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合意した慰謝料請求を拒否すると

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ポイント説明

慰謝料請求において当事者が用いる手段としては、①当事者間での合意②裁判上の請求③公正証書による合意、の3種類が考えられます。
今回は、合意した慰謝料請求のため、専ら①が問題となるのですが、他の制度と異なる部分を明確にするため、3つの手段において以下簡潔に説明します。

①当事者間での合意
簡潔に言うと、当事者間での話し合いによって「○月○日までに○○万円を支払え」という取り決めをすることをいいます。この手段によるときは、当事者間で合意書が作成されるケースが殆どです。
②裁判上の請求
当事者間での話し合いによって解決しなかったような場合に、裁判所を介して問題の解決を図る手段です。裁判上のせいきゅうでは、最終的には「○○万円を払え」といった形の「判決」がでる場合と、裁判をしている間に当事者間で解決がされ、「和解」をする場合の2つがあります。
裁判上の請求は一度出てしまった結論について拒否をすることは原則できません。裁判上で出た結論には、「あなたが持っている財産から○○万円を強制的に払ってもらいます」といった強制力が働くからです(民事執行法22条、25条参照)。
③公正証書
公正証書とは、当事者間における権利義務に関する契約を法令に定めた方法で公文書として作成した証書のことをいいます。公正証書は、公証役場で作成される必要があったり、手数料がかかることから、契約書としての信用度が極めて高い文書と言えます。
また、公正証書は裁判上の請求と同様に、約束した金額が支払われなかった場合、強制的に財産を差し押さえる強制執行をすることができます。

今回の記事の流れ

1 一度は合意した不倫慰謝料の支払いは拒否できるのか?

一度は合意した不倫慰謝料の支払は拒否できるのか?

上記のように、当事者の合意は、裁判上の請求や公正証書とは異なり、私人間の話し合いによって解決する方法であることから、強制執行をすることはできません。よって、拒否することはできます。
ただ、合意書を作成し自身の名前を署名したような場合は、書面にある契約内容に合意したと言え契約は有効に成立します。なので、もしその後裁判になったときに、合意書を証拠として提出された際には、合意書通りの判決がだされる可能性が極めて高いので、注意しなければなりません。

関連記事:確定した慰謝料を拒否する(払わない)とどうなる?罰則はあるのか?

 

2 不倫慰謝料の支払いについて確認すべきこと

(1)合意書はあるか?

合意書

合意書とは、当事者間の話し合いの末作成される、約束事が記載された書面です。合意書には、主に、

  • ①不貞行為があったことの確認
  • ②慰謝料を支払うこと及びその金額
  • ③不倫を解消し、二度と合わない誓約
  • ④再び接触した場合には、違約金を支払うこと

等の内容が記載されます。
よって、合意書が作成されたときには、合意書に書かれている慰謝料額を支払わなければならないため、当事者との齟齬が生じないよう慎重に作成する必要があります。

 

(2)合意内容に認識の違いはないか?

上述したように、合意書は当時者間での話し合いの内容をまとめたものです。自分が不倫をして、不倫相手の配偶者に対して「慰謝料は100万円だ。」と主張していても、「慰謝料500万円を支払え。」と書かれている合意書に署名をしてしまうと、500万円を原則として支払わなければならなくなります。なので、合意書に署名をする際には、話し合いの結果が適切に反映されているかを吟味する必要があります。
また、ときには相手方にとって有利な条件が記載されている場合もあるので、注意しなければなりません。
ただ、自分では「慰謝料は100万円だ。」と思っていたとしても、間違えて「慰謝料は1000万円だ。」と意思表示してしまったとき、本当に相手に対して1000万円を支払わなければならないのでしょうか。うっかり間違えてしまっただけなのに900万円も多く支払うのは納得できない気持ちになるかと思います。
このような場合、「意思表示に対応する意思」を欠いていて、それが「法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要」であるときには、錯誤による取り消し(民法95条1項1号、121条)をすることができます。
もっとも、錯誤取り消しは、重大な過失によって意思表示をしていた場合には、特定の場合を除いて使うことができない(同法95条3項)ことと、取り消しできると知ったときから5年間行使しないと、時効によって消滅してしまう(同法126条)ことに注意する必要があります。

 

(3)公正証書になっているか?

公正証書

公正証書とは、公証役場において、公証人という法律の専門家が作成してくれる公文書のことをいいます。公正証書は、中立の立場にいる方が契約書を作成するため、合意書と比較し書面の信用性が高いのが特徴です。
公正証書の作成手順は、主に以下の通りです。

①合意書に当事者が署名捺印する
まずは、上述した合意書を当事者間で作成します。この合意書が公正証書の下地となりますので、内容に関しては予めチェックする必要があります。
②公証役場の場所と署名捺印する日時を決める
公証役場は全国におよそ300ヶ所あると言われています。その中から、当事者にとって都合の良い役場と、日時を決めます。なお、どうしても当事者の都合が合わない場合には、委任状を作成し、代理人(民法99条以下参照)を選任することも可能です。
③必要書類を準備する
当事者双方が署名捺印した合意書(手順①)と、身分証明書を準備します。手順②で代理人を選任した場合には、委任状と代理人の身分証明も必要となります。
④公証役場を予約する
予約の際、③で準備した必要書類をFAXで送るか持参するかの指示をされるおそれがあります。
⑤公正証書の原案を当事者が確認する
原案を確認し、諾否を公証人へと伝えます。
⑥予約当日に公証役場に行く

以上が、公正証書作成の手順です。
なお、公正証書になっている際には、裁判の判決と同様に強制執行することができますので、公正証書に書かれている慰謝料額をそのまま支払う義務を負います。

 

(4)裁判を起こされていないか?

裁判を起こされているか否かについては、注意を払う必要があります。もし、裁判を提起されたにもかかわらず、裁判所に答弁書を提出しなかったり、第1回口頭弁論期日に出席しなかった場合には、原告の請求通りの判決がされるおそれがあります(民事訴訟法159条3項)。また、裁判に出席したら、原告と和解が成立し、原告が当初請求していた額よりも少額の慰謝料で済むケースも多いです。
以上より、裁判を提起された場合には、出席し、主張をするのが肝要でしょう。

 

3 拒否している訳ではないが慰謝料の支払い能力がない場合

拒否しているわけではないが慰謝料の支払能力がない場合

慰謝料の請求額が高額になり、一括で払えないというケースは珍しくありません。そのようなときは、相手方に分割払いにしてもらえるよう説明し、合意を得るという手段は考えられます。
ただ、相手としても、分割払いにして毎月きちんと払ってもらえるかは心配になると思いますので、分割払いで払う旨の公正証書を作成するのがいいでしょう。
また、慰謝料請求において、最初に原告が提示する額はどうしても高額になりがちです。被告の主張によって、値段が変動することがありますので、真摯に話し合いをすることが懸命でしょう。

 

4 まとめ

以上のように、不倫における慰謝料請求は、当事者個人の力のみで解決できないことが少なくありません。事案としっかり向き合い、より良い解決に向かうためにも、専門家である弁護士等に相談されることをお勧めします。

このコラムの監修者

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