共働きなのに家事しない夫と離婚したい!と思った方へ|夫婦関係の修復から離婚の方法まで徹底解説
昔とは違い,近年では結婚した後も仕事を続ける女性は少なくありません。
夫と同程度の収入を得ている女性もたくさんおられます。
専業主婦であるならまだしも,共働きであるならば家事についてもちゃんと夫に分担してほしいと考えるのは,至極当然のことです。
仕事も家事も日常的なものであり,日々の生活の大部分を占める問題ですから,その部分の価値観について夫と大きなズレがあると,それによって感じるストレスも深刻なものになりうることでしょう。
なかには,一向に家事をしようとしない夫との離婚を考える方もおられるかと思います。
本コラムでは,共働きであるにもかかわらず家事をしない夫と離婚できるのか,また,離婚する際に考えなければならない事項等について,解説いたします。
目次
1 共働きなのに家事しない夫との関係を改善するためにできること
夫婦は,同居義務・協力義務・扶助義務を負っており,互いに助け合わなくてはなりません。
民法第752条 夫婦は同居し,互いに協力し扶助しなければならない。 |
そうであれば,家事についても当然夫婦で協力し合っていかなければならないはずです。しかし,共働きであるにもかかわらず夫が家事をしないという問題について悩んでおられる方は少なくありません。
共働きなのに自分だけが家事をしており,夫は何も手伝ってくれないということになれば,どうしても夫に対する不満やストレスが日々積み重なっていくことになるでしょうし,それが理由で喧嘩を繰り返してしまうということも多いかと思います。
とはいえ,そのような喧嘩をすることは妻にとっても夫にとっても望むところではないはずです。
では,共働きなのに家事をしない夫との関係を改善するために,何ができるでしょうか。
まず,夫が家事をしてくれない理由のひとつとして,「どうせ妻が家事や育児をやってくれる」と夫が思ってしまっているということが考えられます。
妻が働きながら家事や育児をこなしているのをみて,「妻がやってくれているから自分は別に手伝う必要はないだろう」と勘違いをしてしまっている可能性があるのです。
そのような場合,家事をひとりで行うことが負担になっているということを,きちんと夫に伝え,家事の分担について話し合うことが必要です。
また,「家事や育児を手伝いたいという気持ちはあるけど,何をしたらよいのかわからない」「中途半端に下手なことをやってしまったら逆に妻から怒られてしまうのではないか」等と委縮してしまい,家事をやることに消極的になってしまっている男性もいるかと思います。
その場合は,どの家事をどのようにしてほしいのか,具体的に夫に伝える必要があるでしょう。
ひとくちに「家事」といっても,料理や掃除,洗濯等,その種類はさまざまです。
「料理は苦手だけど掃除ならできる!」という方もいるかと思いますので,夫婦で話し合って,それぞれが得意な分野や苦手な分野を洗い出し,お互いができるだけストレスをためない内容での役割分担が目指すのがよいかと思います。
2 共働きなのに家事しない夫と離婚できる?
上に述べたように,夫婦で話し合うことによって状況が改善できればよいですが,いくら言っても夫が聞く耳をもたない,一向に家事をしようとしないというケースも少なくありません。
では,そのような場合,共働きなのに家事をしない夫と離婚することはできるのでしょうか。
これについて,夫婦双方の合意があるのであれば,どんな理由に基づくものであってももちろん離婚することは可能です。
このような話し合いによる離婚を,「協議離婚」といいます。
夫婦での話し合いで解決できず,夫が離婚に同意してくれないという場合,次に「調停離婚」を検討することになります。
離婚調停を裁判所に申立てることになりますが,調停もあくまで当事者間の話し合いであり,「協議離婚」の場合と同様,双方の合意がなければ離婚をすることはできません。
もっとも,調停の場合,調停委員が中立的な立場で間に入ってくれるため,「どうしても感情的になってしまって冷静な話し合いができない」というような場合には有効な手段といえるでしょう。
関連記事:協議離婚と調停離婚の違いって何?メリット・デメリットと選ぶポイント
3 家事しない夫が離婚に同意しなかった場合に取り得る方法
どうしても夫が離婚に同意せず,「協議離婚」も「調停離婚」も実現しない場合,「裁判離婚」を検討することになります。
「裁判離婚」の場合,時間や手間はかかってしまいますが,最終的に離婚を認められるどうかについて裁判所が判決を下してくれることになるため,話し合いでは一向に解決できなかった問題についてはっきりと決着をつけることができます。
もっとも,「裁判離婚」の場合,どのような事情でも離婚できるというわけではありません。
離婚が認められる事由が,法律によって定められています。
民法770条1項 夫婦の一方は,次に掲げる場合に限り,離婚の訴えを提起することができる。 一 配偶者に不貞な行為があったとき。 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 四 配偶者が強度の精神病にかかり,回復の見込みがないとき。 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。 |
このように,「配偶者が家事をしない」ということは,離婚事由として直接的に法律で決められているものではありません。
・悪意の遺棄(2号)
説明したとおり,夫婦は同居義務や協力義務,扶助義務を負っており,配偶者が正当な理由なくこれらの義務を怠った場合には,「悪意の遺棄」に該当する可能性があります。
この具体的な例としては,一方的に配偶者を自宅から追い出す,勝手に理由もなく出て行ってしまい自宅に帰ってこない,収入があるのに充分な生活費を入れない,等が挙げられます。
家事をしないという事実は,夫婦の協力義務や扶助義務に反しているようにも思えますが,夫がきちんと生活費を入れているということであれば,家事をしないという事実だけで「悪意の遺棄」であると認められるのは極めて難しいかと思います。
・その他婚姻を継続し難い重大な事由(5号)
家事をしないことが「婚姻を継続し難い重大な事由」であると認められれば離婚することができますが,単に「家事をしない」というだけではこれが認められるのは難しいと考えられます。
他方,共働きの妻が家事の分担について何度も夫と話し合おうとしているにもかかわらず,夫が「女の仕事は男の仕事より楽なはず」「家事は妻(女)の仕事」等と言って家事を一切手伝わず,それどころか家事の協力を求める妻に対して威圧的な態度をとったりするような場合には,「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるとして,離婚が認められる可能性は高くなるでしょう。
家事をしないことを理由とする離婚についての裁判例として,以下のようなものがあります。
【東京地裁平成17年6月14日】 「被告(妻)は,原告(夫)と婚姻した後も前記美容外科医院での勤務を継続していたのであり,原告もこれを積極的に評価していたのであるから,被告が当然に家事全般を行わなければならないものということはできず,原告の洋服の片付けや靴磨きは原告自身が行えば足りることであって,これを一方的に被告に押し付けようとする原告の考え方は,身勝手というほかない(原告が被告による家事の不十分な点として原告の洋服の片付けや靴磨き程度のことしか指摘できないということは,かえって,それ以外のほとんどの家事や育児については,被告が怠りなく行っていたことを自認するに等しいというべきである。)。」 |
として,夫婦間の家事の分担等について自己の一方的な考え方や要求を妻に押し付けようとし,妻との考え方の相違を解消するための努力もせずに別居を開始した夫に,婚姻関係破綻の責任があると判断しました。
もっとも,上記裁判例は,夫側が別居を開始し,別居期間が2年3か月に及んでいる事案です。
4 家事しない夫と離婚する際に考えないといけないこと
それでは,家事をしない夫と離婚する際,どのようなことに注意する必要があるでしょうか。
離婚する際には,財産分与として,婚姻期間中に夫婦で協力して築いた財産を分け合う必要があります。
共働きの場合,当然夫婦双方にある程度の収入があり,その収入額に差があることも少なくありません。
しかし,その場合でも,財産分与の割合は基本的には2分の1ずつになります。
収入が少ない方が家事や育児等で家庭をサポートしていることが多く,その場合,夫婦の財産形成に貢献しているといえるからです。
他方で,妻の収入の方が高いにもかかわらず夫が一切家事をしないような場合には,妻の方が財産形成に対する貢献度が高いとして,2分の1以上の財産分与を得られる可能性はあります。
もっとも,財産分与を請求する権利は,離婚が成立してから2年で消滅してしまいますので,離婚後に財産分与を請求するということであれば,できる限り速やかに行動されることをおすすめします。
また,夫婦に子どもがいる場合,離婚の際には当然夫婦のどちらが親権をとるか,子どもの養育費をどうするかという点についても決める必要があります。
夫婦が共働きの場合,双方の収入のバランス等を見て養育費の金額を決定していくことになりますので,子どもの将来のためにも,この点はしっかりと交渉を行うべきです。
5 まとめ
「家事をしない」というだけでは,どうしても相手の同意がない状態で離婚をすることは難しくなります。
このような場合に家事をしない夫と離婚するためには,その他の家庭状況や夫婦の関係等についても考慮することが必要不可欠です。
共働きであるにもかかわらず家事をしない夫との離婚を考えておられる方は,まずは一度弁護士にご相談ください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。