不貞行為がなくても慰謝料請求されますか?
目次
1 はじめに
不貞行為とは,配偶者のいる人が異性と自由な意思で肉体関係を持つことをいいます。
もし,あなたが配偶者のいる異性と不倫を行った場合,不倫の中身が不貞行為であるのであれば,不貞行為を知った相手方から慰謝料を請求されることが考えられます。
では,行為がない場合,すなわち不貞行為がない場合でも慰謝料を請求されることがあるのでしょうか?
以下では,不貞行為として慰謝料を請求されるケースと行為がない場合に慰謝料を請求されるケースについて解説していきます。
2 不貞行為として慰謝料を請求されるケース
次のような場合に,不貞行為として慰謝料を請求されることがあります。
(1)性行為を行ったことが十分に想定できる場合
明らかに配偶者が他の異性と性行為を行った場合は不貞行為にあたります。一方,一見して性行為を行ったことがわからなくても配偶者と他の異性がラブホテルに入って出てこない場合のような両者が性行為を行ったことを十分に想定できるので不貞行為にあたります。
そのため,性行為を行ったことが十分に想定される場合には,慰謝料を請求されることがあります。
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(2)強姦や性行為を強要された場合
不貞行為は,配偶者以外の異性と自由意思で肉体関係を持つことをいいますが,強姦や性行為を強要された場合には,自由意思がないため不貞行為には当たりません。なお,強姦をした側は,自由意思で肉体関係を持ったといえるため不貞行為にあたります。
不貞慰謝料は,不倫相手だけでなく,配偶者に対しても請求できるため,配偶者が強姦や性行為を強要した場合には,配偶者の方が慰謝料を請求されることがあります。
(3)しつこく誘われて性行為をした場合
しつこく誘われて仕方なく性行為をした場合,性行為をするかどうかを自分の意思で決めているため自由意思で肉体関係を持ったといえ不貞行為にあたります。
そのため,仕方なく性行為をした場合には,慰謝料を請求されることがあります。
(4)酔っぱらって性行為を行った場合
酔っぱらって性行為をした場合であっても,やはり自由意思で肉体関係を持ったとして不貞行為にあたります。また,酩酊して抵抗ができない状態で性行為を行った場合には,もはや自由意思はなく不貞行為には当たりません。
そのため,単に酔っぱらっているだけで性行為をした場合には,慰謝料を請求されることがあります。
(5)1回だけ肉体関係を持った場合
1回だけであったとしても,配偶者以外の異性と自由意思で肉体関係を持っている以上,不貞行為にあたるので慰謝料を請求されることがあります。
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(6)ダブル不倫の場合
夫も妻もいずれも不倫をしている場合,一方から見ればもう一方の行為は不貞行為にあたり慰謝料を請求されることがありますが,すでに婚姻関係が破綻している場合には,慰謝料請求が困難になることがあります。
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(7)別居中の不倫の場合
この場合でも,まだ婚姻は継続しているので,不貞行為にあたり慰謝料を請求されることがあります。もっとも,すでに婚姻関係が破綻している場合があり,慰謝料請求は困難となることがあります。
3 行為がない場合に慰謝料を請求されるケース~キス・風俗嬢など~
浮気や不倫は,肉体関係を伴うものと肉体関係が伴わないものがあります。肉体関係を伴わないものとしては,配偶者以外の異性とメールやLINEをするなど親密なコミュニケーションをとったり,ショッピングや映画などデートをしたり,お互い抱き着いたりキスをしたり,風俗で肉体関係を伴わない性的サービスをすることが考えられます。
これらは,不貞行為には当たらないので,不貞行為を理由とした慰謝料を請求されることはありません。
しかしながら次のような場合には,行為がなくても慰謝料請求をされることがあります。
(1)社会的に相当な範囲を超えた交際をする場合
肉体関係を伴わない浮気や不倫であっても,明らかに社会的に相当な範囲を超えた交際である場合には,夫婦間の平穏を害したことを理由に慰謝料を請求されることがあります。
(2)キスをする場合
キスを行う場合,不貞行為に類似する行為として慰謝料を請求されることがあります。
(3)風俗で性的サービスをする場合
風俗での性的サービスの場合,風俗嬢の行為は不貞行為にあたらないものの不貞行為に類似するものとして慰謝料請求の対象となりえます。もっとも証明が困難なので風俗嬢の方は慰謝料請求されることは考えにくいです。一方,性的サービスを受けた配偶者の行為は不貞行為に類似する行為として慰謝料請求をされることがあります。
(4)離婚との関係
肉体関係がないとしても,配偶者を顧みずに交際を継続していると,「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」(同条項5号)として離婚の請求が認められるとともに,有責配偶者に対する慰謝料の問題になる可能性があります。
なお,肉体関係を伴わない場合の慰謝料の相場は,肉体関係がある場合と比べて低い傾向にあります。
4 おわりに
不貞行為にあたれば慰謝料請求の対象となりまるが,不貞行為にあたらない場合でも夫婦間の平穏を害したことや不貞行為に類似する行為などを理由に慰謝料を請求されることがあります。
法律事務所ロイヤーズ・ハイでは不倫慰謝料について経験豊富な弁護士が在籍しています。慰謝料を請求されてお困りの方は当事務所の弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。