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不倫慰謝料が振り込まれない!踏み倒された場合の対処法と予防策

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私は、30代の主婦です。この度、夫が不倫をしていたことが分かりました。夫は浮気を認め、相手の女性のことも話してくれました。相手の女性のことが許せなかったので、相手の女性に連絡を取ってみると、最初は驚かれましたが、最終的には慰謝料として150万円を支払うということで話がまとまりました。ただ、こういうのは紙に書いて残しておかないといけないと思いましたので、ネットに載っているフォーマット等を参考に、慰謝料として150万円を一括で支払う内容で合意書を作りました。

ところが、支払期限を過ぎても、女性は慰謝料を支払いませんでした。しかも、いつの間にか引っ越しをしていて、電話番号も変わっていました。せっかく150万円で解決できたと思ったのに、このままでは逃げたもの勝ちみたいでとても腹立たしいです。何とかならないのでしょうか

お金を支払うみたいに述べておきながら、後で支払わないといのはひどいですよね。ただ、このようなケースで、合意をしても、さらにいえば、裁判で決まった後でも、お金を支払わない人が残念ながら一定数存在します。このような場合に、お金を何とか取り立てる方法がないか。また、事前の予防策として何があるのか、本コラムでお話しします。

1 不倫慰謝料が期日までに振り込まれない場合、どうすればいいのか

⑴ 強制執行

相手は慰謝料(お金)を支払う義務があるのに、支払っておりません。このような場合、よくテレビドラマとかで「差押え」がどうとか出てきます。確かに差押えという手続きは存在します。これは、「強制執行」と呼ばれる手続のうちの一つです。これは、現実の事件でも、お金の回収の場面でよく使われるものです。差押えを行うと、実際にどういうことになるのでしょうか。

 

⑵ いろいろなものに対する差押え

ア 不動産(土地・建物)の差し押さえ

請求相手が、(抵当権とかのついていないきれいな)不動産を持っている場合、こちらを差し押さえることができます。差押えを行った場合、その不動産を強制的に売りに出して、売って手に入ったお金をそのまま回収できます。さらに、不動産は文字通り動かないため、相手はこれを隠すことはできません。不動産の差し押さえは、お金の回収において効果的な方法のひとつといえます

…とはいうものの、ローンなどが残っていない(抵当権がついていない)不動産を持っている人は決して多くはないと思います。したがって、不動産の差し押さえは、そもそも有効である条件を満たす場合が少ないように思います。

 

イ 給与等の差し押さえ(正確には給与債権の差押さえ)

請求相手が働いている場合、給与の差し押さえというものが可能です。差押えを行った場合、職場の給料が、直接請求者に支払われます。ただし、差押えができる金額は、給与の25%までと決まっております(50%まで差し押さえられる場合もありますが、不倫の慰謝料請求の場合は25%です)。さらに、相手方退職間近であれば、退職金を差押えること検討してもいいでしょうか。

ただ、給与の差し押さえは、請求相手の職場が判明していることが前提となります。こちらの調査は別途必要になります。さらに、給与の差し押さえは、相手が働き続けることが前提ですので、相手が職を辞した後は差押えができなくなります。相手が正社員の場合はまだいいのですが、パート・アルバイトの場合、職場を変えることは比較的容易ですので、リスクが大きいといえます。

 

ウ 預金の差し押さえ(正確には預金債券の差押さえ)

相手が預金口座を持っている場合、これを差し押さえることも可能です。差押えを行うと、いわば口座にロックがかけられ、残高が直接請求者に支払われます。預金の差し押さえは、不動産のように改めてお金にかえる必要はありませんし、差押えの範囲の制限もありません。そのため、この差押えは、いわば、決まれば非常に強力なものです。

ただし、あくまで差し押さえができるのは、差押えの効果が生じたその瞬間の残高です。すなわち、事前に預金を全て引き出されてしまうと、預金の差し押さえは無意味となります。

 

エ その他諸々に対する差押え

差押えの対象(ターゲット)は、理屈上何でも大丈夫ですが、筆者個人の意見としましては、上記3つ以外の差し押さえはほとんど効果がないように思います。差押えは、相手のモノであることが明らか対象しか差押えができません(無関係な人の物を持っていったらとんでもないことです)。そのため、例えば動産(車とかダイヤモンド)では、目の前の物が誰のものか特定できないため、差押えができないことになります。

 

2 強制執行(差押え)を行うための事前準備等

⑴ 財産開示手続

差押えをするためには、相手の財産が分からなければなりません。そこで、財産開示手続という制度を利用することが考えられます。これは、相手に対し、裁判所からの呼びだしをしてもらい、相手の職場や、預金等の財産を申告させる手続です。こちらの呼び出しに対し、正当な理由がないのに欠席したり、財産について嘘をついた場合には、刑事罰が定められております(つまり、警察沙汰になる可能性がある)。そのため、相手としてはプレッシャーであり、出席して、正直に話す可能性があります。

 

⑵ 債務名義

差し押さえにせよ財産開示にせよ、これらの手続を行うためには「債務名義」というものが必要です。裁判手続で決定した場合(判決・裁判上での和解等)や、公正証書という文書で定めた場合に、債務名義に該当します。通常の合意書だと、弁護士が作成したものでも、債務名義とはなりません。強制的に取得できる債務名義は、判決しかありませんので、相手がお金の支払を拒みに拒んだ場合、まずは裁判を起こし、勝利をすることが必要となります。

 

⑶ 財産開示・差押えは本当に効果がある?

財産開示にせよ、差押えにせよ、相手が財産を持っている、働いていることにより意味を持ちます。相手が本当に財産を持っておらず、満足に働いてもいない場合、どちらの手続も意味がありません。どちらの手続きも、時間と費用がかかりますので、費用倒れになることは避けたいところです。そのため、本当に相手がお金をもっている(いそう)か、お金と時間をかける価値があるのか。よく考えなければなりません。

関連記事:慰謝料を払ってくれない!財産の差し押さえから公正証書の作成方法まで徹底解説

 

3 不倫慰謝料が振り込まれないことを防ぐ予防策

強制執行も、財産開示手続も、万能ではないことは説明してきました通りです。では、何とか慰謝料が振り込まれないことを事前に予防できないものでしょうか。

一つの方法としては、相手と合意書を作成する際、お金の受け取りを同時に行うというやり方があります。つまり、合意書に署名捺印する際に、慰謝料を相手に持参してもらい、その場で現金を受け取るということです。これができれば、いわゆるとりっぱぐれる可能性はゼロになります(途中で落とさないようにだけ注意しておきましょう)。

ただし、こちらの方法は、そもそも相手が応じてくれることが前提です。しかし、合意したお金を払わないような相手が、合意書の締結と同時に払ってくれることに応じてくれるかについては、疑問もあります。

そして、相手が支払いにそもそも応じない場合等には、やはり裁判等で粛々と進めることになります。

 

4 まとめ

これまで説明させていただきました通り、法律上、お金を請求する権利があることと、実際に手元にお金が入ってくることは別問題です。お金の請求をする際には、相手は本当にお金を支払ってくれそうか、仮に支払われない場合、差押え等が有効かどうか等、事前の調査・検討をしなければ、勝ったけれどお金はもらえないということになりかねませんので、注意が必要です。

このコラムの監修者

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