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慰謝料を払ってくれない!財産の差し押さえから公正証書の作成方法まで徹底解説

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「元夫(妻)が離婚の慰謝料を支払ってくれません。相手に財産や収入があることは知っているのですが、どうすれば支払ってもらえるでしょうか。現時点で、財産を差し押さえることはできるのでしょうか。」

話し合いによって慰謝料を取り決めたのに、支払ってくれないケースも少なくありません。

また、裁判で慰謝料の請求が認められたとしても、支払われる保証はありません。

今回は、慰謝料を支払ってくれない場合の対処法について解説します。

1 財産を差し押さえるための条件とは

慰謝料を支払ってくれない場合、最終的に相手の財産を差し押さえる(強制執行する)ことになります。

しかし、相手が支払ってくれない場合であっても、ただちに財産を差し押さえることはできません。

裁判所に強制執行を申し立てるには、資格を示す文書である「債務名義」が必要です

代表例としては、裁判で勝訴したときに得られる「確定判決」です。

(債務名義)

第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

一 確定判決

(略)

引用:民事執行法|e-Gov 法令検索

 

2 慰謝料を払ってくれない場合の対処法

相手が慰謝料を支払ってくれない場合、財産の差押えを視野に入れて対処する必要があります

主な対処法は、以下の通りです。

(1)交渉する

(2)内容証明郵便を送る

(3)支払督促を申し立てる

(4)調停を申し立てる

(5)履行勧告を申し出る・履行命令を申し立てる

(6)裁判を起こす

(7)財産の差し押さえを申し立てる(強制執行)

 

(1)交渉する

まずは、相手と慰謝料の支払いについて交渉してみましょう。

相手が支払ってくれない原因が、「慰謝料が高額すぎる」とか「まとまったお金がない」といった場合、減額する、分割払いにするといった方法も1つの手です。

慰謝料について話し合うことによって、支払ってくれるようになるかもしれません。

話し合いによって慰謝料の金額や支払方法について取り決めた場合には、後でトラブルとならないよう、必ず「合意書」や「示談書」といった形で書面に残しておきましょう。

後述しますが、慰謝料を取り決めた内容につき、「公正証書」を作成しておくと、財産の差し押さえがスムーズになる可能性があります

関連記事:不倫慰謝料の示談書の書き方と弁護士の役割

 

(2)内容証明郵便を送る

内容証明郵便とは、書面の内容や発送日、相手が受け取った日付などを郵便局が証明する郵便サービスです。

弁護士が作成した内容証明郵便を送ることによって、相手に心理的なプレッシャーを与えることができます

相手は事の重大さに気づき、慰謝料の支払いに応じるかもしれません。

なお、インターネットで24時間いつでも内容証明郵便を送ることができる「e内容証明(電子内容証明)」というサービスもあります。

参考:内容証明|郵便局

 

(3)支払督促を申し立てる

支払督促とは、金銭の支払いなどを求める場合に利用できる裁判所の手続きです。

相手の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てます。

単に、裁判所を通じて支払いを求めるだけではありません。

慰謝料の請求について、理由がある場合には支払督促が発令され、相手が異議を申し立てない限り、仮執行宣言が付されます。

この仮執行宣言付の支払督促が債務名義となるため、相手が慰謝料を支払わない場合、強制執行が可能となります

参考:支払督促|裁判所

 

(4)調停を申し立てる

調停とは、家庭裁判所を通じて、調停委員の仲介のもと、相手と話し合う手続きです。

話し合いで合意が成立すれば、裁判所によって調停調書を作成されます。

合意が成立したにもかかわらず、相手が支払わない場合には、この調停調書が「債務名義」となるため、強制執行が可能となります

調停は、月に1回程度、平日に家庭裁判所へ赴いて話し合わなければならないので、無理な場合は、弁護士に依頼するなどしましょう。

関連記事:離婚調停は自分でできる?弁護士に依頼しないメリット・デメリット

 

(5)履行勧告を申し出る・履行命令を申し立てる

ア.履行勧告の申出

調停で慰謝料の支払いを取り決めたにもかかわらず、相手方が慰謝料を支払ってくれない場合は、調停をした家庭裁判所に対して、履行勧告を申し出ることができます。

申し出ることによって、家庭裁判所が慰謝料の支払いを促してくれます。

ただし、強制力はありません。

 

イ.履行命令の申立て

調停をした家庭裁判所に対して、履行命令を申し立てることもできます。

家庭裁判所は、相手方の言い分を聴いたうえで、慰謝料の支払いを命ずる審判をすることができます。

仮に、相手がこの履行命令に従わなかった場合には、10万円以下の過料に処される場合があります。

 

(6)裁判を起こす

調停が成立しなかった場合には、裁判を起こすことになります。

裁判によって慰謝料の請求が認められた場合には、確定判決が得られます。

裁判で慰謝料請求が認められたにもかかわらず、相手が慰謝料を支払わない場合は、この確定判決が債務名義となるため、強制執行が認められることになります

 

(7)財産の差押えを申し立てる(強制執行)

「債務名義」を取得しており、相手が支払ってくれない場合には、強制執行を地方裁判所に申し立てることになります。

財産を差し押さえる場合、差し押さえの対象となる財産を明記する必要があるため、まずは相手方の財産を把握しなければなりません。

財産開示手続や第三者からの情報取得手続によって、相手方の財産を把握することができます。

また、強制執行の前に相手方が財産を処分してしまわないよう、差押えと同時に仮差押えを申し立てることができます。

 

3 公正証書を作成するメリットと作成方法

慰謝料を取り決めた場合、「離婚協議書」や「示談書」といった形で書面とすれば、裁判において証拠となりえます。

ただし、紛失や改ざんのおそれがあるため、金銭の支払いに関する取り決めを行った場合は、「公正証書」にしておくことをお勧めします

参考記事:離婚協議書か公正証書どちらを選ぶべき?書き方完全ガイド

 

(1)公正証書を作成するメリット

公正証書を作成する場合、以下のようなメリットが挙げられます。

ア.偽造や紛失のおそれがない

イ.高い証拠力をもつ

ウ.強制執行がスムーズになる

エ.財産開示手続が利用できるようになる

オ.第三者からの情報取得手続を利用できる

 

ア.偽造や紛失のおそれがない

慰謝料を取り決めた離婚協議書や示談書は、お互いに1部ずつ保管しておく必要がありますが、失くしてしまった場合には、もう1度作成するか、元配偶者にコピーさせてもらう必要がでてきます。

しかし、取り決めた内容が相手に不利なものであった場合、相手が応じないというリスクがあります。

一方で、公証証書としていた場合、失くしてしまっても再発行してもらうことも可能です。

また、公正証書は公証役場で保管されているため、偽造の心配もありません。

 

イ.高い証拠力をもつ

離婚協議書を作成しても、様式や内容次第では効力が認められない場合があります。

効力が認められないのでは、作成した意味がありません。

公正証書としていた場合には、法律の専門家である公証人が作成するため信頼性が高く、高い証拠力をもつことになります。

 

ウ.強制執行がスムーズになる

公正証書において、「強制執行の認諾文言」が記載されている場合、公正証書が債務名義となるため、裁判することなく強制執行が可能となります

強制執行の認諾文言とは、債務の返済ができない場合に、ただちに強制執行に服する旨の記載です。

慰謝料の支払いを取り決めた場合に公正証書を作成する最大のメリットといえるでしょう。

(債務名義)

第二十二条 強制執行は、次に掲げるもの(以下「債務名義」という。)により行う。

(略)

五 金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(以下「執行証書」という。)

(略)

引用:民事執行法|e-Gov 法令検索

 

エ.財産開示手続が利用できるようになる

令和2年4月1日から、公正証書でも財産開示手続を申し立てることができるようになりました(民事執行法197条1項)。

裁判所に申立てを行い、裁判所が指定した期日に相手を呼び出し、財産の情報を述べさせる手続きです。

仮に、相手が虚偽の内容を述べたり、無視したりする場合、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑事罰が科されることなります(民事執行法213条1項5号および6号)。

 

オ.第三者からの情報取得手続を利用できる

財産開示手続が実施された後であれば、銀行本店に照会することで、口座や残高などの預金情報などについての情報提供を命じることができます(民事執行法207条)。

また、給料支払者の情報の提供が得られるよう、市町村や日本年金機構・共済組合に対し、給料支払者の情報提供を命じることもできます(民事執行法206条)。

 

(2)公正証書の作成方法

離婚協議書や示談書を公正証書にする場合、ご自身で公証役場に連絡をとり作成手続をとるか、弁護士などの第三者に依頼することになります。

ご自身で行う場合は、以下のような手続の流れになります。

 

ア.準備する

まずは、必要なものを準備しましょう。

公正証書の種類によって準備する資料は異なってきますが、本人確認書類(印鑑登録証明書と実印、運転免許証と認印など)は必ず必要です。

また、慰謝料を取り決めた「離婚協議書」や「合意書」がある場合には、これらも必要となります。

その他の必要書類については、日本公証人連合会のウェブサイトをご参照になるか、公証役場に直接お問い合わせください。

参考: 必要書類|日本公証人連合会

 

イ.公証役場へ申し込む

準備できたら、公証役場へ連絡し、公正証書の作成を申し込みます。

公証役場によって手順が異なるため、まずは事前に手続きする公証役場に確認しましょう。

参考:公証役場一覧|日本公証人連合会

 

ウ.公証人と面談をする

公正証書の作成を申し込んだら、日程調整を行い、公証役場に必要な書類を持参のうえ、公証人と面談をすることになります。

面談後、公証人は公証証書の作成準備にとりかかります。

 

エ.公正証書を取りに行く

公証人と日程調整を行い、作成する日にちを決めます。

当日は、慰謝料を取り決めた2人がそろって公証役場へ行き、それぞれが署名押印して公正証書を完成させます。

公正証書が完成したら、公正証書原本の写しである正本や謄本が交付されます。

 

4 慰謝料の請求を弁護士に依頼するメリット

何らかの理由で慰謝料を支払ってくれない場合には、弁護士に依頼することを検討しましょう。

慰謝料を支払ってくれない場合に取るべき対処法は、ケースごとに異なります。

相手の態度次第では、交渉から裁判、強制執行にいたるまで多大な時間や労力が必要となる可能性があります。

相手の財産が分からない場合には、調査もしなければなりません。

弁護士であれば、依頼者に代わって交渉や示談書などの書面作成、調停・裁判手続き、強制執行の申立てまで行うことが可能です

慰謝料を請求する権利は、放置しておくと時効によって消滅してしまうかもしれません

もし、ご不安な様でしたら、一度早めに弁護士に相談することをお勧めします。

関連記事:過去の浮気で慰謝料請求したい!時効と立証の問題を徹底解説

 

5 まとめ

今回は、慰謝料を支払ってくれない場合の対処法について解説しました。

慰謝料を支払ってくれない場合には、様々な対処法があります。

最終的に財産を差し押さえるには、「債務名義」が必要です。

示談書などを作成した場合には、強制執行認諾文言が付された公正証書にしておきましょう。

財産の差し押さえを視野にいれ、現時点で適切な対処法を取るようにして下さい。

もし、どうすれば良いか分からず、ご不安な様でしたら、一度弁護士に相談することをお勧めします。

このコラムの監修者

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