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結婚前に契約書を作るべき?「婚前契約」するメリット・デメリット

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結婚前に契約書を作るべき?「婚前契約」するメリット・デメリット

「交際して3年になる彼女と結婚しようと思っています。ただ,結婚に向けて色々調整していると,色々なことが不安になってきて,ネットで調べると仲の良かった夫婦が仲が悪くなって泥沼離婚をするようなことがあると知りました。

もちろん,離婚するつもりはないですが,もし離婚するようなことになってもなるべく穏便に済ませたいと思い,婚前契約のことを知りました。

今からでも婚前契約について作成することはできるのでしょうか?また,婚前契約を作ろうと彼女に言うと結婚前に離婚のことを考えていると言われたりして揉めたりしないでしょうか?」

欧米では婚前契約は一般的でしたが,日本ではあまり有名ではなく,最近になってようやくメディアでも取り上げられるようになってきたことで,「婚前契約」という単語を聞くようになりました。

「婚前契約」というと,結婚という幸せなタイミングで離婚のことを考えていて縁起が悪いだとか,2人の将来を疑われて気分が悪いという印象があると言われることが多いです。

しかし,あらかじめ,何かが起こった際の決まり事として婚前契約をすることは,実際に何かが起こった時に改めて頭を悩ませたりすることが少なくなります。

また,離婚の際のことだけでなく,家庭のルール等もあらかじめ決めることが出来,様々な点でメリットがあるので,一般的な印象とは違っていることも多いです。

最近では,夫婦のあり方も多様化してきていますので,夫婦のすれ違いを防いだり,結婚前に気づくことができなかった価値観の違いに気づき,よりよい夫婦生活を送れるようになります。

本コラムでは,婚前契約について,その意味からメリット・デメリット等を詳細に解説します。

目次

1 「婚前契約」とは?

「婚前契約」とは?

婚前契約とは、その名のとおり、これから結婚する恋人同士が結婚及び結婚生活についての取り決めを行う契約です。

内容に制限はありませんが,一般的に,家事・育児や仕事といった日常生活に関する事項や不倫したときの慰謝料,離婚するときの財産分与、養育費等,結婚生活から離婚に関することについて取り決めを行うことが多いです。

海外では,プレナップと呼ばれ,婚前契約書として,特に夫婦の共有財産の範囲,財産分与の金額を事前に決めるために作成されることが多いそうです。

法律上,結婚することによって貞操義務や扶養義務といったそれまでの恋人関係とは全く違った権利関係が当事者に生まれてしまいます。そのため,結婚後のことを見据えて,事前に取り決めを行い,結婚後のすれ違いをあらかじめ予防しておくことができるのです。

よく言われるものとして,結婚をするときに離婚のことを考えていて気持ちが悪いであるとか,最初から離婚ことを考えているのは不誠実といった意見があります。

しかし,婚前契約には離婚のことだけでなく,婚姻生活を送るうえでのルールを決めたりすることも多く,むしろ,婚姻生活をより幸せに送ることを目的として締結するものですので,決して縁起が悪いものではありません。

 

2 婚前契約で決められること,決められないこと

婚前契約で決められること、決められないこと

(1)決められること

①家事,育児,親族付き合い等の結婚生活のルール

結婚した際のルールを取り決めをしておくことで,暗黙のルールとなって不満の種になりやすい事項についてルール化することができます。

明確なルールにしておくことで,双方やらなければならないことを意識することができ,トラブルを避ける効果もあります。

 

②夫婦の財産関係

夫婦の財産についても取り決めをすることができます。

婚前契約の中で,いわゆる,夫婦財産契約を締結することにより、婚姻前から双方が所有している財産についての取り決め、婚姻中に夫婦が取得した財産についての取り決め、生活費の負担についての取り決めなどを行うことができます。

 

③お互いの借金

相手に多額の借金があると結婚後の生活が不安になることになりますし,お金のトラブルを起こしがちな相手と結婚する場合には,借金についての取り決めをしておくことも考えられます。

 

④不倫に関するルール

不倫をしないことという約束的な内容だけでなく,不倫が発覚した場合に具体的な金額を定めた慰謝料を支払うという取り決めをしておくことができます。

 

⑤離婚する際の取り決め

離婚の際に揉めてしまうことを避けるため,財産分与,慰謝料,親権,養育についてあらかじめ定めておくことが考えられます。

 

⑥婚前契約の変更について

婚前契約も契約ですので,締結した以上は一方の意思では変更できません。

もっとも,例えば,天変地異が起こった場合等に,慰謝料の金額等を変更できるといった内容を記載しておくことも考えられます。

 

(2)決められないこと・決めたとしても実現されるとは限らないこと

①公序良俗に反すること

公序良俗に違反する内容を契約書に定める場合,民法90条に反し無効になってしまいます。

「○○した場合に殺す」等の内容は記載されていても無意味になってしまいます。

 

②親権について

子どもの親権について記載することはできますが,無意味になる場合があります。

例えば,「離婚した場合,親権は母親に帰属させる」と記載していても,母親の虐待等が認められる場合,親権を母親に認めることになれば,子どもの生活に悪影響しかないため,認められないことになるでしょう。

このように,子どもの親権については,その当時,子どもの福祉のために意味があるのかから決められるため,記載したとしても無意味になる可能性があります。

関連記事:離婚時の親権はどうやって決まるの?具体的な決め方と流れ

③離婚について

他にも,「夫婦の一方が離婚を申し出たら必ず離婚しなければならない」という内容を設けたとしても,離婚意思は,離婚するタイミングで存在する必要がありますので,強制することができません。

関連記事:夫・妻から離婚調停を申し立てられた!離婚を回避する方法

④相続について

相続について盛り込んでも意味がありません。

例えば,妻の両親が死亡したときに,夫に相続すると記載していても,法律上相続権がありませんので,いくら婚前契約書で記載しても相続はできません。

 

3 婚前契約するメリット・デメリット

婚前契約するメリット・デメリット

(1)メリット

①事前に価値観を共有できる

幸せな結婚生活を阻害する要因としてよく上がるのが,価値観のずれです。

仕事や出産,育児について価値観が共有できないことをきっかけに離婚してしまう夫婦は少なくありません。結婚を優先して,価値観の違いを擦り合わせず,結果的に幸せな結婚生活を送れていない夫婦もよく見られます。

離婚に関することだけでなく,家事や育児,仕事のスケジュール等の揉めやすい点についてあらかじめ取り決めることで婚姻後にトラブルが起こることを防ぐことができます。

 

②財産保全

また,婚前契約書では,離婚の際に揉めやすい財産についてもあらかじめ決めることができます。

仮に,離婚してしまう場合,婚姻してから生まれた財産は,財産分与として金等に分けることになってしまいます。

しかし,夫婦の中にはあらかじめ財産を所有している等,財産分与で均等に分けてしまうとより支払う金額が大きくなってしまう可能性があり,婚姻前の財産を婚前契約で明確にして自らの財産を守ることが可能になります。

 

③不貞の防止

他にも,婚前契約書には浮気や不倫をした場合のことを記載することがあります。

「不倫しないこと」と記載するだけでは,法律的に意味はありませんが,こう記載するだけで簡単には不倫させない心理的な抑止力が期待できます。

また、不倫された場合にもあらかじめ慰謝料の金額を決めておくことによって,万が一,不倫された場合でも,比較的穏便に解決できるようになりますし,具体的な慰謝料の金額を定めておくことで抑止効果も見込めます。

 

④婚前の気持ちを確認できる

結婚前に2人の気持ちを明記しておくことで,ふとしたときに婚前契約書を見返せば,結婚当時の気持ちを思い出すことができます。

もし,2人で喧嘩をしてしまったときにも仲直りのきっかけになったりすることもありますので,意外と大事な条項になるかもしれません。

 

(2)デメリット

①婚姻前に作成しなければならない

婚前契約は,必ず,婚姻前に締結する必要があります。

婚姻後に契約を締結しても,民法754条に「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と規定されているため,一方的に取り消しができてしまいます。

婚姻に際しては周囲の環境も大きく変わり,忙しくなってしまうため,入籍の日時をあらかじめ決めておき,事前に話合いをできるような余裕を持ったうえで作成しなければなりません。

 

②心理的に負担になる可能性がある

婚前契約を締結するにあたり,結婚するときに離婚のことを考えるのは縁起が悪い,結婚する気がない,結婚生活を嫌がっているといったイメージをパートナーの方に持たれてしまい,その結果,パートナー間で揉めてしまい,精神的な負担になることもあります。

婚前契約を締結する目的は,円満な結婚生活を送るためのですので,丁寧に婚前契約を締結する理由,締結した方がよいメリットを説明して,パートナーの方に納得していただくことが必要です。

パートナーの方が拒否しているのに,無理やり婚前契約を締結しようとしたり,相手が誤解したまま話が進んでしまうと場合によっては,結婚が上手くいくがわけないと思われ,結婚自体もなくなる可能性もあります。

婚前契約を締結するにあたってはしっかりとお話合いをしていただき,パートナーの方の不安を解消できるように話合いをしましょう。

 

③内容の変更が簡単ではない

婚前契約は単なる約束ではなく,契約になります。

そのため,契約を締結した後に気が変わったので,内容を変更したいと思ったとしても,一方的に変更することができません。

変更するためには相手の合意が必要であり,内容によっては合意してもらえないこともありますので,内容は慎重に決定する必要があります。

4 弁護士に婚前契約書の作成を依頼できる?

弁護士に婚前契約書の作成を依頼できる?

婚前契約書も契約書の一種になりますので当然,弁護士に作成を依頼することができます。

中には,自分たちのことなので,自分たちだけで作成したいという方もいらっしゃると思います。しかし,申し上げた通り,盛り込んでも婚姻契約書としてはあまり意味がない場合がある等,作ってはみたものの,結果的にあまり意味がなかったということも少なくありません。

そのため,自分たちの意思を反映した婚前契約書を作成するために,弁護士に婚前契約書の作成を依頼したり,アドバイスをもらったりするということは選択肢として考えてもよいかと思います。

 

5 まとめ

婚前契約書を作成しておくことで,夫婦生活で生じる可能性のあるトラブルをあらかじめ防止し,幸せな夫婦生活を送れる可能性が上がると思います。しかし,夫婦間で合意すれば何でも法的拘束力が認められるわけではありません。あくまでも契約書ですので,法的拘束力をもたせるためには法律に則り作成する必要があります。

そのため,婚前契約書を作成する場合には,弁護士などの専門家に相談したうえで自ら契約書を作成する,または,契約書の作成を依頼するなどして,必要に応じたサポートを受けることがよりよい夫婦生活の一歩になると思います。特に,婚前契約については,まだまだ社会に浸透しているとは言えない状況ですので,周囲に相談をすることも難しいと思います。そのような場合には,決して自分1人で抱え込むことなく,お気軽に弁護士にご相談することも解決策の1つだと思ってください。

結婚前に婚前契約のことで悩んでいらっしゃったら,婚前契約書の作成に取り組んでいる弁護士に相談してみてください。

このコラムの監修者

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