離婚調停中に浮気が発覚!慰謝料は請求できる?
「夫と性格の不一致やお金の使い道等が原因で、現在、離婚調停を行っています。
その離婚調停中に、夫が他の女性と交際していたことが判明しました。離婚調停中とはいえ、まだ夫婦なのですから、夫の行為は不貞行為に該当すると思い、離婚調停で慰謝料を請求したいと思っています。
しかし、離婚調停中の不貞行為は、既に婚姻関係が破綻しているから慰謝料を請求できないという話を聞きました。私としては、離婚調停中だとしても、浮気をするなんて許されることではないと思うので、どうしても慰謝料を請求したいのですが、実際は請求できないのでしょうか?
このように、離婚調停中に、配偶者が不貞行為をしていた場合の対応を教えてください。」
性格の不一致やお金の使い道等が原因で、離婚する話が進み、離婚協議では解決しなかったため、離婚調停にて離婚条件を調整していたところ、離婚調停中に配偶者が他の異性と浮気をしていたことが発覚したというケースです。
離婚に不貞行為が関係ないと思っていたところ、実は、配偶者の不貞行為が離婚のきっかけになっていたことを知ると通常の不貞行為が行われた事案よりも受けるショックが大きく、より怒りを覚えてしまうケースも少なくありません。
本コラムでは、離婚調停中に配偶者が浮気をしていた場合に慰謝料が請求できるのか否かについて解説します。
目次
1 離婚調停中に浮気が発覚した場合、慰謝料を請求できるのか?
離婚調停中に配偶者の浮気が発覚した場合、誰に慰謝料を請求することができるのでしょうか?
その答えは、配偶者とその不貞相手になります。
しかし、いかなる場合でも慰謝料を請求できるわけではありません。慰謝料を請求するための条件を満たす必要があります。
具体的には、配偶者と不貞相手の交際が夫婦の婚姻関係を破壊したと言えることが必要になります。
本来、夫婦には貞操義務といって、配偶者以外の人間と性的関係を持ってはいけないという義務を負っており、これに違反すると貞操義務違反として不法行為に該当し、慰謝料を請求されることになります。
しかし、例外的な場合として、既に夫婦の婚姻関係が破綻しており、貞操義務で守られるべき「平穏な夫婦の生活」という保護法益が既に存在しないと認められる場合、貞操義務違反とならず、慰謝料の請求が認められなくなります。
つまり、離婚調停中に配偶者の浮気が発覚した場合、慰謝料が請求できるのかの判断において、最も重要な点は、配偶者が異性と交際を開始した時点で婚姻関係が破綻しているのかという点になります。
離婚調停中に発覚した浮気は、その交際が始まった時期に夫婦の婚姻関係が破綻しているかで、慰謝料が請求できるのかが決まりますので、具体的な場合に分けて詳しく見ていきましょう。
2 離婚調停中の浮気、配偶者に慰謝料を請求できるのか?
まず、離婚調停を行っている配偶者について見ていきましょう。
(1)離婚調停の中で離婚することに合意している場合
双方が離婚することに合意している場合、双方が夫婦としての関係性を望んでいないことになり、守るべき「平穏な夫婦の生活」ということが認められず、既に婚姻関係が破綻していると判断されます。
そのため、離婚の合意が成立した後から配偶者が交際を始めた場合には、その交際は不貞行為とは認められません。
この場合は、配偶者にも慰謝料が請求できないことになります。
(2)離婚について合意していないが、長期間別居している場合
通常、夫婦が理由なく別居することは考えられないため、夫婦間で離婚の合意がないものの、長期間別居をしている場合には、婚姻関係が破綻していることになります。
そのため、長期間の別居をしており、その別居期間中に、配偶者が異性と交際を始めた場合、その交際は不貞行為とは認められない場合があります。
この場合、別居の期間が長すぎて、もはや夫婦としての体をなしていないと言える程度の期間の別居が必要になりますの。1つの目安としては5年以上の別居期間が必要となります。
ただし、正当な理由があって別居している場合には、この限りではありません。
例えば、転勤によって配偶者が単身赴任をしないといけない場合や、治療のために配偶者が長期入院を行っている場合等は、別居が長期間行われているというだけでは婚姻関係が破綻しているとは判断されません。
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(3)離婚の合意がなく配偶者の一方が離婚を主張している場合
婚姻関係が破綻していると認められるには、同じ戸籍に名前があるだけで赤の他人と一緒の状態といえる程度には婚姻関係が破壊されている必要があり、一般的には、夫婦の双方が婚姻生活を継続する意思がなく、手を尽くしてもその関係を修復することが難しい状態になる必要があります。
そのため、夫婦の一方が婚姻関係の破綻を主張し、もう一方が婚姻関係の修復を望んでいる場合、まだ夫婦としてやり直せる可能性があると判断されることが多いです。
離婚調停中に夫婦の一方が婚姻関係の継続を望んでいる場合には、婚姻関係は破綻していないと判断されるため、離婚調停中に配偶者が異性と交際している場合、不貞行為による慰謝料を請求できる可能性が高いと思われます。
以上のように、どのタイミングで交際を開始したのかによって慰謝料を請求できるのかが変わってきます。そのため、配偶者の浮気に気づいたらどのタイミングで交際が開始したのかを調査するようにしましょう。
3 離婚調停中の浮気、不貞相手に慰謝料を請求できるのか?
次に、不貞相手に慰謝料を請求できるのか検討します。
不貞相手に慰謝料を請求するためには、不貞相手において「配偶者が既婚者であること」について、知っていることまたは知らないことについて過失があることが必要になります。
離婚調停中の場合、既に別居していることも多く、不貞相手からは配偶者が既婚者であることが確認できなかったり、離婚調停中ということを聞いて婚姻関係が破綻していると認識していたりすることが想定されます。
(1)既婚者であることを知らない場合
離婚調停中の場合には,夫婦が別居していることが多いため,直ちに結婚しているかどうかはわかりません。男女交際において、相手が未婚か否かを確認する法律上の義務は存在しないため、配偶者が既婚者であることを伺わせる兆候が存在しない場合、不貞相手において、「配偶者が既婚者であること」を知ることはできず、また、それを知ることができないことについて過失はないことになります。
この場合、原則として、不貞相手に対して慰謝料を請求することはできません。
しかし、配偶者が結婚指輪を付けたままにしている、会話の中で子供の話が出てくるといった既婚者であることの兆候が存在する場合、不貞相手には配偶者が既婚者であることを確認する義務が生じるため、十分にこの確認を行っていない場合には、不貞相手に慰謝料を請求する余地があります。
(2)離婚調停中である場合
次に、不貞相手が離婚調停中である場合には、配偶者が既婚者であることを知っているので,不法行為の故意が認められます。
しかし,離婚調停中であるため、婚姻関係が破綻していたと認められる場合には,守るべき「平穏な夫婦の生活」という保護法益が存在しないと考えられて,慰謝料請求が認められない可能性があります。
他方で,離婚調停の中で,離婚を拒否しているような事情がある場合には,離婚調停中といえど,直ちに婚姻関係が破綻しているとまでは評価されず貞操義務で守られるべき「平穏な夫婦の生活」という保護法益がいまだ存在していると考えられて,慰謝料請求が認められる場合もあります。
過去の裁判例では、離婚裁判において第1審判決で離婚を認める判決が出たものの、控訴審で離婚を認めない判決が出たことによって、婚姻関係の破綻を否定し、婚姻関係が破綻したと認識していた不貞相手への慰謝料請求を認めた裁判例もあります。
以上のように、不貞相手の認識や確認作業によって慰謝料を請求できるか否かは大きく変わってきます。
そのため,不貞相手へ慰謝料を請求する場合には,離婚調停の進捗や内容も踏まえて慎重に検討する必要があります。
4 離婚調停中の浮気を証明する方法
離婚調停中の浮気であっても、不貞行為として慰謝料の請求をする場合には、証拠が必要です。
配偶者が浮気をしていることが発覚しても、離婚調停では浮気していない等と言って言い逃れようとする可能性があります。言い逃れされないためにもどのような証拠が必要なのか、証拠の収集方法については知っておく必要があります。
配偶者の不貞行為についての証拠収集やどのような証拠が必要なのかについては、以下のコラムを参考にしてください。
参考記事:【完全版】旦那の浮気の証拠がつかめない?不倫の証拠14選を紹介
ただし、離婚調停を行っている場合、配偶者の一方が家を出て行ってしまっていたりして、配偶者のスマートフォン内のデータ等を不貞行為の証拠として集めるのは容易ではない場合もあります。
その場合には、配偶者が契約している携帯電話の通話記録を取り寄せたり、配偶者のクレジットカードの使用履歴を確認したりする等の方法で集められる証拠をできる限り集めることが重要になります。
証拠としては強くありませんが、配偶者の浮気が発覚した状況をメモに残しておき、離婚調停で提出するということも検討できる方法になります。
5 離婚調停中の浮気に対する慰謝料の相場と請求方法
離婚調停中に発覚した浮気に対する慰謝料も、通常の不貞慰謝料の相場が参考になります。
通常の不貞行為が行われた場合の慰謝料相場は、以下のコラムを参考にしてください。
参考記事:離婚慰謝料の相場は200万円?不倫・浮気・DVなど離婚の原因別に見る支払い条件と交渉方法
参考記事:不倫の離婚慰謝料の増額と減額〜判例ごとの相場も紹介〜
ただし、離婚調停中に不貞行為が発覚した場合、通常の不貞行為とは異なり、そのまま離婚することがほぼ決定的です。そのため、通常の不貞行為と比べて、婚姻関係を破壊した度合いが大きいと判断され、比較的高額の慰謝料が認められやすい傾向にあります。
6 まとめ
離婚調停中に配偶者が浮気をしていることが発覚した場合には、まず、どの時点から交際が開始していたのかを調査しましょう。
離婚することを合意していない段階で交際が始まったのであれば、慰謝料の請求が認められる可能性は比較的高いと言えますので、証拠を集めたうえで離婚調停であわせて慰謝料を請求しましょう。
離婚調停中に配偶者の浮気が発覚し、慰謝料が請求できるのか悩んでいらっしゃったら、まずは離婚問題に積極的に取り組んでいる弁護士に相談してみてください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。