LINEをのぞかれた…プライバシーの侵害じゃないの?
サクッと1分!解説動画
配偶者の行動が怪しい…不貞では?
そう思った時,真っ先に気になるのは携帯電話なのではないでしょうか。連絡手段として不可欠な携帯電話には,不貞相手との通話履歴や,メール・LINEのやり取りが残されている可能性が高いでしょう。
配偶者の携帯をたまたま覗いたら,LINEのメッセージがポップアップ表示されていた。携帯のロックを解除して中身をチェックした。LINE等のアプリにもロックがかかっていたので,解除してメッセージをチェックした。これらの行動に問題はないのでしょうか。ここでは,携帯を覗いた場合に生じ得る問題について解説していきます。
目次
1 プライバシーの侵害に関する民事上の問題
携帯電話には個人情報が詰まっています。たとえ恋人や配偶者,家族であっても,見られたくないと思うものはあるはずです。そのため,勝手に携帯の中身を見ることは,たとえ家族であってもプライバシー権の侵害に該当する場合があるのです。
(1) プライバシー情報とは
プライバシーに該当する情報とは
①私生活上の事実で
②未だ一般に知られていないものであり
③一般人であれば他人に知られることを欲しないもの
を言います。
そのため,携帯に保存されているメールやLINEのやり取り,画像データであっても,プライバシー情報と言えるのです。
(2) 携帯を見ただけでもプライバシー侵害?
ここで,プライバシー情報であっても,それを第三者に話したりせずに自分が勝手に見るだけなら,プライバシー侵害に該当しないと思われる方もいるかもしれません。
しかし現在,プライバシー権とは,プライバシー情報を,本人の同意なく他者が勝手に収集・取得したり,保有して利用したり,第三者に開示・提供したりされない権利であると考えられています。
そのため,携帯のデータを盗み見る行為は,情報を勝手に取得する行為に該当しますから,プライバシーの侵害にあたり,損害賠償責任を負う可能性があるのです。更に,メールのやり取り等であれば,携帯の所有者だけでなく,メールのやりとりをしている相手もいるわけですから,その人のプライバシーも侵害していることになります。
もっとも,置きっぱなしにされていた携帯のポップアップ画面に,たまたま不貞相手からのメッセージが表示され,それを見てしまったという場合は,見ようと思って見たわけではありませんから,プライバシー侵害にはあたらないでしょう。
2 刑事上の問題
他人の携帯を見ること自体に対する刑罰規定は,日本の法律には存在しません。そのため,勝手に携帯を覗き見ただけであれば罪に問われることはありません。
もっとも,LINEやTwitter,Gmail等は,アプリにログインするためにはパスワードが必要になります。これらのパスワードを勝手に入力し,ログインした場合には,不正アクセス行為の禁止等に関する法律(いわゆる「不正アクセス禁止法」)に基づき,刑事罰が科される可能性があります。
(1) 不正アクセス禁止法
不正アクセス禁止法では,第3条で「何人も不正アクセス行為をしてはならない」と規定しています。そして,これに反した場合には,3年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科されることになります。
ここで,「不正アクセス行為」とは,アクセス制御により利用が制限されているコンピューターに対して,ネットワークを通じて,正規の利用者のパスワード等を無断で入力する行為をいいます。
そのため,TwitterやFacebook等のSNS,Gmail,LINE等にパスワードを入力してログインする行為は,不正アクセス行為に該当し,刑事罰の対象になる可能性があるのです。
(2) 本体にパスワードが保存されている場合
LINEやTwitter,Gmail等は,頻繁に利用するため携帯にパスワードを記憶させておき,自動でログインできる状態にしている方が多いのではないでしょうか。
自動ログイン状態のアプリの中身を無断で見た場合,パスワードを入力したわけではありませんから,不正アクセス行為には該当しないとも思えます。しかし,自動ログインであっても,アプリを開く度にパスワード等の情報を「送信」することにはなりますから,不正アクセス行為であることに違いありません。
そのため,自動ログイン状態であっても,そもそもログインをするのにパスワードが必要なアプリであれば,その中身を見ること自体が不正アクセス行為に該当するおそれがあります。
(3) 携帯電話本体のロックを解除する行為
携帯電話本体にロックをかけている方も多いでしょう。パスワードを無断で入力し,ロックを解除した場合はどうでしょうか。
この場合は,ネットワークを通じてパスワードを送信しているわけではありません。そのため,携帯電話本体のロックの解除は,不正アクセス行為には該当しません。
また,携帯電話本体に保存されているメールや,データフォルダ内の画像を勝手に見る行為も,ネットワークを経由しているわけではありませんから,不正アクセス行為にはあたりません。
以上の様に,携帯の覗き見は,民事のみならず刑事事件にも発展しかねないものです。
パートナーの不貞が発覚した場合,パスワードを知っているからとFacebook等に勝手にログインする前に,一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。