慰謝料請求事件で裁判するメリット
目次
1 はじめに
不倫相手に対し,慰謝料を請求する場合,一般的には交渉を行うことになります。交渉がうまくいき,示談が成立した場合には,不倫相手から一定の額の金銭を得ることができます。もっとも,示談が成立しない場合には,訴訟を提起し最終的に判決で慰謝料の有無と額が判断されることになります。
裁判をすると交渉と比べて解決に時間が掛かりますが,どのようなメリットがあるのでしょうか?
以下では,慰謝料を請求する側と慰謝料を請求される側の双方から慰謝料請求事件で裁判をするメリットについて解説していきます。
2 慰謝料を請求する側のメリット
慰謝料を請求する側にとって裁判をすることで以下のようなメリットがあります。
(1)相手方に対し様々なプレッシャーをかけることができる
上で述べた通り不倫慰謝料の請求はまず交渉により行われますが,裁判を前提に交渉を行うと請求する側の本気度が伝わり相手方へのプレッシャーとなります。
また,裁判の場合,慰謝料を請求する側は不貞行為を証明するために様々な証拠を提出することになり,本来人に見せられない物も証拠として取り上げられることになり,相手方にとって心理的なプレッシャーとなります。
裁判の場合,平日に裁判所に出廷しなければならず,相手方にとって物理的・経済的な負担となります。訴訟が進むと尋問が行われることがあり,公開の法廷で当事者や裁判所から様々な質問を受けることになるので,大きな負担となります。
したがって,慰謝料を請求する側にとって裁判をする場合,相手方に様々なプレッシャーをかけることができるというメリットがあります。
(2)裁判官により,適正な判断が期待できる
裁判所は中立的な立場で当事者の提出した証拠から,慰謝料の判断を行うので,裁判による方が適正な判断が期待でき,慰謝料を請求する側にとってメリットがあります。
(3)裁判所から相手方への説得が行われる場合がある
裁判手続きが進むと,和解手続きが行われることがあり,裁判所は相手方に対し説得を行うことがあります。そして,和解が成立した場合には,事件が終了し,確実に一定額の慰謝料を得ることができます。したがって,これも裁判をする場合のメリットになります。
(4)相手方が応じない場合でも判決による結果が出る
交渉の段階では,相手方が応じない場合には,慰謝料を請求することはできません。一方,裁判による場合,最終的に判決という形で,慰謝料の有無と額が判断されることになり,慰謝料を請求する側にとってメリットがあります。
(5)支払いを命ずる確定判決により,相手の財産を差し押さえることができる
交渉の段階で相手方が一定額の支払いに応じた場合で,相手方がそれを支払わなくてもペナルティはありません。一方,判決により慰謝料の支払いが確定すれば,強制執行手続きにより相手の預金口座や給料債権を差し押さえることができるので,確実に慰謝料の支払いを受けることができます。そのため,慰謝料を請求する側にとって裁判をするメリットがあります。
3 慰謝料を請求される側のメリット
慰謝料を請求される側にも裁判をすることで以下のようなメリットがあります。
(1)裁判により相場による解決がなされる
不倫慰謝料の相場は数10万円から300円程度であると言われていますが,交渉の段階で慰謝料を請求する側は1000万円といった相場を超えた額を請求する場合があります。また,金額以外の面では,慰謝料を請求する側は,職場をやめるように求めたり,不貞行為をしたことを公表するよう求めるなど,無理な要求をしてくる場合があります。
これらの要求に対し,慰謝料を請求される側が応じた場合はこれに従う必要が生じます。
もっとも,これらの要求に応じない場合には,慰謝料を請求する側は訴訟を提起することになります。裁判になれば上で述べた通り慰謝料を請求される側には大きなプレッシャーとなりますが,裁判所は相場に従った公平な判断を行うので,最終的に判決になったとしても交渉での法外な額は認められる可能性は低く,また,交渉段階での無理な要求に従った判決をすることもありません。
したがって,慰謝料を請求される側にとっては一定の額は支払わなければならないが,それは相場による金額の範囲内の解決ということになり,慰謝料を請求される側にとってメリットがあります。
関連記事:不倫慰謝料の額は異なる?不貞行為した場合の相場や判例を紹介
(2)裁判官から和解案の提案を受けられる
裁判手続きの途中で裁判官から和解案の提案を受けることがあります。この和解案は当事者同士の交渉のような無理な要求ではなく,相場に従ったものなので,交渉よりも裁判による方が慰謝料を請求される側にとってもメリットがあります。
(3)和解により柔軟な解決ができる
裁判手続きの途中で和解期日が設けられ,和解条件について話し合っていくことになります。和解が成立した場合には,そこで事件が終了し,和解が成立しない場合には最終的に判決で慰謝料の有無と額が判断されることになります。判決の場合,一定額の慰謝料を一括で支払わなければなりませんが,和解の場合には分割払いにするといった慰謝料の額だけでなく様々な条件について取り決めることができます。したがって,裁判をしたとしても和解が成立すれば柔軟に事件が解決されることになるので,慰謝料を請求される側にとってメリットがあります。
4 おわりに
慰謝料請求事件では慰謝料を請求する側だけでなく慰謝料を請求する側にとっても様々なメリットがあります。
法律事務所ロイヤーズ・ハイでは不倫慰謝料について経験豊富な弁護士が在籍しています。不倫慰謝料を請求したいと考えている方や不倫慰謝料の請求をされている方は当事務所の弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。