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子どもへの虐待を理由に離婚や慰謝料の請求は可能?

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2023年4月1日,子育てや少子化,児童虐待,いじめなど,子どもを取り巻く社会問題に対して本質的な対策を進めて解決するため,内閣府によって「こども家庭庁」が発足されました。

こども家庭庁が発表した統計によりますと,令和4年度,全国の児童相談所が相談を受けて対応した件数(速報値)は,21万9,170件で,過去最多となっています。

1990年度の集計開始以来,32年連続で最多を更新しており,増加の背景には,「虐待防止に対する意識が高まっていること」が挙げられます。

一方で,この件数は,氷山の一角であるという専門家の指摘もあります。

子どもへの虐待は,決して許される行為ではありません。

配偶者の子どもに対する虐待を止めることができず,配偶者と離婚したいと考えてらっしゃる方もいるでしょう。

本コラムでは,子どもへの虐待を理由に離婚や慰謝料を請求できるのか,そんな疑問について解説します。

参照:令和4年度 児童相談所における児童虐待相談対応件数(速報値)|こども家庭庁

 

 

1 子どもへの虐待は刑事罰を受ける可能性も

子どもに対する虐待は,犯罪に該当し,刑事罰を受ける可能性があります。

配偶者が虐待をしている場合,あなたが見て見ぬふりをしていると,あなた自身も刑事罰を受ける可能性があります。

配偶者が虐待をしている場合には,離婚を考える前に,速やかに警察などに相談しましょう

まずは,どのような行為が虐待にあたるのか知ることが重要です。

子どもへの虐待は,以下の4種類に分類されます(児童虐待防止法2条参照)。

(1)身体的虐待

(2)性的虐待

(3)ネグレクト(育児放棄)

(4)心理的虐待

 

(1)身体的虐待

子どもに暴行を加えることです。

例えば,殴る,蹴る,叩く,激しく揺さぶる,やけどを負わせる,おぼれさせる,首を絞める,縄でしばる,などといった行為が挙げられます。

子どもが怪我するだけでなく,命にかかわる危険もあります。

 

(2)性的虐待

子どもに性的な行為をしたり,性的な行為をさせたりすることです。

例えば,子どもへの性交,子どもに性器や性交を見せる,子どもの性器を触る,子どもに性器を触らせる,裸の写真や動画を撮影し販売する,などといった行為が挙げられます。

性的虐待は,子どもの心に一生消えることのない深い傷を負わせます。

統計によれば,4種類の虐待のうち,相談件数全体に占める割合が1.1%と最も低い割合なのですが,これは外部から発見しにくい虐待行為であることを表しています。

そのため,性的虐待から子どもを守るためには,もう一方の配偶者による気付きと対応が重要となります。

 

(3)ネグレクト(育児放棄)

保護者として,子どもの監護を著しく怠ることです。

例えば,食事を与えない,風呂に入れさせない,部屋に閉じ込める,病気になっても病院へ連れていかない,などといった行為が挙げられます。

幼い子どもは助けを求めることができないため,ネグレクト(育児放棄)によって,子どもの命を奪うこともあります。

 

(4)心理的虐待

子どもに精神的虐待を加え,心に傷を負わせることです。

例えば,脅す,無視する,兄弟間で差別的に扱う,子どもの目の前で配偶者や兄弟を殴る,などといった行為が挙げられます。

統計では,相談件数全体に占める割合が59.1%と最も多く,身近に起こりうる危険性が最も高いことを表しています。

虐待であると自覚なしに行われることもあるため,注意が必要です。

 

2 子どもへの虐待を理由に離婚できるか

結論から言うと,子どもへの虐待を理由に離婚できる可能性があります。

 

(1)離婚が認められるには

協議や調停など,夫婦間の話し合いによって合意に至るのであれば,どのような理由であれ離婚することは可能です。

しかし,虐待している配偶者が離婚を拒否する場合には,話し合いで合意に至る可能性は低いでしょう。

話し合いで合意に至らない場合には,離婚裁判を起こさなければなりません。

裁判では,法定離婚事由(=法律で定められた離婚理由)が必要です。

(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。

二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。

三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。

四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。

五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

(略)

引用:民法|e-Gov 法令検索

関連記事:法律的に認められる離婚理由とは

 

(2)虐待は法定離婚事由に該当する可能性がある 

子どもに対する虐待は,家庭や夫婦関係を破壊するものです。

そのため,子どもへの虐待は,「その他婚姻を継続し難い事由」(民法770条1項5号)に該当し,離婚が認められる可能性があります。

ただし,配偶者が虐待を認めず裁判となれば,必ず証拠が必要となります。

できる限り早い段階で,証拠を集めておきましょう。

 

3 子どもへの虐待を理由に離婚する場合、慰謝料の請求はできる?

配偶者の子どもに対する虐待が原因で離婚する場合,離婚の原因を作り出した配偶者に対して,慰謝料の請求も認められる可能性があります。

慰謝料とは,受けた精神的苦痛に対する賠償金のことです。

配偶者に離婚の原因がある場合,離婚することによって他方の配偶者は精神的苦痛を受けます。

そのため,子どもへの虐待があったこと,そのことによって夫婦関係が壊されてしまったことが認められれば,慰謝料請求が認められる可能性があります。

関連記事:離婚慰謝料の相場は200万円?不倫・浮気・DVなど離婚の原因別に見る支払い条件と交渉方法

 

4 子どもへの虐待で離婚を考える前に

配偶者によって子どもが虐待されている場合には,離婚を考える前に,優先しなければいけないことがあります。

(1)身の安全を確保する

(2)警察や児童相談所に相談する

(3)証拠を集める

 

(1)身の安全を確保する

子どもを守ることが最優先です。

まずは,子どもとご自身の,身の安全を確保しましょう。

精神的に追い詰められている場合には,配偶者からは逃げられないと思い込んでしまうこともあります。

しかし,現在では,虐待を受けている人を守るため,多くの民間シェルターが運営されており,一時的に避難することも可能です。

民間シェルターでは,被害者の一時保護だけでなく,相談への対応,被害者の自立へ向けたサポートなど,被害者に対する様々な援助を行っています。

子どもとご自身の身を守るため,シェルターの活用をご検討ください。

参考:民間シェルター|男女共同参画局

 

(2)警察や児童相談所に相談する

どうすれば良いのか分からない場合や緊急を要する場合には,警察や児童相談所に連絡し。相談しましょう。

近年では,各自治体が自主的にDVの相談窓口を設けていますので,そちらを利用することも可能です。

できる限り早く相談することが,事態を悪化させないための第一歩となります。

 

(3)証拠を集める

離婚や慰謝料を請求するにあたって,配偶者が虐待を認めず,裁判となった場合には,必ず証拠が必要なります。

虐待を明らかにする証拠を複数集めておきましょう。

例えば,虐待していることが分かる動画や写真,音声記録,医師の診断書などが挙げられます。

日記も証拠として認められる可能性がありますので,日時や状況,行為の態様など,詳細に記しておきましょう。

もし,証拠に関して分からないことがあれば,できる限り早く弁護士に相談することをお勧めします。

 

5 まとめ

今回は,子どもへの虐待を理由に離婚や慰謝料の請求ができるのかという疑問について解説しました。

配偶者が子どもに対して虐待している場合,離婚や慰謝料の請求が認められることがあります。

裁判上,離婚や慰謝料の請求が認められるには,証拠が必要となるため,必ず証拠を集めておきましょう。

ただし,現在も,配偶者が子どもやあなたを虐待している場合には,身の安全を確保することを優先してください。

どうすれば良いのか分からない場合や緊急を要する場合には,警察や児童相談所,自治体の相談窓口に相談しましょう。

子どもへの虐待が理由で,離婚や慰謝料の請求をご検討の際には,一度弁護士に相談することをお勧めします。

このコラムの監修者

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