失敗しない慰謝料請求方法
配偶者の不貞相手に慰謝料請求をしたけど,全く額の合意ができない,連絡がつかなくなった等,望んだ結果を得られなかったというお話はよく耳にします。
望んだ結果を得るために,事前に準備すべきことは何なのでしょうか。また,交渉に際して注意すべき点は何なのでしょうか。ここでは,慰謝料請求で失敗しないために必要なことを,具体的にお話ししていきます。
1 証拠の収集は必須
配偶者の不貞相手を突き止めて「慰謝料を払って!」と連絡を取っても,不貞の事実を否定され,とぼけられる可能性はあります。「二人で会ったことはあるけど,食事だけ」「相談に乗ってもらっただけ」という言い訳をされることは多いでしょう。
そんな時でも強気に請求するためには,証拠を固めておくことが大切です。また,相手と慰謝料額の折り合いがつかず,いざ訴訟を提起するとなった場合でも,裁判所は証拠がなければそもそも不貞の事実すら認めてくれませんから,証拠の収集は必須なのです。
証拠を持たずに不貞相手に請求をしてしまうと,その時点で存在していた証拠を破棄され,手遅れになってしまう可能性もあります。そのため,相手に請求をする前に,できる限り証拠は収集しておくべきでしょう。
証拠を請求していれば,相手への請求時に有利に交渉を進めることができます。具体的な証拠を示さなくても,「●月●日に,●●で会っていただろう」と具体的な事実を突きつければ,相手は「不貞の事実がバレている。言い逃れはできないな」と考えるでしょう。また,「証拠はあるから訴訟をすることもできる」と言えば,請求側の本気度を伝えることができるかもしれません。
2 不貞相手の情報収集
最近,連絡手段はLINEでという方は多いようです。配偶者の不貞相手の情報として知っているのはLINEのIDだけ,という方も多いのではないでしょうか。慰謝料の請求もLINEのメッセージを通じて行っていたけど,ある時突然ブロックされて連絡が取れなくなった,というお話はよく耳にします。
知っている情報がLINEのIDだけとなると,ブロックされてしまえば,もはや連絡を取る手段はありません。慰謝料請求は空振りにおわるかもしれません。
そうならないためにも,相手の住所や職場,携帯の電話番号等はあらかじめ調べておく必要があります。
弁護士に依頼すれば,相手の情報を調査することも可能です。ただし,少なくとも,携帯の電話番号は必要でしょう。電話番号を把握していれば,弁護士会を通じた照会によって,携帯電話会社からの開示で不貞相手の住所を知ることができる可能性があります。
住所が分かれば弁護士の名前で内容証明郵便を送付することができます。弁護士からの書面が届いたとなれば,不貞相手も誠実に交渉に応じてくれるかもしれません。
3 きちんと合意書を締結する
仮に不貞相手が慰謝料請求に応じ,支払いの合意を取り付けたとしても,その後,約束通りの支払いをしてくれないという可能性もあります。「早く払って」と連絡しても,「そんな約束していない」ととぼけられるかもしれません。
約束通りの支払いを得るためにも,きちんと合意書や和解書を作成し,合意内容を明らかにしておくべきでしょう。単に合意書を締結しただけでは,強制的に支払わせる効果まではありませんが,合意書があれば,その後裁判になったとしても,その合意書通りの支払義務を裁判所に認めてもらえる可能性が高くなります。
一方,公正証書を作成し,その中に「強制執行受諾文言」を定めておくと,合意通りの支払いがされなければ,公正証書に基づいて強制執行の手続きを取ることが可能になります。特に,分割で慰謝料を支払っていくという合意を締結した場合,その後の支払いを確実なものにするためにも,合意内容を公正証書の形で残しておくできでしょう。
4 慰謝料額の妥協点を見つける
慰謝料請求をして,一番多い失敗パターンは,慰謝料額の納得ができず結局合意がまとまらない,というケースかもしれません。
慰謝料額には相場というものが存在しますが,具体的な額を決めるにあたっては,様々な事情が考慮されます。ご自身の場合,どのような事情を根拠に慰謝料額が増額されるのか等も考慮しながら,最終的な妥協点をもって請求に挑むことが不可欠です。
また,不貞相手に全くお金がないという場合,いくら高額な慰謝料を請求しても支払ってもらうことは現実的に不可能です。仮に訴訟になって判決を得ても,相手に財産が無ければ強制執行をしても空振りに終わる可能性があります。訴訟の費用や時間を無駄にして,結局何も得るものがなかった,という結果に終わるかもしれないのです。
5 おわりに
ここまでお話ししてきたように,慰謝料請求の失敗パターンは大きく分けて4つです。
相手にとぼけられる,また,相手に逃げられて連絡が取れなくなるという失敗パターンを避けるためにも,相手方の情報収集・証拠の収集を忘れてはなりません。
また,きちんと支払い義務を履行してもらうためにも,ある程度譲歩して合意の着地点を見つけ,合意書・公正証書を作成して,問題の根本的な解決を図ることが大切なのです。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。