAさんにとっては有利である一方,請求されたCさんにとっては非常に不利になります。なぜなら,何か必要があってBさんと連絡を取らなければならない場合でもCさんは接触禁止文言に違反したことになり,Aさんから違約金の請求を受けるおそれがあるからです
そのため,一度示談や和解で解決したはずの争いが再燃してしまうということになりかねません。
・「CさんはBさんと連絡しない限り,AさんのCさんに対する不倫慰謝料の請求を猶予する」という内容の接触禁止文言の場合
AさんはBさんとCさんの関係を断つことを優先した結果,Cさんが接触禁止に違反したことを証明できない限り,AさんはCさんに対し不倫慰謝料の請求ができなくなるおそれがあります。
このような内容の文言では,不倫慰謝料を請求したはずが,接触禁止を条件に慰謝料を請求しないという結果となってしまいます。
不倫慰謝料を請求する側としては,配偶者と不倫相手とは今後接触してほしくないので,厳しい内容の接触禁止文言を入れたいと考えます。しかし,厳しい内容の接触禁止文言では相手方には非常に不利であるので,相手方は承諾せず,接触禁止文言を入れることができなくなるおそれがあります。
一方,不倫慰謝料を請求される側としては,慰謝料の額を下げたいがため,自分にとって非常に不利な接触禁止文言を承諾し,少しの接触でも接触禁止義務違反として違約金の支払い義務を負うことになりかねず,争いが再燃する危険性があります。
このような事態が生じないようにするには,交渉の中で両当事者が合意できるような内容の接触禁止文言を入れることができるようにしなければなりません。

 

6 「離婚するのに」,接触禁止条項を求められているケース

例えば,先ほどの例で,Cさんが,Aさんから「Bさんと離婚するから不倫の慰謝料請求する」と言って慰謝料請求をするとします。
しかし,その際にAさんからCさんに対し,「今後,Bさんと接触は一切しないという接触禁止条項に同意してくださいね」などとして,接触禁止を求めるケースがあります。
Cさんの立場からすれば,「どうして,離婚するのに(離婚すると言ってるのに),Cさんに接触禁止条項を求めるのかな?」と疑問に思うでしょう。
その理由には,二通りのパターンがあります。
一つ目は,本当に離婚はするつもりであるが,離婚するまでの間は,Cさんに近づいてほしくない,という場合です。二つ目は,本当は離婚などするつもりがないのに,離婚すると嘘をついている場合です。
前者の場合は,夫婦間で関係を修復することを模索している可能性もありますが,離婚が成立するまでの間は,事を荒立てたくない,という気持ちがあるようにも思われます。
後者の場合には,単に高額の慰謝料を請求するための方便ということですね。
ただ,どちらの場合であるのかは,慰謝料請求に精通していなければ,判断は難しいと思います。

 

7  離婚後の接触禁止文言(接触禁止条項)の効力

離婚後の接触禁止文言(接触禁止条項)の効力
上記のように,接触禁止文言を入れた場合には,先ほどの例では,BさんとCさんはもはや接触することはできないことが原則です。
もっとも,その後,AさんとBさんが離婚した場合にも,BさんとCさんは接触できないでしょうか?
Cさんとしては,AさんとBさんが離婚したのに,接触禁止文言があるとBさんに接触できないのかな?と疑問に思うでしょうし,他方で,Bさんとしても,Aさんと離婚したのでCさんを含む誰と会おうと自由だと考えるでしょう。
結論から申し上げると,AさんとBさんが離婚した場合には,AさんとCさんとの間の合意書で締結した接触禁止文言(条項)は,無効になる可能性が高いです。
なぜなら,既にAさんとBさんが離婚している以上は,BさんがCさんを含む誰と会おうと本来は自由ですし,CさんがBさんと会ったとしても,既にAさんとBさんは離婚しているため,これ以上,AB間の夫婦関係を破綻させることにもならないと考えられるからです。

 

8 接触禁止文言(条項)に違反した場合の違約金条項と違約金の相場について

・接触禁止条項に違反した場合の違約金条項について

まず,違約金を求めるためには,合意書の中に,接触禁止条項を定めた上で,それに違反した場合には,「違約金として・・・円を支払う」というような,違約金条項を定めておいた方がよいです。
仮に,違約金条項を定めていないとすると,確かに接触禁止条項に反したことにはなりますが,いったいいくら払えばよいのか,それとも払わなくてもよいのかが,一義的に明らかになりません。
また,接触禁止条項に実効性を持たせるためにも,違約金条項を定めた方が,慰謝料を請求する側の立場からすればよい,ということになります。
他方で,慰謝料を請求される立場からすれば,例えば,不倫相手と職場が同じで,今後も関わり続ける可能性があるのであれば,違約金条項まで定めるのは,避けたいところですね。

 

・接触禁止条項に違反した場合の違約金の相場

この点は,事案によって,千差万別ですが,基本的には,10~50万円といった数十万円程度が相場となるでしょう。また,違反行為をした回数ごとに定めることも良いと思います。
例えば,違反行為1回について10万円というような定め方ですね。
ここで,慰謝料を請求する立場の方からすれば,違約金の金額が高ければ高いほど良いと思われるかもしれません。
しかし,この金額をあまりに高額にしすぎると,公序良俗(民法90条)に反し無効となる可能性が高まります。
そうすると,せっかく定めた違約金条項の意味がなくなってしまいます。
そのため,高ければ高いほど良い,というわけではなく,あくまでも相場の金額を記載することが良いでしょう。

 

9 おわりに

不倫慰謝料請求で示談や和解をする場合,配偶者と不倫相手とが今後連絡を絶つことを約束する趣旨で示談書や和解条項に入れる文言を,接触禁止文言といいます。
接触禁止文言を入れることができるのは,両当事者の交渉がまとまり示談となった場合と裁判で和解が成立した場合で両当事者の合意があるときです。両当事者の合意がない場合や,和解が成立せず判決となった場合には接触禁止文言を入れることはできません。
接触禁止文言を入れるか,接触禁止文言の内容をどのようなものにするかは,交渉によることになります。

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