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裁判の合意は可能ですか?

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ポイント説明

訴訟手続きは,裁判所に,判決という形での最終判断を出してもらうことを目指す手続きですから,時間と手間がかかります。不貞相手が不貞を全く認めない,満足いく額の慰謝料を支払ってもらえない。納得がいかないので訴訟を提起したものの,想像していた以上に面倒なことが多い。そう感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
逆に,訴訟を提起してしまうと,自分の慰謝料請求が認められないかもしれないと考えて,訴訟に踏み切れない,という方もいらっしゃるかもしれません。
結論から言うと,訴訟を提起しても,判決まで進まず,訴訟上の和解という形で事件を終了させることは可能です。実際,全国の地方裁判所に提起された事件のうち,約半数は和解という形で終了しています。

今回の記事の流れ

1 訴訟提起後の和解

(1) 裁判官の心証開示による訴訟上の和解

裁判官の心証開示による訴訟上の和解

裁判所は,和解の余地があると判断すれば,「和解をしてはどうか」という和解勧告をします。訴訟手続きで和解期日がもうけられる場合には,裁判所に対して,原告・被告がそれぞれ和解に対する意見を述べます。それぞれの主張をすり合わせて,互いに納得する内容で合意ができるという場合には,まとまった内容で「和解調書」というものが作られます。
裁判所が和解勧告をする時期は様々です。裁判官によっては,判決の見通しが立った時点で,「判決を出すとすればこうなるから,これくらいで和解してはどうか」という提案をしてくれる場合もあります。最終判断をする裁判官から心証を開示してもらえるのですから,当事者も合意内容に納得しやすいのではないでしょうか。

(2) 裁判外での和解

裁判官の心証開示による訴訟上の和解

裁判所からの和解勧告がなくても,裁判所を通さず,当事者間で話し合いを続けることは可能です。裁判外で話し合いを続け,合意がまとまったのであれば,合意書を作成し,訴えを取り下げるという方法が考えられます。
ただし,合意書を締結したものの,約束通りの示談金が支払われなかったという場合には,結局訴訟を提起しなければならない,ということにもなりかねません。訴えの取り下げは,示談金が支払われた後に行うべきです。

また,裁判外で成立した和解内容を,裁判所に和解調書という形でまとめてもらう,という方法もあります。最終的には訴訟上の和解という形で事件は終了することになります。
和解調書は,判決と同様の執行力がありますから,和解内容が実現されなければ,調書に基づき強制執行を申し立てることができます。そのため,裁判外で合意がまとまりそうであっても,和解調書という形を残しておく方が,請求側にとっては理想でしょう。

片方の当事者が裁判期日に出席することが難しい場合でも,「受諾和解」という方法をとれば訴訟上の和解は可能です。これは,一方当事者が,裁判所から示される和解条項案を受諾する旨の書面を事前に提出しておき,他方当事者が期日に出廷して和解条項案を受諾する,という手続きです。

2 訴訟上の和解のメリット・デメリット

(1) 手続き期間の短縮

訴訟手続きを続けると,時間がかかるうえ,尋問期日などでご本人にかかる負担も大きくなります。和解が成立すればその時点で訴訟は終了しますから,それ以上のご負担はありません。
また,判決が出された場合には,敗訴側が上訴するかもしれません。その場合,上級裁判所で裁判手続きが続きます。和解の場合,上訴はあり得ませんから和解後に裁判手続きが続くことはありません。
訴訟上の和解では,裁判官が判決の場合の見通しを伝えてくれることもあります。判決の見通しを知った上での和解であれば,当事者同士も納得しやすいのではないでしょうか。

(2) 和解調書の作成

訴訟上の和解が成立すると,和解調書が作成されます。和解調書は,判決が出された場合と同じで執行力をもちます。そのため,和解内容通りの慰謝料が支払われなければ,和解調書に基づいて強制執行を申し立てることができるのです。

(3) 譲歩は必要

譲歩は必要

和解をする以上,お互いにある程度の譲歩はしなければなりません。そのため,必ずしも満足のいく慰謝料額を支払ってもらえるとも限らないのです。この点は,訴訟外で和解を進める場合と同じといえます。
判決で額を示されれば諦めはつくが,和解という,あくまでも任意の形で額を譲るのには抵抗が…と思われるかもしれません。この点は,訴訟上の和解におけるデメリットといえるでしょう。

以上のようなメリット・デメリットを考えた上で,判決まで進むか和解に応じるかを検討するのがよいでしょう。また,そもそも訴訟を提起するかどうかについても,十分な検討が必要です。
不貞相手に慰謝料を請求したが任意の交渉は不可能で,訴訟を起こすしかないと思っている,という場合には,弁護士にご相談することをお勧めします。

このコラムの監修者

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