離婚後も旦那名義の家に住み続けることは可能?住むメリット・デメリット
2020年(令和2年)の離婚件数は、約19万3千組でした。
離婚件数は、昭和の時代から比べると多いのですが、2002年(平成14年)から減少傾向にあります。
離婚を踏みとどまる主な理由としては、子どもがいるので我慢した、離婚後の生活費が不安である等があげられます。
特に、専業主婦(主夫)を長年していた場合には、1人で生活していけるのか不安な方もいるでしょう。
未成年の子供がいる場合には、生活環境の変化をなるべくおさえたいという方も多いと思います。
離婚後も旦那名義の家に住み続けることができる場合、余計な出費をおさえ、環境を変えずに生活していくことが可能となるかもしれません。
本コラムでは、離婚後も旦那名義の家に住み続けることができるのか、できる場合に住み続けるメリット・デメリットなどをお伝えします。
目次
1 離婚後も旦那名義の家に住み続けることは可能?
結論からいうと、離婚後も旦那名義の家に住み続けることは可能な場合があります。
以下で、詳しく解説します。
(1)離婚における自宅不動産は「財産分与」の問題となる
財産分与とは、離婚時あるいは離婚後に、夫婦が協力して形成した財産を分配することをいいます。
財産といっても、離婚時に存在した全ての財産が財産分与の対象となるわけではなく、対象とならない財産もあります。
財産分与の対象となる財産を「共有財産」、財産分与の対象とならない財産を「特有財産」といいます。
自宅が持ち家である場合、婚姻中に購入して住宅ローンを返済していたのであれば、たとえ夫名義であったとしても「共有財産」となります。
預貯金や不動産など、すべての「共有財産」を合わせ、2分の1ずつ分けることが原則です(2分の1ルール)。
一方が専業主婦(主夫)であった場合でも、家事や育児をしていたから他方が稼ぐことができたといえるため、財産形成への貢献は同じということができ、原則として割合は変わりません。
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(2)離婚後も旦那名義の家に住み続けることができる場合
自宅が持ち家であって財産分与の対象となる場合、財産分与において自宅を取得すれば、そのまま住み続けることが可能です。
また、財産分与において自宅を取得できる場合は、自宅の売却価値を現金換算し、2分の1ルールに従って取得する場合に限りません。
財産分与は、当事者の話し合いによる場合、自由に定めることができるからです。
たとえば、夫の浮気が原因で話し合いによって離婚する場合、夫が「自分が自宅のローンを払い続けるからそのまま住んでくれ」ということがあります。
そのような場合には、預貯金を二人で分けるとともに、自宅は妻が住み続けるということも可能です。
2 離婚後も旦那名義の家に住み続けるメリット
離婚後も旦那名義の家に住み続けるにあたっては、メリットとデメリットの両方があります。
メリットとデメリットを理解したうえで、住み続けるかどうか判断しましょう。
メリットとしては、以下のようなものが考えられます。
(1)生活環境が変わらない
未成年の子どもがいない場合は、あえて生活環境を変えたいという方もいるかもしれません。
しかし、未成年の子どもがいる場合、生活環境が変わらないことは大きなメリットといえるでしょう。
家を売却することとしたり、夫が住み続けることになったりする場合には、引っ越さなくてはなりません。
引っ越しとなると、子どもは転校しなくてはいけなくなる可能性があります。
親の離婚によってただでさえショックを受けている子供が、さらに転校によって友人と別れることによりショックを受けてしまいます。
そのため、未成年の子どもがいる場合は、生活環境が変わらないことは大きなメリットといえます。
(2)時間や労力を費やさない
ご自身の実家に帰ることができる場合はいいのですが、そうでない場合には、新たに住む家を探さなくてはなりません。
新たに家を探す場合は、どうしても時間や労力が必要となってしまいます。
(3)経済的負担が軽減される
新たに家が見つかったとしても、賃貸の場合には家賃を支払っていかなくてはなりませんし、新たに家具や家電を揃えたりしなくてはなりません。
婚姻中の家に住み続けることができれば、このような負担は生じません。
3 離婚後も旦那名義の家に住み続けるデメリット
デメリットとしては、以下のようなものが考えられます。
(1)強制退去を命じられる可能性がある
家のローンが残っていて、旦那が支払いを滞納してしまった場合、ある日突然に強制退去を命じられるかもしれません。
結果的に、住み続けることができなくなってしまいます。
旦那としては、自分が住まない家のローンを払い続けるわけですから大変辛く感じる場合もありますし、離婚後に収入が減ったり出費が増えたりと、経済的事情が変わる場合もあります。
そのため、旦那がローンを滞納してしまうというケースは実際よくあります。
(2)ローンの請求がくる可能性がある
強制退去の場合と同様に、旦那が支払いを滞納してしまった場合、あなたが連帯保証人となっていると、残っているローンの請求がくる可能性があります。
あなたが支払えない場合には、結果として強制退去が命じられるかもしれません。
(3)旦那が家を売却する可能性がある
家は旦那名義であるため、実際に住んでいる妻や子どもの承諾を得ることなく、家を売却することができます。
第三者に売却した場合、その第三者が家の所有者となるわけですから、通常、「出て行け」と言われれば出て行かなくてはなりません。
4 旦那名義の家に住むときに起こりやすいトラブルと対処法
離婚後もあなたが旦那名義の家に住むときに起こりやすいトラブルとしては、旦那がローンを支払わなかったり、家を処分したりするなどして出ていかざるを得なくなる場合です。
そこで、以下のような対処法が考えられます。
(1)家の名義を妻に変更し、住宅ローンの名義を妻に借り換える
名義を借り換えることによって、旦那が支払いを滞納することで強制退去が命じられたり、旦那が勝手に家を処分したりすることがなくなります。
もっとも、この方法がとれるのは、あなたが働いていて相応の安定した収入がある場合に限られます。
また、残っているローンについては、あなたが払い続ける必要があります。
(2)ローン返済後、家の名義を妻に書き換える
ローンが残っている場合、通常、家の名義を変更するには金融機関の承諾が必要となります。
しかし、ローンの名義を借り換えない場合、家の名義を変更することの承諾はしてくれないでしょう。
そこで、夫がローンを完済し終わってから、家の名義を妻に変更するということが考えられます。
家の名義を変更すれば、家が勝手に処分されるということはなくなります。
この場合、住宅ローン完済後に妻に名義を変更することを合意し、証拠として公正証書に残しておきましょう。
(3)旦那名義の家に住み続けること以外を検討する
旦那名義の家に住み続ける場合、出て行かないといけなくなるというデメリットに対処することは困難な場合が多いです。
離婚時に家を売却し、売却価額を2人で分けるという方が、結果として良かったという場合があります。
旦那名義の家に住み続けることのメリット、デメリットを理解し、夫ともよく話し合って慎重に判断しましょう。
(4)弁護士に離婚協議書、公正証書の作成を依頼する
このように、旦那名義の住宅に住み続ける場合には、一定のリスクがあります。
また、住み続ける場合には、その旨の合意をしっかり書面(離婚協議書や公正証書)で残しておくべきです。
書面で残していれば、ローンを完済したは良いが、家の名義を妻に変更してくれないことや、登記の手続きに協力してくれない、家を売却された場合に取りうる手段がない、など、そういった不利益を回避できる可能性が上がります。
そして、こうした問題点を踏まえて書面を作成するには、ご自身で対応するのは難しいですし、万が一、法的に効力のない書面を作成してしまえば、取り返しがつかないこともあります。
そこで、専門家である弁護士に依頼をすることをご検討ください。
5 まとめ
離婚後も旦那名義の家に住み続けることは可能です。
しかし、旦那名義の家にそのまま住み続けることが常に最良の判断というわけではありません。
家のローンが残っている場合には、結果として出て行かないといけなくなることもあります。
離婚後の事情は、人によって様々です。
旦那名義の家に住み続ける場合のメリット・デメリットを理解したうえで、慎重に判断しましょう。
ご自身での判断に悩まれる場合には、一度弁護士に相談することをお勧めします。
また、住宅ローンの支払いをしてもらうことや家に住み続けることを明記した離婚協議書、公正証書の作成についても、弁護士に依頼することをご検討ください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。