離婚できる束縛の度合いとは?認められる離婚事由と慰謝料を請求する方法
結婚してから,門限を決められた,異性の連絡先を全て消して欲しいと言われた,そんな束縛を経験された方もいらっしゃるのではないでしょうか。
最初は,夫婦間でちょっとしたルールを作ったつもりでも,内容がエスカレートし過ぎると束縛されていると感じるようになり,やがて結婚生活が息苦しくなることもあります。
「門限を過ぎると暴力を振るわれる」,「1時間毎に連絡をしないと暴言を吐かれる」など,厳しすぎる束縛によって離婚を考える方も少なくありません。
今回は,そんな束縛を原因として,離婚や慰謝料請求ができるのかという疑問につき,解説します。
目次
1 配偶者が束縛するよくある理由5つ
束縛する理由は様々ですが,よくある理由としては,以下の5つが挙げられます。
(1)夫・妻のことが好きすぎる (2)夫・妻がモテる (3)自分に自信がない (4)過去のトラウマがある (5)夫・妻を信用していない |
(1)夫・妻のことが好きすぎる
夫婦が互いに好意を抱いていると,良好な夫婦関係を築くことができるでしょう。
良好な夫婦関係においては,愛情表現も欠かせません。
しかし,その愛情表現がエスカレートし過ぎると,「他の人に取られたくない」,「もっと好きなって欲しい」といった気持ちから,相手を束縛するという形になってしまうこともあります。
(2)夫・妻がモテる
配偶者が異性からモテたり,現実にはそうでなくても,うちの夫・妻はモテると思い込んでいる場合があります。
このような場合,「他の人に奪われてしまうのではないか」という不安から,配偶者を束縛するケースがあります。
(3)自分に自信がない
自分に自信がもてないと,夫・妻は,「自分のことを好きではないのでは」,「自分に対する好意が冷めてしまうのでは」などとネガティブなことを考えるようになります。
そのため,自分から離れていかないように,配偶者を束縛するようになることがあります。
(4)過去のトラウマがある
過去に付き合っていた異性から浮気された経験がある場合,「また浮気をされるのではないか」という不安が生じます。
そのような過去のトラウマから,現在の配偶者を束縛するケースがあります。
(5)夫・妻を信用していない
夫・妻を信用していない場合,隠し事があるのではないかと配偶者を疑い,束縛することがあります。
信用しない理由は様々で,そもそも疑り深く人を信用しない場合や,普段の言動から相手を信用できなくなった場合などがあります。
2 どれくらい束縛されると離婚できる?認められる離婚事由とは
結論から言うと,束縛が暴力やモラハラをともなう場合には,離婚できる可能性があります。
モラハラとは,モラルハラスメントの略で,直訳すると,「倫理・道徳に反したいやがらせ」を意味し,言葉や態度で相手を精神的に追い詰める行為全般を指します。
例えば,日常的に,話しかけても無視をする,暴言を浴びせる,理由なく不機嫌な態度をとるなどといった行為はモラハラに該当します。
一方で,単に束縛があるというだけでは,法律で定められた離婚事由として認められず,離婚できない可能性があります。
(1)話し合いであれば離婚理由にできる
夫婦の話し合いによる場合は,どのような理由であっても,合意に至れば離婚することができます。
そのため,束縛を離婚理由として,離婚することも可能です。
(2)裁判では離婚理由にできる場合がある
束縛されている場合には,相手が離婚に応じず,話し合いで離婚することは難しいかもしれません。
そうすると,最終的に裁判で離婚ということになります。
裁判では,法律で定められた離婚理由が認められなければ,離婚できません。
法律で定められた離婚理由を「法定離婚事由」といい,次の5つになります。
・配偶者に不貞行為があったとき ・配偶者から悪意で遺棄されたとき ・配偶者の生死が3年以上明らかでないとき ・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき ・婚姻を継続し難い重大な事由があるとき |
法定離婚事由を見てみると,「束縛」は明記されていません。
そのため,単に束縛があるというだけでは,ただちに離婚が認められません。
しかし,束縛を受けている方の中には,「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当たるのではないかと考える方もいらっしゃると思います。
「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは,婚姻関係が破綻しており、回復の見込みがない場合をいいます。
束縛の手段が,暴力やモラハラによるといった場合には,婚姻関係が破綻し,回復の見込みがないと認められる可能性があるため,離婚できる場合があります。
例えば,帰りが遅い,連絡が遅いといった場合に,暴言を吐いて怒鳴ってきたり,暴力を振るってきたりするケースです。
裁判では,必ず証拠が必要となってきますので,離婚を検討の際には,証拠を集めておきましょう。
3 束縛が原因で離婚したら慰謝料は請求できる?
束縛の内容によっては,慰謝料請求できる場合があります。
(1)慰謝料とは
不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償金のことです。
(不法行為による損害賠償) 第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 (財産以外の損害の賠償) 第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。 |
(2)束縛が原因で慰謝料請求できる場合がある
束縛の内容が不法行為にあたる場合には,慰謝料が認められる可能性があります。
暴力やモラハラは,離婚事由に当たるのみならず,不法行為にも該当します。
これらによって,精神的苦痛を受けたと認められる場合には,慰謝料請求が認められるでしょう。
ただし,慰謝料請求が認められるには,暴力を受けていた,日常的に暴言を浴びせられていたといった事実を明らかにする証拠が必要となります。
慰謝料請求を検討する場合には,必ず証拠を集めるようにしてください。
4 束縛する配偶者に慰謝料を請求する方法
束縛が暴力やモラハラをともなう場合には,慰謝料請求が認められる可能性があります。
一般的に,慰謝料請求するには,まず,話し合うということが考えられます。
しかし,暴力やモラハラがともなう場合,相手が怖いという理由から,とりあえず離婚し,慰謝料請求については,後で考えようと判断される方も少なくありません。
離婚後に請求しようとしても,配偶者が開き直って話し合いに応じなかったり,配偶者の行方が分からなくなったりし,慰謝料請求が困難となって,泣き寝入りという可能性があります。
そのため,離婚時に慰謝料を請求することが重要です。
相手が怖くて話し合いができないと言う場合には,以下のような方法で慰謝料を請求しましょう。
(1)内容証明郵便を送る (2)離婚調停で請求する (3)離婚裁判で請求する (4)弁護士に交渉などを依頼する |
(1)内容証明郵便で送る
内容証明郵便とは、送った書面の内容や発送日、相手が受け取った日付などを郵便局が証明する郵便サービスです。
ご自身で作成し,送ることもできますが,弁護士が作成した内容証明郵便を送ることによって、配偶者に心理的なプレッシャーを与えることができます。
配偶者は事の重大さに気づき、慰謝料の支払いに応じる可能性があります。
(2)離婚調停で請求する
家庭裁判所に離婚調停を申し立てた場合,調停の場で,配偶者と顔を合わせず,慰謝料について話し合うことができます。
調停では,調停委員が夫婦それぞれの話を聴き取り,必要な場合には資料の提出を求め,解決案を提示してくれます。
調停委員が間に入ることによって,慰謝料の支払いに応じるかもしれません。
ただし,そもそも配偶者が離婚に応じない,慰謝料を含めた離婚条件に納得しないといった理由から,合意に至らない場合には,調停不成立となります。
(3)離婚裁判で請求する
調停不成立となった場合には,離婚裁判を起こし,裁判において慰謝料を請求することになります。
離婚裁判において,慰謝料を請求した場合には,当事者である夫婦からの主張と提出された証拠に基づいて,裁判所が一方的に慰謝料の判断を下すことになります。
裁判は,専門的な知識を必要とするため,弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
(4)弁護士に交渉などを依頼する
話し合いの段階で,慰謝料請求を弁護士に依頼することもできます。
相手が話し合いに応じない場合であっても,弁護士であれば,対応が変わるかもしれません。
弁護士は,法律のプロであると同時に,交渉のプロでもあります。
法律知識や相場に基づいて,相手との交渉を有利に進めることが可能となるでしょう。
調停や裁判の段階においても,弁護士に依頼することはできますが,できるだけ早い段階で弁護士に依頼すれば,時間や費用が抑えられる可能性があります。
5 まとめ
今回は,束縛が原因で離婚や慰謝料請求できるのかという疑問につき,解説しました。
話し合いによって合意に至るのであれば,どのような束縛であっても,離婚や慰謝料を請求することは可能です。
しかし,暴力やモラハラなどによって,相手の束縛が厳しい場合,夫婦間で話し合うことは難しいでしょう。
そのような場合には,離婚調停を申し立てる,裁判を起こすなどして,離婚や慰謝料を求めましょう。
もし,どうすればいいか分からない場合には,できるだけ早く,一度弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイには,男女問題に関する豊富な経験と知識を有する弁護士が多く所属しています。
初回法律相談は無料となっておりますので,離婚や慰謝料請求でお悩みの方は,一度,当事務所にご相談下さい。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。