家庭内別居は何年続くと離婚できる?財産分与はどうなる?
「夫と離婚したいんです。私は専業主婦として夫を支えてきたつもりでしたが,夫はいつも,働いていない私のことを見下すような態度を取り,私の作る食事もちゃんと食べてくれません。私たちには子供がいるのですが,子供にも夫は無関心ですし・・・もうこれ以上夫の妻でいることに耐えられません。でも,私に貯金はあまりなく,すぐに子供を連れて別居することは難しい状況です。ネットとかを見てると,別居しないと離婚できないみたいなこと書いてあったのですが,私みたいな状況でも離婚はできないのでしょうか。」
夫婦とはお互いに支えあうものです。支えあう形はご家庭によりそれぞれで,共働きで支えあうこともあれば,片方が稼いで片方がお家と子供を守る。どの形がいいとか,働く方が偉いとか,子供の世話をしている方が偉いとか,そのような優劣はありません。ただ,残念なことに,自分の立場が上と誤解される方もおられるようです…。
今の生活が苦痛であれば,離婚をすることも一つの選択かと思います。ただ,離婚をするとなりますと,法律的なことがいろいろと絡んできます。本コラムでは,同居中の離婚について,別居が先行している離婚の場合と比較しながら解説いたします。
目次
1 家庭内別居は何年続くと離婚できる?
「家庭内別居」とは,夫婦の状態(状況)を評価する言葉であり,家庭内別居をするとかしないという話ではありません。「私たちは(同居してるけど)夫婦としてはもう終わっている」というのと差はありません。,人によって家庭内別居の意味合いはまちまちです。
裁判で離婚が認められるための要件として,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」というものが法定されています。つまり,これが認められる場合,法的手続で,強制的に(相手が同意しようと拒否しようと)離婚することが可能となります。
では,家庭内別居はその他婚姻を継続し難い重大な事由にあたるのでしょうか。
(1)家庭内別居での離婚は認められる?
実のところ,(物理的に)同居が続いている場合,残念ながら裁判上の離婚は認められにくい傾向にあります。なぜなら、客観的に見て一緒に生活をしているので、婚姻関係が破綻しているかは外からは分からないからです。そのため、婚姻を継続し難い重大な事由には該当しない、あるいは該当するとの立証ができないケースがほとんどです。
したがって、仮に家庭内別居を何年続けたとしても、裁判上の離婚が認められることは難しいです。
巷では,家庭内別居の背景に不倫(不貞)があった場合やDVがあった場合には離婚が認められるというようなことがいわれているようですが,そもそも不貞はそれ自体で離婚が認められる要件ですし,DVも,程度によるものの,これ自体で離婚が認められることはあります。つまり,家庭内別居により離婚が認められているわけではないのです。
(2)別居できないと離婚は諦めるしかない?
まず、別居できなくとも離婚する方法はあります。
その方法は、協議離婚です。簡単に言うと、話しあって離婚することです。これがもっとも簡単な方法です。ただし、協議離婚は相手に離婚に応じてもらう必要があるので、拒否されれば離婚できませんので、次の調停離婚や裁判離婚の手続きに進むことになります。
ここで、協議離婚についてもう少し説明すると,すなわち,旦那様と話し合い離婚の条件(お金の問題・親権等)を話合い,離婚届を役所に届出すれば,いかなる理由であれ離婚は可能です。細かな条件を協議することがすぐには難しい場合には,離婚届だけ先に出すことも考えられます。離婚届提出時に決めておくべき必須事項は,親権のみです。
さて,簡単に書いてしまいましたが,離婚について真剣に悩まれている方の中には,旦那様とそのような話を直接行うこと自体が苦痛である方もおられるかと思います。また,直接話をすると,どうしても感情的になってしまい,話が進まないという可能性もございます。また,そもそも相手が離婚に応じないこともしばしばあります。そこで,離婚調停という制度を利用することが考えられます。
(3)離婚調停とは?
離婚調停について,厳密な正式名称は,「夫婦関係等調整調停」ですが,ややこしいので本記事では単に「離婚調停」と表記します。離婚調停は,いわば,裁判所を間に挟んだ話し合いです。例えば,奥様が離婚調停を申し立てた場合,奥様の言い分を調停員(必ず男女1人ずつの2人です)という裁判所サイドの人が聞きます。その後,奥様は別室で待機し,旦那様が調停員のいる部屋に入り,奥様の言い分を調停員から聞いて,旦那様の言い分を聞いて,旦那様が別室で待機し,奥様がまた部屋に入って・・・の繰り返しとなります。これにより,直接顔を合わせることなく,話を進めることが可能となります。家庭内別居の状態ですと,旦那様も離婚を望んでいる可能性はございます。ただ,その他もろもろの条件面でもめることはあるかと思います。裁判所を間に挟み,解決案を模索します。
(4)離婚調停のデメリット
離婚調停を行ったとしても,調停はあくまで話し合いですので,旦那様が拒否した場合に強制的に離婚はできません。したがって,必ずしも離婚が成立するとは限らないのです。
(5)家庭内別居では、裁判離婚は認められない?
このように、協議離婚も調停離婚も成立しない場合には裁判を考えなければなりませんが,家庭内別居の場合,裁判離婚が認められないのが通常です。
そのため、相手が離婚を拒否している場合には、別居して手続きを進めることが大切なのです。
2 相手が原因で家庭内別居となったときはどうしたらいい?
(1)ご自身がどうしたいのか
ご自身がどうしたいのかをまずはお考え下さい。後々のお話次第で,変わる部分もあろうかと思いますが,今この瞬間,ご自身はどのように考えておられますか。相手と離婚はしたくない?離婚もやむなし?なのか今一度,お考えをまとめる必要がございます。
(2)離婚をしたくない場合
先ほど申し上げたように,家庭内別居のみでは,強制的な離婚は認められにくい傾向にあります。そのため,夫婦で話合うことが一番大切かと思います。直接お話しすることはがお辛いときは,弁護士に間に入ってもらうことも一案です。
(3)離婚もやむなしと考える場合
相手が一方的に家庭内別居状態にしてきた場合,あなたよりも相手の方が離婚をしたがっている可能性があります。したがって,離婚の話を進めるとした場合にあなたに有利な条件で離婚することができるかもしれません。
3 家庭内別居による離婚の場合、財産分与はどうなる?
(1)財産分与の基準時(一般論)
一般的には,別居時点若しくは婚姻関係破綻時点のいずれか早い方とされています。基準時以降の財産の増減は基本的には無視されます。例えば,別居時点で相手の財産が(預金とか車とか諸々込みで)500万円あった場合,別居後半年後に,相手がカジノで全額消費したとしても,逆に大勝ちして2000万円儲けたとしても,相手が支払うべきは250万円となります。別居の1日前でも同じ結果なのかといわれると,そうとは限らないのですが,一般論ではそうなります。
(2)家庭内別居のときの財産分与の基準時
同居中の場合には,婚姻関係の破綻は認められにくいので,離婚が成立した時点が基準となることが多いと考えられます。
4 同居中に離婚するときに子供がいた場合、親権や養育費はどう決められる?
(1)親権について
親権者は,お子様の福祉を重視して決められます。一般的には,監護養育を主にしていた方が持つべきとされています。お子様の年齢にもよりますが,具体的には,食事・幼稚園(小学校)への送り迎え・おしめの世話・お風呂・一緒に寝る・絵本などの家庭内学習・お子様との遊びといった行動を主にしていたのはどちらだったかというものです。別居が先行している場合,別居後に面倒を見ていた方が親権者となることがほとんどです。
親権はあくまでお子様のためのものですので,お子様にものごころがついておられる場合(目安としては小学生以上です),お子様の意見も踏まえることになるかと思います。お子様が15歳以上の場合,お子様の意見でほとんど決まるといってもいいでしょう。
(2)養育費について
養育費は,基本的に別居することが前提とされています。そのため,離婚後も同居を継続する場合,家計が一緒とみなされ,養育費は基本的にはもらえないことになります。ただし,旦那様が任意で支払う分には問題ないため,離婚協議や調停の中で,別居しない前提での養育費の取り決めをしておけば,支払を受けることが可能です。
5 おわりに
以上,解説させていただいたように,同居中に離婚の話を進めることことは、相手が話し合いに応じるスタンスであれば話はしやすいかもしれませんが、相手が離婚の話に応じないであるとかまともな話し合いにならない場合には、難しいと思われます。
そこで、このような場合に、離婚の話を進めるならば,別居をして話をすることが一般的であると思います。親族の方や知人等に協力いただき,何とか別居することができないか,改めて,周囲に相談をしてみてはいかがでしょうか。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。