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分割した慰謝料が途中から支払われない!

慰謝料の支払い方法は様々です。一括では難しいと言われ,分割での支払いを了承する場合も少なくありません。しかし,「絶対に最後まで払ってもらえる」という保証はあるでしょうか。毎月支払う約束をして最初の数か月は順調に支払われていたのに,いつの間にか入金がなくなった,というケースは数え切れないほどあります。
本来支払われるべき慰謝料の一部を回収できなかったという場合,残りの慰謝料を支払ってもらうために,どのような手段が考えられるでしょうか。

1.合意書を作成している場合

(1)合意書の効力

不貞相手に慰謝料を請求するのであれば,合意書,和解書等,何らかの形で書面を残すのが通常です。支払い方法が分割であっても,支払額・分割方法・振込口座等を記載した合意書を作成することになります。
合意書には,分割金の支払いを怠った場合の対応も記載されているはずです。

たとえば,「2回支払いを怠れば残額を一括で支払う」等の内容が考えられます。このような記載があって,相手が実際に2回支払いを怠ったという場合,本当に一括で支払ってもらえるのでしょうか。安心して放置していれば,いつまで経っても支払われることはないでしょう。
「じゃぁ強制的に支払わせればいい」と思ってはいませんか?合意書があるから安心と,油断してはいけません。合意書は,あくまで相手方と私的に作成した書面です。合意書自体に強制力はありません。そのため,合意書があるからといって,合意書を根拠に強制的に支払わせることはできないのです。

(2)どうやって支払わせる?

一番単純なのは,相手方に「払って」と督促することでしょう。ただし,一度支払いを怠った相手が素直に支払いに応じてくれるとは思えないですよね。それどころか,連絡がつかなくなる可能性も十分に考えられます。

では,どうすればよいか?考えられる手段は,訴訟を提起することです。相手方に支払い義務があることを,裁判所に認めてもらう必要があります。
合意書があることはかなりの強みになります。通常,事実と異なる内容の書面に署名・押印することはないと考えられます。なので,相手方の署名・押印のある合意書が存在すれば,裁判所もその合意書通りの事実があった,と認定しやすいのです。そのため,相手方の支払義務は認められやすいと考えられます。
裁判所が相手方の支払義務を認める判決を出せば,その判決に基づいて強制執行をすることができます。この時点で初めて,強制的に権利の実現を図ることができるのです。
強制執行については後程詳しく説明します。

なお,あまり考えられないかもしれませんが,分割払いの合意について何の書面も残っていないという場合はどうでしょうか。この場合でも,訴訟を提起して裁判所に支払い義務を認めてもらわなければなりません。そのため,不貞があったという事実をはじめ,全てを一から立証しなければならないのです。合意書がある場合に比べ,かなり困難になることは覚悟しなければならないでしょう。

2.公正証書を作成している場合

合意書だけでは意味がない。「公正証書」があれば支払いを確保できる。だから公正証書を作りたい。
そのような相談も多くあるように,公正証書の存在は広く社会に浸透しているのかもしれません。確かに,公正証書は単なる合意書とは異なり,強制力のある文書です。ただし,公正証書があるから相手に無理やり支払わせることができる,というわけではありません。裁判所を通じた「強制執行」という手続きによって,相手の財産から権利を実現させなければなりません。

では,公正証書による「強制執行」をするにはどのような手続きを取らなければならないのでしょうか。

①送達証明書
まず,公正証書を作成した公証人から「相手方に公正証書の謄本を送達した」という送達証明書を受け取ります。相手方が出頭して公正証書を作成した場合,その場で相手方にも送達しているはずですから,公証人に言えば,送達証明書は出してくれるはずです。

②執行文
強制執行をするなら,公正証書に「執行文」を付与してもらわなければなりません。執行文は「この証書によって強制執行できますよ」という内容の文章で,公正証書を作成した公証人によって付与されるものです。

③裁判所への申立て
裁判所に申し立てを行う際に,相手方のどの財産から支払いを確保するのか決めなければなりません。不動産・動産・債権(預貯金や給料)等,どこから満足を得るのか決めるのは申立てをする債権者自身です。
相手がどんな財産を持っているか分からないけど,とりあえず申立てだけをするなんてことは認められていません。申立てをすれば裁判所が相手方の財産を調査してくれるわけではないのです。ですから,強制執行をするのであれば,相手方の財産をある程度把握しておかなければなりません。
お分かりのように,相手方の財産関係が全く分からない,勤め先も分からない(勤務先が分かれば,給料を一部ですが差し押さえることが可能です)という場合,強制執行を実現することはできません。同様に,相手に財産が全くないという場合も,強制執行は意味を持たないでしょう。

3.裁判上で和解が成立した場合

裁判上の和解でも,分割払いの合意が成立することがあります。裁判所が関与して成立した合意であっても,その合意通りの支払いを怠る方も中にはいらっしゃいます。そうなれば,やはり強制執行をするしかないでしょう。
裁判上で和解が成立すれば,「和解調書」が作成されます。この和解調書も,執行力を持つ文書です。和解調書の場合も,強制執行をするには送達証明書・執行文が必要です。公正証書と異なり,送達証明書・執行文を付与するのは,和解調書を作成した裁判所になります。

ちなみに,判決によって慰謝料の支払が命じられている場合(一括での支払いが前提です)も,その判決によって強制執行は可能です。手続きの流れは,和解調書が存在する場合と同じです。

4.おわりに

「一括は無理」と言われてしまった以上,分割に応じることも1つの解決策です。しかし,分割にするのであれば,途中で支払いが滞るリスクもあることを肝に銘じておかなければなりません。
そのため,分割払いで合意を締結するのであれば,公正証書を作成する等,その後の支払いを確保するための担保は取っておきたいものです。

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