夫のマザコンにイライラする!離婚して慰謝料請求できる?
マザコンとは、一般的に、母親に対して強い愛着を持つ男性を指します。
世界的に見れば、母親に対して強い愛着をもつことは当然のことであり、母親の言うことを聞くという男性は非常に多いです。
しかし、日本において、マザコンという言葉はネガティブな印象を与える言葉として認識されています。
実は、マザコンの正式名称であるマザーコンプレックスという言葉は、英語ではなく、日本で造られた和製英語なのです。
マザコンをネガティブなものとして捉えることは、日本独特の文化といえるでしょう。
母親を敬ったり、大切にしたりすることは決して悪いことではありません。
しかし、何事も度が過ぎると問題を引き起こします。
母親の言うことばかり聞いて、一緒に暮らしている妻の言うことは軽視する。それどころか、妻には一方的に母親の言うことを押し付ける。
妻としては、一体誰と結婚したのか分からなくなるかもしれません・・・。
今回は、そんな度が過ぎたマザコンの夫と離婚や慰謝料請求ができるのかについて解説したいと思います。
目次
1 マザコンを理由に夫と離婚できる?
結論から述べると、マザコンを理由に夫と離婚することは難しいです。
もっとも、絶対に離婚できないというわけではありません。
どのような場合に離婚できるのか、以下でご紹介します。
(1)協議離婚の場合
協議離婚とは、夫婦で話し合って離婚の合意にいたり、役所に離婚届を提出するという離婚手続きです。
実際、離婚の9割近くが協議離婚であり、一般的な離婚手続きといえます。
協議離婚の場合、夫婦の話し合いによって合意にいたれば離婚できます。
そのため、合意にいたればマザコンの夫と離婚することができるでしょう。
しかし、マザコンの夫と離婚の合意にいたることは困難な場合が多いです。
マザコンの夫は、自分がマザコンであることを気付いていなかったり、マザコンであることが悪くないと思っていたりします。
もちろん、マザコンであること自体が一概に悪いこととは言いませんが、そのことによって妻のことを軽視していることに気付いていません。
そうすると、「自分は悪くないのだから離婚しない」という考えに至ります。
結果として、話し合いによる離婚の合意は困難となるのです。
また、夫が義母に相談することによって、妻が悪者扱いされ、スムーズな話し合いどころか余計に頭痛の種となるかもしれません。
(2)調停離婚の場合
調停離婚とは、裁判所を通じて調停委員の仲介のもと、夫婦間で離婚についての話し合いを行い、合意に至れば役所に離婚届を提出して離婚するという離婚手続きです。
夫婦間の話し合いで合意に至らなかった場合であっても、第三者である調停委員が解決案を出すなどして話し合うため合意に至る場合があります。
話し合いという点においては協議離婚の場合と変わらないため、自覚のないマザコンの夫と話し合うことは困難といえます。
仮に、調停委員が過度なマザコンを指摘したところで、義母の意見に勝ることはないでしょう。
そのため、やはり離婚の合意に至ることは難しいといえます。
もっとも、第三者から指摘されることによって、自分は少し度が過ぎているかもしれないと気付くきっかけになるかもしれません。
度が過ぎたマザコンの夫は、妻の言うことを軽視しますが、第三者の意見は聞き入れる場合があるためです。
(3)裁判離婚の場合
調停において離婚の合意に至らなかった場合、裁判を起こさなければいけません。
裁判で離婚となると、法律で定められた離婚原因(法定離婚事由)が必要となります。
法律で定められた離婚原因は、以下の通りです。
(裁判上の離婚) 第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 一 配偶者に不貞な行為があったとき。 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 (略) |
5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは、夫婦関係が破綻し、回復の見込みがないことをいいます。
たとえば、配偶者からDVやモラハラを受けていたり、長期間におよぶ別居状態が認められたりする場合です。
夫がマザコンであることだけでは、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とはいえません。
もっとも、マザコン以外にDVやモラハラが認められたり、長期間におよぶ別居状態が認められたりすれば、裁判で離婚が認められることになります。
モラハラとは、モラルハラスメントの略で、道徳や倫理に反する嫌がらせのことです。
たとえば、人格を否定したり、存在自体を無視したりする場合はモラハラにあたります。
母親のことばかり聞くような、度の過ぎたマザコンの夫は、妻を無視したりバカにしたりする言動をとることがあります。
そのような言動が認められれば、離婚が認められる可能性があります。
また、夫のマザコンが耐えられなくて長期間別居している場合にも、離婚が認められる場合があるでしょう。
2 マザコンを理由として夫に慰謝料を請求できる?
結論から述べると、マザコンを理由として夫に慰謝料を請求することも難しいです。
マザコン以外に理由があれば、慰謝料が認められる場合があります。
(1)マザコンであることのみを理由に慰謝料請求は認められない
慰謝料とは、不法行為によって受けた精神的苦痛を賠償するお金のことです。
不法行為とは、故意または過失に基づいて権利や利益を侵害する行為のことです。
マザコンであることは、不法行為に該当するとはいえません。
そのため、マザコンであることのみをもって慰謝料を請求することはできないのです。
(2)慰謝料請求が認められる場合
マザコン以外に、不倫やDV・モラハラなどが認められる場合には、慰謝料請求が認められる可能性があります。
義母から暴力や暴言を受けている場合、義母に対して慰謝料請求をすることは可能です。
この場合、マザコンの夫が味方してくれるどころか、見て見ぬふりで放置した場合には、夫に対して慰謝料請求が認められる可能性もあります。
3 マザコンの夫と離婚して慰謝料を請求する際に気をつけること
離婚や慰謝料を請求する際に気をつけることは、相手が言い逃れできないよう証拠をそろえることです。
上で述べたよう、マザコンであることのみで離婚や慰謝料を請求することは難しく、マザコン以外に不倫やDV、モラハラといった事情が必要となります。
それらの事情は、証拠によって明らかにしなくてはなりません。
日常的に、夫や義母から暴言を受けている場合には、暴言を録音した記録がモラハラの証拠となります。
たとえば、「母親の料理に比べお前の料理はマズイ」とか「母親ならここまで掃除するのに」、「妻として失格だ」、「役立たず」などの言葉は、すべてモラハラの証拠となりえます。
また、知人の証言や心療内科の診断書なども証拠として認められる場合があります。
そのような証拠をそろえ、言い逃れできないようにしましょう。
複数の証拠があれば、有利に話し合いを進めることができますし、裁判において離婚や慰謝料の請求が認められやすくなります。
4 まとめ
今回は、度が過ぎたマザコンの夫と離婚や慰謝料請求ができるのかについて解説しました。
マザコンを理由に、夫に対して離婚や慰謝料を請求することは難しいです。
しかし、マザコン以外に不倫やDV、モラハラといった事情があれば、離婚や慰謝料請求が認められる可能性があります。
特に、度が過ぎたマザコンの夫はモラハラをする傾向があります。
日常的に、暴言を浴びせられたり、無視されたりする場合には、必ず録画・録音して証拠を残すようにしましょう。
一度だけの暴言では、モラハラが認められにくいので、証拠は複数集めるようにしてください。
弁護士であれば、示談交渉から離婚裁判に至るまで、あなたに代わって行うことが可能です。
もし、ご不安な様でしたら、お一人でお悩みにならず、一度弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。