モラハラ・DVで慰謝料請求する方法・相場
モラハラやDVの被害は後を絶ちません。暴力をやめてほしくても,配偶者に言うと暴力が酷くなる一方だから…と我慢してしまう方も少なくありません。我慢の限界で離婚を切り出したくても,言い出す勇気がない,離婚できたとしても慰謝料の請求まではこわくてできない…とお悩みの方はいらっしゃいませんか?
ここでは,モラハラやDVで慰謝料を請求する方法や,高額請求のポイント等を具体的にお話ししていきます。
目次
1 モラハラ・DVとは?
モラハラとは,「モラルハラスメント」の略です。精神的な暴力をいいます。
言葉の暴力が一番分かりやすいでしょう。その他にも,意味もなく不機嫌になったり,無視する,にらみつける等の行為もモラハラに該当するかもしれません。
DVは,ドメスティック・バイオレンスの略です。殴る・蹴る等の物理的な暴力の他に,精神的な暴力であっても,DVに該当します。つまり,モラハラに該当する行為は,DVにも該当し得るのです。
2 慰謝料を請求するために
モラハラ・DVの被害に遭った場合,これらの行為で精神的に損害を被っているわけですから,慰謝料の請求は可能です。可能なのですが,配偶者が怖いから,という理由で先に離婚をしてしまい,慰謝料の請求は後から考えよう…と判断される方も少なくありません。しかし,いざ離婚後に請求しようとしても,相手が携帯番号を変えていて連絡先が分からない,住所も分からない,等の理由で,結局請求ができず泣き寝入り…という可能性もあります。
離婚するとなると,養育費や財産分与の話もする必要があります。財産分与には,「慰謝料的財産分与」と呼ばれる考え方もあります。慰謝料発生の原因が他方配偶者にある場合,その慰謝料分も含めて財産分与で解決する,という方法です。つまり,モラハラ・DVで慰謝料請求を考えているのであれば,離婚と同時に解決する方法が,最も簡便で負担も少ないと言えるでしょう。
では,具体的にはどのように慰謝料を請求していくのでしょうか?
(1)別居
配偶者は精神的・物理的に暴力を振るってくる相手ですから,同居したまま慰謝料請求をするのは危険でしょう。そのため,離婚までは考えていないという場合で,まずは別居をする必要があります。
別居して新たに確保した居住先を配偶者に知られるのがこわい,すぐに居住先を確保する時間的・金銭的余裕がないという場合は,一時的ではありますが,シェルターを利用することも可能です。
(2)直接の請求
具体的に配偶者に慰謝料の請求をするには,内容証明郵便を送付する,話し合いを行う,という方法が考えられます。ご自身で対応するのは困難でしょうから,この時点から弁護士にご依頼することをお勧めします。
(3)調停での請求
配偶者が請求に応じてくれないという場合には,離婚調停の場であわせて慰謝料を請求することになります。
また,既に別居しているという場合には,婚姻費用の分担請求もあわせて行いましょう。話し合いで婚費の額がまとまらなくても,最終的には裁判所が審判で額を定めてくれますから,婚費の請求は必ず行うべきです。
余談ですが,仮に配偶者が離婚に応じてくれない場合には,離婚裁判に進むことになります。裁判上の離婚を認めてもらうためには,民法に定められた離婚要件を満たす必要がありますが,モラハラ・DVは,民法770条1項5号の「その他,婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するでしょう。
3 慰謝料額の目安
ここまで,モラハラ・DVの慰謝料請求の方法をお話してきましたが,具体的な慰謝料額はどの程度になるのでしょうか。
過去の裁判例から,モラハラやDVでの慰謝料は数十万円から300万円ほどです。具体的な事情によって,その額は様々です。そこで,慰謝料額が高額になり得る要素をいくつか紹介します。
(1)モラハラ・DVの頻度・程度・期間
モラハラ・DVの態様が悪質であればあるほど,慰謝料額は高額になります。毎日のように暴力を振るっていたり,何年にもわたって暴力行為が続いていたという場合には,慰謝料額は高額になるでしょう。
(2)モラハラ・DVによる怪我・障害の程度
DVによる怪我が重傷であればあるほど,慰謝料額は高額になる傾向があります。
また,精神的に追い詰められうつ病になったという場合にも,慰謝料は高額になる可能性があります。
(3)被害者側の落ち度
モラハラ・DVの原因が被害者側に全くない,あったとしてもその落ち度はごくわずかなものであるという場合は,慰謝料が高額になる可能性があります。
(4)生活状況
婚姻期間が長い,未成年の子供がいるという事情も,慰謝料額が高額になり得る要素になります。また,未成年の子供の人数は,多いほど慰謝料額も高額になる傾向にあるようです。
4 証拠の収集が不可欠
ここまでお話ししてきたように,慰謝料額を定める要素は様々です。しかし,「モラハラ・DVを本当に受けていたか」「どのような態様のものだったか」が客観的に分からなければ,相手が任意に慰謝料を支払ってくれない限り,慰謝料を請求することはできません。そのため,慰謝料の請求には証拠の収集が不可欠です。
具体的には,
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等が考えられます。
DVであれば怪我等が残りますから写真に収めることは容易でしょう。一方,モラハラであればそのような証拠は集めることができませんから,音声を録音したり,暴言を吐かれたLINEの記録等を残しておくことが大切です。
また,怪我の写真を残していても,「その怪我の原因は何か」まで特定はできませんから,やはり暴力を受けている最中の音声や動画はあるに越したことは無いでしょう。
5 おわりに
モラハラ・DVの加害者への慰謝料請求は,その性質上,ご自身で行うことは困難でしょう。また,相手がモラハラの事実を認めない,慰謝料の支払いに応じないといったことは容易に予想されますから,調停や裁判に至るケースも少なくありません。そのため,「請求をしよう」と考えた早い段階から,弁護士にご相談されるのが良いでしょう。
先ほどお話ししたように,慰謝料請求には証拠が不可欠ですから,今把握している証拠で十分かどうかについても,法的な判断が必要になります。今お手元にある証拠を持って,すぐ弁護士にご相談ください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。