不倫慰謝料の時効は?未払いの養育費はどうなる?
目次
1 はじめに
原則として,慰謝料請求の条件が整っており,それを証明できれば,不倫相手や不倫をした配偶者に対し慰謝料を請求することができます。しかしながら,いつまでも慰謝料請求できるのではなく,時効により,慰謝料を請求することはできなくなります。
以下では,慰謝料と時効について解説していきます。
2 時効とは
(1)時効とは
時効とは、権利が行使されることなく一定期間経過することにより、権利が消滅することをいいます。
慰謝料請求の時効について、民法724条で以下の通り規定されています。
「不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき
二 不法行為の時から20年間行使しないとき」
すなわち、不倫慰謝料請求権は、
「不貞行為及び不倫相手を知ったときから3年間」
または
「不貞行為のときから20年間」
行使しない場合には、慰謝料の支払いを求めることが出来なくなります(消滅時効)。
(2)不貞行為及び不倫相手を知った時から3年間
①不貞行為の事実を知った時点
請求する慰謝料の性質により、不貞行為を知った時点、すなわち、時効の起算点が異なります。
(ア)不貞行為それ自体から生じる精神的な苦痛に対する慰謝料
不貞行為の事実を知った時が起算点となります。
(イ)不貞行為により夫婦が離婚することから生ずる精神的な苦痛に対する慰謝料
不貞行為により夫婦が離婚した時が起算点となります。
②不倫相手を知った時点
不貞行為の事実を知っていても、不倫相手を知らない場合には時効期間のカウントが開始しません。不倫相手の住所氏名がわかれば、不倫相手を知った時点と評価でき、時効期間のカウントが開始します。
(3)不貞行為のときから20年間
また、不倫関係が始まった時から20年間経過した場合も、慰謝料を請求できなくなります(消滅時効)。
3 時効の完成を止める方法
時効の完成の直前に慰謝料請求をすることになったとしても,次の方法により,時効の完成を止めることができます。
(1)裁判上の請求等(民法147条)
裁判上の請求や支払督促、民事調停などの手段を行うことにより、時効の完成は猶予され、その手段がとられている間は時効が完成しません。
そして、上記の場合において確定判決または確定判決と同一の効力を有するものにより権利が確定した場合には、積み重なってきた時効期間はなくなり、時効のカウントはゼロに戻ります。
(2)内容証明郵便の送付
内容証明郵便を相手方に送付することは、上記の支払督促(民法147条1項2号)に該当するため、送付後6か月間、時効は完成しません。
4 時効が完成した場合
時効が完成した場合であっても,不倫相手や不倫をした配偶者に対する慰謝料請求権は当然に消滅するのではなく,相手方の時効の援用により消滅することになります。
そのため,相手方が時効の完成を知らず,慰謝料を支払う意思があるのであれば,慰謝料を請求することができます。
5 離婚後に請求する慰謝料以外の時効
配偶者と離婚した場合,配偶者に対し慰謝料だけでなく財産分与や養育費を請求する場合があります。
財産分与については,離婚の成立日から2年間行使しないときは消滅します(民法768条2項但書:除斥期間)。
※除斥期間は一定期間経過すると権利が消滅するという点で消滅時効と同様に類似しますが、時効の援用や時効の完成猶予ないし更新が無いという点で消滅時効と異なります。
養育費については、確定判決または確定判決と同一の効力を有するものによって確定した場合には、10年間の消滅時効にかかります(民法169条1項)。
すなわち、10年間行使しない場合には、養育費の支払いを求めることが出来なくなります。
6 おわりに
慰謝料請求権は時効にかかります。もっとも、裁判上の請求や支払督促を行い、請求権の存在を確定させた場合には、時効の完成を止めることができます。また、時効が完成した場合でも相手方に支払う意思があれば慰謝料を請求できます。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。