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不倫慰謝料の示談書の書き方と弁護士の役割

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不倫慰謝料の示談書の書き方と弁護士の役割

「夫が不倫していたことが分かり、不倫相手と示談しようと思っています。私でも示談書の作成は可能でしょうか。不倫慰謝料の示談書に盛り込むべき内容と書き方を教えて欲しいです。」

配偶者が不倫をしていた場合、不倫相手に対して慰謝料を請求することができます。

慰謝料は、慰謝料を請求する人と不倫相手との間で話し合って取り決めることができます。

口約束で取り決めた場合も慰謝料を請求できますが、相手が支払わなかった場合にはトラブルとなる可能性があります。

そんな時は、示談書を作成しておきましょう。

今回は、不倫慰謝料の示談書の書き方と弁護士の役割について解説します。

関連記事:示談で不倫の慰謝料を解決する方法―自分で交渉するメリット・デメリットも解説―

 

目次

1 不倫慰謝料の示談書の意味と必要性

不倫慰謝料の示談書の意味と必要性

不倫慰謝料の示談書とは、当事者が合意して取り決めた慰謝料や約束事を書面にしたものをいいます。

書面によらない場合であっても、合意があれば示談は成立します。

しかし、のちに合意した内容が実現されなかった場合、合意の存在を示すものが存在しなければ、言った言わないのトラブルに発展する可能性があります。

そこで、そのようなトラブルを防ぐためにも示談書を作成し、証拠として残しておく必要があります。

 

2 不倫慰謝料の示談書に盛り込むべき内容と書き方

不倫慰謝料の示談書に盛り込むべき内容と書き方

不倫慰謝料の示談書に盛り込むべき内容は、個別の事案によって異なります。

主な記載内容は、以下になります。

(1)タイトル(表題)

(2)不倫の事実

(3)慰謝料の額

(4)支払いについての詳細

(5)誓約条項

(6)求償権の放棄

(7)清算条項

 

(1)タイトル(表題)

「示談書」とするのが一般的ですが、決まりはありません。

「合意書」や「和解書」などでも問題ありません。

タイトルの後に前書きを入れるかどうかも自由です。

 

【記載例】

示談書

●●●●(以下「甲」という)、▲▲▲▲(以下「乙」という)及び■■■■(以下「丙」という)は、乙と丙が不貞行為を行った件(以下「本件」という。)について、以下のとおり合意する。

 

※甲を慰謝料請求する人、乙を不倫相手、丙を甲の配偶者とした場合の記載です。以下の記載例も同様とします。

 

(2)不倫の事実

まずは、不倫した事実を記載します。

「不倫の当事者」と「不倫によって損害を受けたのは誰か」という点を明らかにしましょう。

また、「不倫した日付や期間」も記載し、いつの不倫についての合意なのかはっきり特定するようにしましょう。

なお、民法において不倫は「不貞行為」という文言を用いるため、示談書にも「不貞行為」と書くことが多いです。

 

【記載例】

第1条(謝罪)

乙は甲に対し、〇年〇月〇日から〇年〇月〇日までの間、甲の配偶者である丙と不貞行為を行ったことについて心より謝罪する。

 

(3)慰謝料の額

次に、当事者で取り決めた慰謝料の額を明らかにしましょう。

取り決めた額は、具体的な数字でなければなりません。

話し合って「100万円」と決めたのであれば「100万円」と書いてください。

「話し合って決めた額」や「相応額」などの表現だといくらを支払えばよいか決まっていませんので、効力はありません。

 

【記載例】

第2条(慰謝料)

乙は甲に対し、慰謝料として金100万円の支払義務があることを認める。

 

(4)支払いについての詳細

取り決めた慰謝料の支払いについての詳細を記載します。

主な取り決め内容は、以下のようなものになります。

 

・支払方法

・支払回数

・支払期日

・手数料の負担

・支払を怠った場合のペナルティ

 

支払方法については、まず、①一括で支払うのか、分割して支払うのか、②手渡しか、振り込みか、③振込の場合は、どこの口座に振り込むのかといった事項につき、定めなければなりません。

支払期日を守らなかった場合の「期限の利益喪失約款」や「遅延損害金」といったペナルティも定めて、後でトラブルとならないようにしましょう。

「期限の利益喪失約款」とは、慰謝料を分割で毎月支払うと取り決めたにもかかわらず支払われなかった場合に、一括で支払いを求めることができるようになる取り決めをいいます。

 

【記載例】

第3条(支払い方法)

乙は、甲に対し、前項の金員を、下記の通り分割して、甲の指定する口座(金融機関名:△△△銀行△△支店、口座番号:□□□□□□、種別:普通、名義人:●●●●)に振り込んで支払う。なお振込手数料は、乙の負担とする。

令和〇年〇月〇日限り 金40万円

令和〇年〇月〇日限り 金30万円

令和〇年〇月〇日限り 金30万円

以上

第4条(期限の利益の喪失)

乙が前条の分割金の支払を怠ったときは、当然に期限の利益を失い、第2条の金員から既払金を控除した残額を直ちに支払う。

 

(5)誓約条項

誓約条項としては、以下のようなものがあげられます。

 

・今後、配偶者と不倫相手が接触しないこと

・第三者に対して口外しないこと

・誓約条項を破った場合の違約金 など

 

今後、お互いが安心して生活していくうえで、守るべきルールを定めます。

また、誓約条項に違反した場合の違約金も定めておきます。

 

【記載例】

第5条(接触禁止)

乙と丙は、今後一切、接触してはならない。

第6条(口外禁止)

甲、乙および丙は、本件に関する内容を第三者に対して口外してはならない。

第7条(違約金)

第5条および第6条に違反した場合は、金50万円を支払う。

 

(6)求償権の放棄

求償権とは、お金を支払わなければならない人が2人以上いて、そのうち1人が自分の負担部分を超えて支払った場合に、超えた部分について他の人に対して、金銭の返還を求めることができる権利です。

不倫の場合、通常、不倫当事者は配偶者と不倫相手の2人であり、2人は「共同不法行為者」となって、連帯してお金を支払わなければなりません。

したがって、不倫相手が慰謝料を全額支払えば、自己の負担部分を超えた部分について、家計を共にする配偶者に請求できるようになるのです。

たとえば、2人の慰謝料の合計が200万円の場合、不倫相手が200万円支払えば、不倫相手が配偶者に対して100万円の支払いを求めることができるようになるのです。

これを防ぐために、初めから不倫相手に対する慰謝料の額を、たとえば100万円にしておいて、不倫相手から配偶者に対する求償権を放棄してもらうのです。

結果として、不倫相手が支払う額は変わらず、不倫相手のみが慰謝料を払うということになります。

 

【記載例】

第8条(求償権の放棄)

乙は、本件に関する丙に対する求償権を放棄する。

関連記事:浮気相手に慰謝料請求したい!請求方法などを解説

 

(7)清算条項

不倫についての争いを完全に終わらせるための条項です。

せっかく当事者で合意しても、あとから「慰謝料が高すぎたから返してほしい」とか、「安すぎたからもっと支払え」と請求されると合意した意味がなくなってしまいます。

そこで、「この示談書に記載したもの以外、一切の債権や債務は存在しない」ということを記載するのです。

 

【記載例】

第9条(清算条項)

甲と乙は、甲と乙の間には示談書に記載したもの以外、債権債務は存在しないことを相互に確認する。

 

3 不倫慰謝料の示談書の例(効力や内容を保証するものではありません)

示談書

 

4 不倫慰謝料の示談書における法的効力と注意点

不倫慰謝料の示談書における法的効力と注意点

示談者は、当事者が合意した内容を書面化したものですから、合意した当事者を拘束します。

しかし、内容によっては法的な意味をなさない場合もあります。

実現不可能であったり、人権を侵害したりするような内容は公序良俗に反して認められません。

 

(1)法外な額の慰謝料を請求する

たとえば、慰謝料の額を「金1億円」と設定したとしても法的に認められないのです。

法的に認められないとは、裁判となった場合には認められないことをいいます。

つまり、いくら当事者が合意したとしても、相手が支払えず裁判となった場合、単に不倫の慰謝料として1億という額は認められないのです。

 

(2)人権を侵害する内容を定める

たとえば、接触禁止条項に違反した場合「死にます」とか「1年間、無給で働きます」といった内容も認められません。

人の生命や身体などの人権を侵害するような内容も公序良俗に反して認められないのです。

 

(3)不明瞭な内容を定める

示談書の内容は、具体的で分かりやすい文言である必要があります。

たとえば、誓約書で「嫌がるようなことをしない」と記載した内容は法的な効力が認められないでしょう。

「嫌がるようなこと」とは、誰が見ても分かる文言で具体的にはっきりと書く必要があります。

上記で述べたとおり、慰謝料の金額設定を「話し合って決めた額」や「相応額」とすることも認められません。

 

5 不倫慰謝料の示談書作成における弁護士の役割

不倫慰謝料の示談書作成における弁護士の役割

(1)示談書の作成は簡単?

示談書は、個人でも作成することは一応可能です。

インターネット上で示談書のテンプレートをダウンロードすることも可能です。

しかし、テンプレートをそのまま使用した場合には,現実の内容と合致しないところが生じるところもあります。

相手に貯金がないのに支払方法を一括払いとしても、現実的な問題として慰謝料の回収が困難でしょう。

また、配偶者と不倫相手の職場が同じである場合には、誓約条項として「いかなる理由であろうと、今後一切、接触してはならない」と取り決めることには無理があります。

事案によって、適切な慰謝料の金額や支払方法、誓約条項などの内容は異なってきます。

事案に応じた、適切な内容の示談書を作成する必要があります。

また、当事者間だけで示談書を作成した場合には、相手方が配偶者との関係を断ち切らずに、関係を継続させるということも残念ながらあります。

なぜ、このような事態が生じるかというと、当事者間の話合いで簡単に決着がつくのであれば、相手も十分に反省しないこともあり、安易に関係を続けてしまうのです。

そのため、示談書を、個人や当事者間で作成することにはできますが、このようなデメリットがあることも理解しておきましょう。

 

(2)弁護士の役割とは

示談書の目的は、当事者の争いを終わらせ、その証拠を残すという点にあります。

しかし、その示談書の有効性をめぐって再びトラブルが生じては、示談書を取り決めた意味がなくなってしまいます。

示談書を確実に法的効力あるものとして作成するには、法律の専門家である弁護士などに相談するほうがよいでしょう。

また、弁護士であれば、個別の事案に応じた適切な内容の示談書を作成することが可能です。

今後のトラブルを確実に避けるためにも、弁護士に作成してもらうことをお勧めします。

また、弁護士を間にはさむことによって不倫相手にプレッシャーがかかりますので、反省が促されることになり、配偶者と不倫相手との不倫関係が継続しないということもあります。

そのため、示談書の作成や、慰謝料の交渉にあたって弁護士に依頼することもご検討ください。

 

6 まとめ

今回は不倫慰謝料の示談書の書き方と弁護士の役割について解説しました。

不倫慰謝料の示談書とは、当事者が合意して取り決めた慰謝料や約束事を書面にしたものをいいます。

不倫慰謝料の示談書に盛り込むべき内容と書き方についての詳細は、上で述べた通りです。

完全に決まった内容や書き方があるわけではありません。

しかし、法的効力をもたない合意書を作成しても、慰謝料の問題は解決しません。

また、個別の事案に応じた適切な内容の示談書を作成する必要があります。

確実にトラブルを解決するためにも、示談書の作成は弁護士に作成してもらうことをお勧めします。

このコラムの監修者

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