慰謝料請求事件で裁判しないメリット
目次
1 はじめに
「慰謝料請求事件で裁判するメリット」の記事で述べた通り慰謝料を請求する側と請求される側の双方で様々なメリットがあります。一方で,裁判をしないメリットもあります。
以下では,慰謝料請求事件で裁判しないメリットについて慰謝料請求をする側のメリット,慰謝料請求をされる側のメリットについて解説していきます。
2 慰謝料を請求する側のメリット
慰謝料を請求する側にとって裁判をしない場合,次のようなメリットが得られることがあります。
(1)提示された慰謝料の額を基に話し合いがなされるので,ある程度結果を予想することができる
裁判をする場合,慰謝料を請求する側が不貞行為の事実を主張し,証拠により証明しなければなりません。十分に主張や証明が尽くされていた場合には,相場による判決がなされることが多いです。もっとも,十分に主張や証明が尽くされていない場合には,当初請求していた額よりも少ない額の慰謝料しか認められず,最悪の場合,慰謝料自体認められないことになります。
そのため,裁判の場合,最終的に裁判所が判決により慰謝料の有無と額を判断することになりますが,請求した時点では判決でなされる額は予想できず,また,予想できたとしてもそれよりも少ない額しか認められない場合があるというデメリットがあります。
一方,当事者同士の交渉の場合,提示された慰謝料の額を基に話し合いがなされるので,ある程度結果を予想することができます。そのため,裁判をしない方が慰謝料を請求する側にとってメリットになります。
(2)事件解決までの時間がかからない
慰謝料を請求する場合,一般的に交渉が行われ,これにより示談が成立すれば相手方に対し一定額の慰謝料を請求することができます。交渉の場合には,数カ月程度で事件が解決します。
もっとも,交渉がうまくいかず裁判をする場合,期日は1,2か月ごとに開かれ,当事者の主張や証拠の提出状況により時間が掛かることになります。そのため,交渉では数カ月程度で終わるものが裁判の場合,判決まで行くと1年から1年半かかることがあります。
そのため,交渉の方が裁判よりも事件解決まで時間が掛からないという点で,裁判をしないメリットがあります。
(3)裁判の尋問が行われず、交渉で済ませることができる
手続きが進むと尋問が行われ,公開の法廷で当事者や裁判官から様々な質問を受けることがあります。これは,慰謝料を請求される側だけでなく請求する側に対しても行われるので,一定程度の負担は避けることができません。
したがって,交渉で済ませる方が尋問は行われないという点で,裁判しないメリットがあります。
3 慰謝料を請求される側のメリット
一方で,慰謝料を請求される側にとっても裁判をしない場合,次のようなメリットが得られることがあります。
(1)基本的に訴状が自宅に送達されることがない
不倫の事実を同居に知られたくない場合,交渉の段階では内内で話し合いをすることができますが,裁判の場合,裁判所から訴状が送達される結果,同居人に不倫の事実を知られる可能性があります。
したがって,裁判の場合,訴状が自宅に送達され同居人に知られるデメリットがあるので,裁判をしない方がいい場合があります。
なお,交渉の段階で弁護士に依頼しておけば,弁護士が窓口となるので訴状は自宅に送達されないことがありますが,訴状を本人か弁護士のいずれに送るかは請求する側の判断によるので,必ずしも自宅に送達されないとは限りません。
(2)裁判に出廷する物理的、経済的な負担がなくなる
慰謝料を請求する側は不貞行為を証明するために,あらゆる証拠を提出するため,本来であれば他人に見せることを想定していないメールやLINE,写真などが裁判により現れることになります。そのため,裁判になると心理的なプレッシャーを受けることになります。
裁判の場合,期日ごとに本人また委任した弁護士が裁判所に出廷しなければなりません。そのため,物理的,経済的な負担があります。
したがって,裁判の場合,慰謝料を請求される側のプレッシャーは大きくなるので,慰謝料を請求される側にとって裁判をしない方がメリットになる場合があります。
(3)裁判の尋問が行われない
上で述べた通り,裁判手続きが進むと,公開の法廷で当事者や裁判から様々な質問を受けることがあります。この場合,慰謝料を請求される側は相手方から厳しい指摘を受けることが予想されるので,一定の負担を避けることはできません。
そのため,交渉で済ませる方が尋問は行われない点で,裁判をしないメリットになります。
(4)判決による強制執行を受けることが避けられる
訴訟が提起され,和解がなされない場合は判決により不貞行為の有無と慰謝料の額が判断されます。もし,一定額の慰謝料を認める判決がされた場合には,これをもとに慰謝料を請求する側は強制執行を申し立て,給与などを差し押さえることができます。
そのため,裁判になり敗訴すると必然的に一定額の慰謝料を支払わなければならないことから,交渉段階で終了させた方がメリットになる場合があります。
4 おわりに
慰謝料請求事件では裁判をする場合にはメリットがありますが,裁判をしない場合も慰謝料請求をする側と請求をされる側の双方にメリットがあります。そのため,裁判をするかどうかは場合によって使い分ける必要があります。
法律事務所ロイヤーズ・ハイでは不倫慰謝料について経験豊富な弁護士が在籍しています。不倫慰謝料を請求したいと考えている方や不倫慰謝料を請求された方は当事務所の弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。