単身赴任中に妻から離婚を切り出された!認められる条件と対処法
地方に単身赴任をしているけれど、妻から離婚を切り出された。
そんなことはありませんか。
当事務所には、離婚の相談が多いですが、単身赴任の方が相談に来られることもあります。
同居している間はうまくいっていると思っていたけれども、単身赴任になれば、突然、妻から離婚を切り出されることがあります。
突然、離婚を切り出されれば、どうしたら良いか戸惑われると思います。辛いそのお気持ちもわかります。このコラムでは、単身赴任中に、妻から離婚を切り出された際の対処法を紹介いたします。単身赴任で離婚を切り出された場合の対応方法と対処法がわかります。
目次
1 単身赴任中に妻から離婚したいと切り出される原因
単身赴任中に妻から離婚したいと言われる理由は、様々です。
以下、これまで当事務所にご相談いただいた中から、単身赴任中に離婚を切り出されるよくある理由をご紹介します。
(1)元から離婚したいと思っていた
妻が単身赴任をする前から離婚したいと思っていたパターンです。
一緒に同居していた間は、別居をするのも大変なので、妻が我慢をしていた。でも、夫が単身赴任をしたことから、これ幸いと、これまでの恨みを晴らすべく妻が離婚を申し出ることがあります。転勤に一緒についてこない時点で、夫婦間の関係には亀裂が入っていた可能性があります。
(2)浮気をしている
浮気も、よくある離婚原因の一つです。
単身赴任をする前から、妻が別の男性と浮気をしていることがあります。単身赴任によって夫がいなくなったことから、別の男性との関係が深まり、夫との離婚を決意することがあります。
(3)別居の良さを知る
別居をすれば、夫婦は別々に暮らすことになります。別居をすれば、同居中には見えてこなかった相手の嫌な点が見えてくることがあります。夫がいなくなって気分が軽くなり、これまで夫と同居していたことが重荷になっていたことに気付くこともあります。夫のいない気楽な生活で、人生の楽しさを知り、離婚を決意することがあります。単身赴任で、夫婦の気持ちも離れていきます。
2 単身赴任中の離婚が認められる条件
結論として、単身赴任だけを理由にした離婚は認められません。
単身赴任以外の理由が必要です。
離婚は、お互いの話し合いで離婚することが一般的です。これを協議離婚といいます。
話し合いをしても離婚できない場合には、離婚調停、離婚訴訟で離婚を試みます。
離婚裁判では、離婚原因が重要になってきます。
民法が定める離婚原因には、以下のようなものがあります。
(第七百七十条) 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 一 配偶者に不貞な行為があったとき。 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 |
今回問題となっている単身赴任は、5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するかが問題となります。
「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」とは、夫婦関係が破綻していることです。婚姻関係の破綻は、第三者から見てはっきりとわからなければなりません。
仕事の都合で一緒に住んでいないだけで、単身赴任だからといって夫婦がうまくいっていないことにはなりません。第三者から見ても、単身赴任という状況だけでは、夫婦がうまくいっていないかどうかはわかりません。
夫婦関係がうまくいかないことによって別々に住むことになる「別居」とは異なります。
単身赴任は、夫婦関係がうまくなっていないわけではないことから、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」には該当しません。
単身赴任中に離婚するには、単身赴任以外の理由が必要になります。
例えば、浮気、暴力などです。
単身赴任をする前や単身赴任中に、夫や妻が別の異性と浮気をしていた場合には、離婚原因に該当する可能性があります。単身赴任をする前に夫や妻が暴力を受けていた場合も、離婚原因に該当し得ます。
単身赴任以外の理由で離婚を認めてもらうためには、「証拠」が必要になります。
浮気であれば、浮気があったことを示す手紙、写真、SNSのやり取りなどです。暴力は、診断書などです。
3 単身赴任中に妻から離婚したいと言われた場合の対処法
単身赴任中に、妻から離婚したいと言われた場合は、まずは、落ち着いてください。深呼吸してください。
そのうえで、離婚するべきか、離婚しないべきか。それが問題です。
どちらにするか決めてください。
離婚を希望するかどうかによって、とるべき行動が変わってきます。気持ちが固まってこないうちに、行動を開始すると、間違った動きをしてしまい、失敗をしてしまうことがあります。後悔は先に立たずです。
どちらの方針をするかどうかは、周囲とよく相談することをおすすめします。法律問題がわからないときは、弁護士に相談してください。
相手方に譲れない一線はどこかを決めておくことが大事になります。
実際に、方針が決まった場合には、行動の開始です。以下、離婚をする場合、離婚をしない場合に分けて、対処法を紹介します。
(1)離婚をする場合
離婚する場合には、相手方と離婚の協議を開始します。
離婚の協議がまとまれば、離婚届に署名、押印をして、離婚届を役所に提出します。
離婚届は、離婚、親権しか書くことはありません。それ以外の財産分与、慰謝料、養育費、年金分割についても話し合うことができます。その場合には、離婚届とは別に、離婚協議書を作成しておくことをおすすめします。
離婚の協議がうまくいかない場合には、調停離婚、離婚訴訟を行っていくことになります。
関連記事:夫(嫁)から一方的に離婚を切り出されたらどう対応する?慰謝料は請求できるのか?
(2)離婚をしない場合
離婚をしたくない場合は、相手方からの離婚の申出をはっきりと断ってください。
単身赴任だけでは離婚になりません。それ以外の不倫、暴力などの離婚理由は、あなたが離婚に応じない場合には、証拠が必要になってきます。証拠がない場合には、離婚訴訟になっても、妻からの離婚請求が認められない可能性が高いです。
離婚理由については、妻から、単身赴任が別居であり、離婚原因にあたると主張されないように注意しておく必要があります。
妻は、単身赴任中に、離婚を求める書面を郵送してきたり、SNSのメッセージで、同居する意思がない旨を明確にすることがあります。この場合には、単身赴任が途中から別居に切り替わり、別居と見なさる危険性も出てきます。
その場合には、自宅に戻ることができるようにするために、会社に転勤をお願いすることも検討する必要があります。会社が転勤を認めてくれないときには、転職も視野に入ります。仕事と家族のどちらが大切でしょうか。
なお、別居期間は、少なくとも離婚訴訟が終わる時間で、5年程度の時間が必要です。
関連記事:婚姻関係が破綻していないことを示す証拠とは?離婚を回避するためのポイント
4 単身赴任中に離婚する場合の注意点
単身赴任に離婚する場合に最も注意するのは、自宅の処理です。
特に、自宅が賃貸ではなく、持ち家をお持ちの場合には、夫婦間で揉めやすいです。
単身赴任している場合、自宅には、妻や子供が住んでいます。妻が、子供を転校させたくないなどの理由から、自宅から出て行かずに、そのまま自宅に住み続けたいと言うことがあります。その場合には、妻を自宅から出て行かせることは大変な労力がかかります。
強制的に、妻を自宅から出て行かせることも法的には難しい部分があります。
そのため、単身赴任中に離婚する場合には、自宅の処分をどうするかは、よく夫婦間で事前に話し合っておくことが大切になります。
また、奥さんが住む自宅の家賃や住宅ローンをどうするかも問題です。
奥さんが自宅に住み続けた場合、自宅の家賃・住宅ローンと単身赴任先の家賃が二重で負担になることがあります。その場合には、養育費を決める際に、家賃、住宅ローンを考慮してもらうことが考えられます。
5 単身赴任中に離婚する場合の財産分与や養育費はどう決めるか
(1)財産分与
単身赴任中に離婚する場合、財産分与は、同居している場合と同様の方法で財産を分けます。
具体的には、婚姻中に形成した財産を夫婦で、半分に分けることになります。
住宅ローンがあり、オーバーローンの場合には、財産よりも債務が多く、財産分与をする必要がないこともあります。
財産分与のためには、財産関係の資料を集めることが大事です。財産関係の資料は、借金に関するものも集めてください。妻にも、財産関係の資料の開示を求めてください。
(2)養育費
養育費の場合は、お互いで話し合いができれば、その話し合いで決めた金額になります。話し合いがつかない場合には、調停、審判で決めていくことになります。
調停、審判では、裁判所が作成した「養育費・婚姻費用算定表」を参考にして決めます。
「養育費・婚姻費用算定表」は、以下の裁判所のホームページに掲載されていますので、ご覧下さい。
養育費は、妻、お子さんが、ご自身の所有する自宅や、賃貸する自宅に住み続けた場合には、注意が必要です。その場合には、住宅ローンや家賃の負担が問題となります。養育費から、住宅ローン、家賃の考慮してもらって、算定表から一定額を減らしてもらってください。
6 まとめ
今回のコラムでは、単身赴任中に、妻から離婚を切り出された際の対処法などを紹介しました。
突然、離婚を切り出されるのは、辛いことです。この記事が単身赴任中に離婚を切り出された場合に、無事に問題を解決することに役立てば幸いです。
離婚問題は、離婚のみならず、親権、財産分与、慰謝料、養育費、年金分割など難しい問題を含んでいます。離婚問題に悩まれた際には、経験豊富な当事務所までご相談ください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。