モラハラを理由とする慰謝料請求
目次
1 はじめに
配偶者の一方からモラハラを受けた場合,モラハラを受けた配偶者は精神的な負担を負うはずです。モラハラを受けた配偶者はその負担を回復するために法律上採れる手段はあるのでしょうか?
以下では,モラハラを理由とする慰謝料請求について解説していきます。
2 モラハラとは
モラハラとは,モラルハラスメントの略で精神的な暴力等による嫌がらせをいいます。
具体的に,以下のような場合にモラハラに当たるとされています。
(1)相手を貶める言動
(2)相手を継続的に無視し続けること
(3)一緒に食事をとらないこと
(4)家事の不備を片っ端から指摘すること
このような行為を受けた配偶者は精神的な負担を負うことになります。そこで,精神的な損害を回復する方法としてモラハラを理由とした慰謝料請求が考えられます。
3 モラハラを理由とする慰謝料請求
モラハラを理由とする慰謝料請求の前提として,まず,相手方と別居をして精神的安定を持つのがいいでしょう。別居をした場合,生活に困る場合があるので,このときは婚姻費用分担請求調停を申し立てる方法があります。婚姻費用とは,別居中に収入の多い配偶者から収入の少ない配偶者に対して支払う生活費をいいます。この調停により,婚姻費用を請求することができます。
(1)協議離婚
まず,夫婦間で離婚の話し合いをすることになります。その際に慰謝料の交渉をするといいでしょう。上記のように別居をしている場合には,メールやLINEなど交渉の記録が残るもので慰謝料の交渉を行うといいでしょう。また,別居をせずに同居の場合には,直接慰謝料の交渉を行うことになります。
(2)離婚調停
離婚について協議ができていない場合には,家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。そこで,離婚の問題だけでなく,慰謝料の問題についても調停委員を挟んで話し合うことになります。
(3)裁判離婚
離婚調停で,離婚問題や慰謝料の問題が解決しない場合には,訴訟により,裁判所の判決という形で離婚及び慰謝料の額が判断されることになります。裁判離婚の場合,民法770条1項の離婚事由が要求されますが,モラハラの場合,「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(同条項5号)にあたる可能性があります。
訴訟手続では,当事者双方が主張書面を交わしたり,証拠を提出することになります。場合によれば,尋問期日で,夫婦それぞれが質問されることになります。審理中に和解期日が設けられることがあり,裁判所が提示した和解案に合意すれば,合意した額の慰謝料の支払いを受けることができます。和解が成立しない場合,最終的に裁判所が判決という形で慰謝料の額について判断します。
4 慰謝料請求の証拠
モラハラを理由として慰謝料請求をする場合,慰謝料を請求する側がモラハラの事実を証明しなければなりません。そして,以下の物がモラハラの証拠となります。
(1)診断書
モラハラによって精神的な障害を負った場合には,まず病院に行き,医師の診断を受けましょう。そして,作成される医師の診断書は,モラハラの事実を証明する証拠となります。
(2)夫婦間のやり取りがわかる物
モラハラを受けたときの様子がわかる録音データであったり,夫婦間のメールやLINEでモラハラをほのめかすものがあれば証拠になります。
(3)日記やメモ
モラハラを受けた日時やモラハラの具体的な内容について記載された日記やメモはモラハラの事実を証明するのに役立ちます。
(4)家族や知人の証言
モラハラを受けたことを家族や知人に相談した場合,家族や知人はモラハラの内容を知っているので,彼らの話を証拠とする方法があります。
(5)カウンセラーの証言
モラハラの被害をカウンセラーに相談することがあります。この場合,カウンセラーの証言もモラハラの証拠となります。
5 モラハラと慰謝料額
モラハラによる慰謝料の額は認められたしても数十万円程度が多いとされていますが,以下のような事情により,慰謝料額が増減することがあります。
(1)モラハラの回数・期間
モラハラの回数が多ければ多いほど,また,モラハラの期間が長いほど慰謝料の額が増加する可能性があります。
(2)モラハラ被害者の落ち度
何の理由もなく相手方からモラハラを受ける場合がありますが,モラハラの原因が被害者にもある場合には,慰謝料の額が減額される可能性があります。
(3)夫婦の婚姻期間
夫婦の婚姻期間が長ければモラハラの期間も長く,モラハラ被害者の精神的な負担も大きくなるため,慰謝料の額が高額になる傾向にあります。
(4)当事者の年齢
モラハラをする側,される側の年齢が高い場合に慰謝料が増額される傾向にあります。
(5)当事者の資産状況
モラハラをする側の収入や資産が多く,される側の収入や資産が少ない場合には慰謝料が増額される傾向にあります。
(6)子供の有無
子供がいる場合には,慰謝料が高額になる傾向にあります。
(7)モラハラにより大きな精神的な病を患った場合
モラハラによりうつ病など重大な精神的な疾患を患った場合も慰謝料の額が増額される傾向にあります。
6 おわりに
このように,モラハラを受けた配偶者は慰謝料請求をすることができる可能性もあります。もっとも,配偶者の言動がモラハラにあたるかどうか微妙な場合も考えられます。そのような場合には,一度弁護士に相談するのをお勧めします。
法律事務所ロイヤーズ・ハイでは,慰謝料請求に関し経験豊富な弁護士が在籍しております。慰謝料請求を検討されている方は,当事務所の弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。