離婚慰謝料を旦那(夫)の両親に請求できる?
「旦那の不倫が発覚し、離婚しようと思っています。離婚の慰謝料を請求したいのですが、旦那は働いておらず経済力がありません。旦那の両親は、経済的に余裕があります。旦那の代わりに、旦那の両親に慰謝料の請求はできるのでしょうか。」
目次
1 離婚の慰謝料を旦那(夫)の両親に請求することは原則できない
原則として、離婚の慰謝料を旦那の両親に請求することはできません。
不倫(不貞行為)の場合、慰謝料の請求が認められる相手方は、旦那と不貞相手のみです。
離婚の慰謝料請求権は、不法行為にもとづく損害賠償請求権の一種であって、その請求は精神的苦痛を与えた者に対してのみ認められます。
旦那の不倫によって慰謝料を請求する場合は、旦那とその不貞相手となります。
旦那のDVによって離婚する場合、旦那のみとなります。
旦那に対して慰謝料の請求が認められたとしても、慰謝料を支払うために旦那が親からお金を借りなければならないという義務も発生しません。
原則として、旦那の両親は法律上の責任を負うことはないのです。
2 離婚の慰謝料を旦那(夫)の両親に請求できる例外的なケース
旦那の両親に慰謝料の請求が認められるのは、以下のような例外的なケースに限られます。
(1)離婚の原因を旦那の両親が作りだすケース
たとえば、旦那の両親から嫌がらせを受けていた場合です。
旦那の両親からの嫌がらせによって離婚する場合、旦那の両親に対する慰謝料請求が認められる可能性があります。
俗にいう「嫁いびり」を認定して、旦那と旦那の両親に対し、共同不法行為として100万円の慰謝料が認められた事例があります(盛岡地判昭52・1・26)。
旦那の両親によって無理に別れさせられたり、異常な干渉を受けて夫婦関係が壊されたりといった場合には、例外的に慰謝料を請求できる可能性があります。
(2)旦那の両親が連帯保証人となっているケース
慰謝料の支払いについて、旦那の両親が連帯保証人となった場合には、旦那の両親に請求することができます。
もっとも、親を連帯保証人となることを請求する権利はないため、旦那の両親の意思によることが前提です。
実際は、両親が慰謝料の支払いについて連帯保証人となる前に、両親が慰謝料を立て替える場合がほとんどでしょう。
3 離婚の慰謝料を旦那(夫)の両親に請求する際の注意点
上記のようなケースに該当する場合、旦那の両親に対する慰謝料の請求が認められるかもしれません。
もっとも、離婚の慰謝料を旦那の両親に請求するには証拠が必要です。
「嫁いびり」といっても、旦那の両親が具体的に何をしたのかということを証拠によって明らかにする必要があります。
例えば、ICレコーダーやスマホの録音機能を使って会話の内容を録音しておけば、具体的に何を言われたか明らかにすることができます。
監視カメラによって録画することにより、具体的に何をされたか明らかにすることが可能です。
毎日、何をされたのか、何を言われたのかメモを残しておくことも重要です。
証拠は複数あることが望ましいため、複数の証拠を集めるようにしましょう。
4 離婚の慰謝料を旦那(夫)の両親に請求できない場合の対処法
旦那の両親に離婚の慰謝料請求が認められない場合、旦那や不貞相手に請求するしかありません。
仮に裁判となって請求が認められたとしても、相手に経済力がなく回収できなければ意味がありません。
多少なりとも金額について妥協し、確実に慰謝料を回収する方がいい場合もあるでしょう。
そのような場合、なるべく話し合って実際に支払うことができる金額の合意をするようにしましょう。
5 まとめ
原則として、離婚の慰謝料を旦那の両親に請求することはできません。
旦那の両親に慰謝料の請求が認められるのは、(1)離婚の原因を旦那の両親が作りだすケースや(2)旦那の両親が連帯保証人となっているケースといった例外的な場合に限られます。
そのような場合であっても、実際に、旦那の両親に対する慰謝料の請求が認められるには証拠が必要です。
できるだけ複数の証拠を集めるようにしましょう。
旦那の両親に離婚の慰謝料請求が認められない場合、旦那や不貞相手に請求するしかありません。
裁判で慰謝料の請求が認められるにしても、認められる慰謝料を回収できなければ意味がありません。
できるだけ実際に支払ってもらえる金額で合意し、確実に慰謝料を回収するようにしましょう。
もし、不安な様でしたら、一度弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。