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2度目の慰謝料請求は高額に!?

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ポイント説明

不貞行為は繰り返されがちです。一度不貞が発覚し,慰謝料で全てが丸く収まったと思っても,実は不貞関係が継続していたり,別れた後に再度不貞関係に発展するといったケースは多く見受けられます。不貞相手や配偶者に,再度の慰謝料請求はできるのでしょうか,また,そのときの慰謝料額は,高額になるのでしょうか。
ここでは,不貞行為に対して,再度の慰謝料請求が可能なのか,具体的に解説していきます。

今回の記事の流れ

1 複数回の慰謝料請求の可否

複数回の慰謝料請求の可否

まず,慰謝料の支払によって解決したはずの同じ不貞行為に対して,再度慰謝料請求することは可能なのでしょうか。
この場合は,原則として慰謝料請求は認められないと言えるでしょう。一度慰謝料の支払を終えたことで,その不貞行為について被った損害は,既に回復されていると考えられるからです。実際,慰謝料を支払う際に作成する合意書の中に,「本件については今後一切,何らの請求もしない」旨の清算条項が記載されていることがほとんどです。清算条項があれば,再度の請求は認められません。
もっとも,合意書に清算条項の記載がない場合,再度慰謝料を請求されるリスクはあります。ただし,請求することはできても,その請求が認められるか否かは別問題です。再度の請求をされた場合には,「前回の慰謝料の支払で賠償は十分である」旨の反論をしていくことになるでしょう。

次に,慰謝料支払い等の合意成立後,不貞関係が継続していることが発覚した・再度不貞関係に発展したという場合はどうでしょうか。
この場合,合意の後に不貞行為があったことになりますから,既に成立している合意に新たな不貞行為に関する慰謝料は当然には含まれていません。新たな不貞行為については,別個の不法行為が成立するのです。そのため,新たに発覚した不貞行為に対して,別途慰謝料を請求することは可能です。
また,一度目の不貞について合意書を締結した際,「違約金条項」を定めることがあります。再度不貞行為を行った場合には,違約金を支払う旨の条項です。再度不貞行為があった場合には,この違約金条項に基づいて金銭の支払いを請求することも考えられます。
ただし,金額が常識に照らしてあまりに高額すぎる等,何らかの理由で違約金条項が無効だと考えられる場合もありますから,違約金条項を定めたい場合,また,違約金条項に基づいて金銭の支払いを請求された場合には,法律の専門家である弁護士にご相談されることをお勧めします。

更に,Aさんとの不貞に関して配偶者に慰謝料を請求したのに,その後,別の人(Bさん)との不貞が発覚したという場合も考えられます。
この場合は,不貞の相手が別人格ですから,成立する不法行為も別個のものです。そのため,Bさんとの不貞について配偶者に慰謝料を請求することに問題はありません。これは,Bさんとの不貞行為が,Aさんに関する慰謝料の合意の前に行われたか後に行われたかによって結論が変わることはありません。

2 2度目の請求は高額?

(1)不貞相手が同じ場合

不貞相手が同じ場合

一度目も二度目も不貞相手が同じで,その不貞相手もしくは配偶者に慰謝料を請求する,という場合を考えます。
この場合,一度目の不貞行為の際,合意書等を作成して「謝罪する」「二度と接触しない」という約束をしているのが通常です。合意書がなくとも,夫婦間でこのような約束をしたからこそ,夫婦でやり直そう,という結論に至るわけです。そうであるにもかかわらず,約束を破って再度不貞行為に及んだのですから,不貞をされた配偶者の精神的苦痛は一度目に比べて大きいものです。そのため,二度目の慰謝料請求は高額になりやすいといえるでしょう。
裁判例を見てみましょう。

①東京地判平成18年11月28日

一度目の不貞の際100万円の慰謝料の支払い義務を認め,二度目の不貞の際は150万円の支払義務を認めた,という裁判例です。

②東京地判平成22年12月22日

これは,一度目の不貞の際は裁判上で,300万円を支払うとの内容で和解が成立し,二度目の不貞の際は判決で250万円の支払義務を認めた,という裁判例です。この裁判例だけを見ると,二度目の不貞で慰謝料額が下がっているように見えます。
しかし,一度目の不貞の際は裁判上とはいえ決着は「和解」でついているのです。一度目の訴訟の際,判決まで進んだ場合には,夫婦が離婚しなかったということも考えると,認められる慰謝料額はせいぜい100万円程だったのではないでしょうか。この点を踏まえると,二度目の慰謝料請求で250万円の判決がでたということは,実質的には一度目より高額になった,といえるのではないでしょうか。

(2)不貞相手が異なる場合

次に,一度目と二度目の不貞相手が異なり,それぞれについて慰謝料を請求している,という場合を考えます。
この場合,配偶者に対する慰謝料請求であれば,一度目の不貞の際に「二度と不倫しません」といった約束が,夫婦間であるはずです。再度の不貞は,この約束を破っていることに違いありませんから,相手が違っていても,配偶者への慰謝料請求は高額になる可能性があります。
ただし,不貞相手に慰謝料を請求する場合は,二度目の不貞相手は一度目の不貞とは全く無関係ですから,「配偶者の二度目の不貞だから」という理由で,慰謝料が高額になることはないでしょう。

3 裁判上の問題点

二度目の不貞行為について,相手方若しくは配偶者に慰謝料請求する場合,仮に合意がまとまらず裁判をするのであれば,注意しなければならないことがあります。それは「婚姻関係の破綻」です。
不貞行為は不法行為です。そのため,裁判上不貞行為による慰謝料請求が認められるためには,不貞によって権利を侵害した,つまり,不貞によって婚姻関係が破綻した,と認められなければなりません。
ここで問題になるのが,過去,既に不貞行為が行われたという点です。不貞行為が行われた時点で,婚姻関係が破綻していた,つまり今回の不貞行為と婚姻関係の破綻との間に因果関係はない,と認定される可能性があるのです。
裁判例でも,「(一度目の慰謝料請求の裁判時点において)早晩離婚に至ることは必至の状況」にあり,「婚姻関係は完全に破綻しており,回復の見込みはなかった」のであるから,今回は婚姻関係が破綻したことによる精神的損害は認められない,と判示しているものがあります(広島高判平成19年4月17日)。
そのため,一度目の不貞の結果,夫婦の関係がどのように変化したかは大事な考慮要素なのです。

このコラムの監修者

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