夫(嫁)から一方的に離婚を切り出されたらどう対応する?慰謝料は請求できるのか?
「昨日,夫(嫁)から急に離婚して欲しいと言われました。いきなりのことで驚いてしまいました。些細な喧嘩はあったものの,円満な夫婦生活を営んでいると思っていましたので,急に離婚を切り出される理由がわからず,どのように対応したらいいのかわかりません。
一方的に離婚して欲しいと言われると,離婚しなければならないのでしょうか。
このように一方的に離婚を請求された場合にどのように対応すればいいのか教えてください。」
幸せな結婚生活を送っていたところ,急に夫(嫁)から離婚を請求されてしまえば,どんな人でも非常にショックを受けてしまいます。その結果,感情的になってしまい,夫(嫁)に言われるがままに離婚してしまうというケースは少なくありません。
しかし、感情的になってしまい,即座に離婚に応じてしまうのは、少し待ったほうがいいでしょう。
離婚に応じる,応じないに関係なく,ここは冷静に対応したほうが,自身にとって有利な結果につながるからです。
本コラムでは、夫(嫁)から一方的に離婚を切り出された場合に夫(嫁)に対し慰謝料が請求できるのか,また,この場合の対応方法について解説します。
目次
1 夫(嫁)から一方的に離婚を切り出される2つの理由
配偶者の方からいきなり離婚を切り出されるという事例は思いのほか多く,理由も様々です。今まで何の問題もなく夫婦生活を営んでいたにもかかわらず,いきなり離婚を切り出さてしまい,その理由もわからず不安を感じる相談者の方も多くいらっしゃいます。
このように,いきなり離婚を切り出される場合,その理由として多いのは以下のものになります。
(1)不倫をしている・他に好きな人ができた
いきなり離婚を切り出す理由として最も多いのは,配偶者が不貞をしている・他に好きな人ができたということが挙げられます。
この場合では,それをそのまま伝えると,不貞となり慰謝料を請求されてしまうので,これを隠して離婚を切り出すということも少なくありません。
はっきりとしたことを言わずにとにかく離婚して欲しいという対応を取ってくることが多いので,この場合は特に感情的にならず,配偶者の方が不貞をしていないか等を調査した上で対応することが重要になってきます。
(2)性格の不一致を感じている
他にも,離婚を切り出される際によくある原因の1つとして「性格の不一致」が挙げられます。
しかし,「性格の不一致」といっても,漠然としており,納得できないかと思われます。
「性格の不一致」を理由として伝えられた場合,具体的に自分のどういうところが気になっているのか,配偶者からしっかり聞き出しましょう。
自分では気づかなった大きな理由で離婚を切り出されたのかもしれませんし,小さいことの積み重ねで離婚を切り出したのかもしれません。
一度は愛し合った夫婦ですので,冷静に話し合い,価値観のずれを修正すれば改善することできるはずです。
このように,配偶者の方が離婚を切り出す理由については,その理由次第で対応が変わる可能性がありますので,話し合いをして離婚を切り出された理由を知る必要があります。
もし,その理由を話してもらえない,納得できない場合には,調査を行う必要があります。
2 夫(嫁)から一方的に離婚を切り出されたら慰謝料はいくら請求できる?
(1)離婚を切り出されたことだけを理由に慰謝料を請求できるか
結論から言うと,離婚を切り出されただけでは慰謝料を請求することは認めらません。
慰謝料を請求するためには,権利侵害を受けたことが必要であるところ,離婚を切り出されただけでは,権利の侵害があったとまではいえません。そのため,離婚を切り出されたことだけを理由に慰謝料を請求することはできません。
(2)調査の結果,不貞等を行っている場合
一方で,配偶者の方が離婚を切り出した理由を調査をした結果,不貞を行っていることが発覚した場合は,まさに婚姻生活の平穏という権利が侵害されているため,慰謝料を請求することは可能です。
不貞行為に関する慰謝料は、個別の事情によって変動するためケースバイケースですが、50~300万円程度に収まるケースが多く見受けられます。
また,不貞行為がきっかけで離婚に至った場合には,慰謝料の金額が高額になりやすい傾向にあります。
関連記事:離婚慰謝料の相場は200万円?不倫・浮気・DVなど離婚の原因別に見る支払い条件と交渉方法
3 夫(嫁)から一方的に離婚を切り出された場合の対応法5つ
(1)法律上の離婚事由に該当しなければ離婚できない
配偶者の方から一方的に離婚を切り出され,それを拒否した場合,法律上定められている離婚事由に該当しなければ,一方的に離婚することはできません。
民法では,離婚理由として以下の5つが列挙されています。
①不貞行為 ②悪意の遺棄 ③3年以上の生死不明 ④配偶者が強度の精神病に罹り、回復の見込みがないこと ⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があること |
この5つのどれかに該当しない限り,一方的に離婚することはできません。
そのため,こちらの意思を無視して離婚が成立することはありませんのでご安心ください。
(2)なぜ離婚をしたいのか話し合う
まずは,なぜ離婚をしたいのかについて確認しましょう。
離婚の理由が「性格の不一致」だったり,相手の一時的な気の迷いであれば、話し合いによって夫婦関係を修復できる可能性があります。冷静に話し合い、価値観のずれを修正すれば改善することできるはずです。
離婚を望まない場合には,その気持ちを伝えて冷静に話し合いましょう。
離婚に応じる場合には,親権や慰謝料,財産分与の点も含めた離婚条件についても話し合う必要があります。
(3)離婚不受理届を役所に提出する
こちらが離婚を拒否すると,配偶者が勝手に離婚届を作成して提出してしまう可能性があります。
配偶者が離婚を急いでいたり,話し合うことを煩わしいと思っている場合,話し合う前に,勝手に離婚届を出してしまわないとも限りません。
離婚届は、記入ミスなどがなく形式さえ整っていれば、役所に受理されてしまいます。
あらかじめ離婚届が受理されないよう,役所へ行って「離婚届不受理申出」を行っておくとよいでしょう。
離婚届不受理申出をしたら、申出人の意思が確認できない限り,離婚届が受理されなくなり,配偶者による勝手な離婚届の提出を防げます。
(4)配偶者が不貞をしていないか調査する
話し合いの結果,配偶者のいう離婚理由が納得できない場合,配偶者の所持品やスマホ,PCなどを確認して不貞している痕跡がないかチェックしてみてください。
不貞の証拠としては,不貞相手とのやり取りのメールやLINE,ホテルや自宅に出入りする写真,2人で会っているときの写真といった肉体関係を推測させるものが重要になってきます。
関連記事:【完全版】旦那の浮気の証拠がつかめない?不倫の証拠14選を紹介
(5)離婚に応じない場合は同居を継続する
離婚に応じない場合には、極力、相手との別居を避けるようにしましょう
なぜなら,別居が長期間継続してしまった場合,婚姻関係が破たんしたものとして取り扱われてしまい,離婚調停や離婚裁判の際に,配偶者の方の離婚請求が認められてしまう場合があります。
反対に配偶者との同居が継続している場合,裁判所は,婚姻関係が破たんしていないとして,離婚請求を認めないことが多いです。
離婚に応じるつもりがない場合には,可能な限り,同居を継続しましょう。
また,調査をしたり,不貞の証拠を集めるのも同居していた方がチャンスも多く,その点からも,同居は継続するメリットは大きいです。
4 まとめ
夫(嫁)から一方的に離婚を要求されても、受け入れる必要はありません。
万が一,離婚を受け入れるなら、可能な限り有利な条件を設定しましょう。
離婚を拒否するとしても受け入れる場合でも、弁護士に交渉を依頼すると有利に進めやすくなるものです。
特に調停を申し立てられた場合や生活費を止められた場合、離婚条件を定める場合には自分ひとりで対応すると不利になりやすいので要注意です。
離婚を一方的に突きつけられて困ってしまったら、まずは離婚問題に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみてください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。