離婚慰謝料は課税される?慰謝料を払う側ともらう側の税金を徹底解説
「近々、妻と協議離婚する予定です。原因は、私の不倫にあります。そのため、妻と慰謝料について話し合っており、協議書には慰謝料を定める予定です。そこで知りたいのは、慰謝料も課税の対象となるのかということです。また、慰謝料を現金以外の財産によって支払うことは可能なのか、その場合も税金はどうなるのか教えてください。」
目次
1 離婚慰謝料は原則「非課税」!
離婚慰謝料は、不倫やDVといった原因によって離婚する場合に、精神的苦痛を受けた損害を賠償するお金です。
受けた精神的苦痛をお金で埋め合わせるものであって、利益を得ることではありません。
そのため、原則として、離婚慰謝料は課税の対象とならないのです。
慰謝料が課税の対象とならないことは、所得税法9条1項18号と所得税法施行令30条3号に定められています。
【所得税法9条1項18号】 (非課税所得) 第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。 (略) 十八 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの (略) |
【所得税法施行令30条3号】 (非課税とされる保険金、損害賠償金等) 第三十条 法第九条第一項第十八号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるものその他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補塡するための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。 (略) 三 心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金(第九十四条の規定に該当するものその他役務の対価たる性質を有するものを除く。) |
もっとも、慰謝料が過大すぎる場合や、お金ではなく不動産や車などの財産である場合には、利益を受けたものとして贈与税などの税金がかかってしまう場合もあります。
離婚慰謝料なら絶対に非課税というわけではないので、注意してください。
2 離婚慰謝料が課税されるケース
例外的に、離婚慰謝料が課税されるケースにつき、慰謝料を「受け取る側」と「支払う側」に分けて解説します。
(1)受け取る側に対する税金
離婚慰謝料を受け取る側に対して、税金が課されるのは、以下のようなケースです。
①慰謝料が過大すぎる場合 ②慰謝料として不動産や車を受け取った場合 ③離婚成立前に慰謝料として不動産を受け取った場合 ④偽装離婚であると判断される場合 |
①慰謝料が過大すぎる場合
受け取った慰謝料が過大であると、贈与税が課される場合があります。
離婚慰謝料が非課税である理由は、慰謝料が精神的苦痛の埋め合わせであって、利益を得るものではないというものでした。
しかし、慰謝料が精神的苦痛の埋め合わせを超え、過大で利益を得るものといえるような場合には、贈与税が課される可能性があります。
特に、慰謝料が過大であると判断されるケースとしては、慰謝料が非課税であることを利用して、意図的な財産隠しや脱税行為がされる場合などです。
なお、贈与税は、受け取った金額から基礎控除110万円を差し引いた金額に対して課税されることになります。
②慰謝料として不動産や車を受け取った場合
離婚慰謝料を現金でなく、不動産や車などの財産で受け取ることも可能です。
不動産や車などの評価額が慰謝料として相当な金額であれば、基本的に贈与税はかかりません。
しかし、不動産や車などの評価額が慰謝料額を上回る場合には、贈与税が課される可能性があります。
また、不動産で受け取った場合には、登録免許税や固定資産税がかかってきます。
さらに、場合によっては、不動産取得税がかかる場合もあります。
不動産取得税については、取得する不動産が住宅や宅地である場合、軽減措置を受けられることがありますので、慰謝料として不動産を受け取る場合には、弁護士や税理士に相談することをお勧めします。
③離婚成立前に慰謝料として不動産を受け取った場合
離婚成立前に慰謝料として不動産を受け取った場合には、贈与税が課せられます。
ただし、以下の条件を満たした場合、2000万円の配偶者控除を受けることができます。
・婚姻期間が満20年以上 ・受け取った不動産が居住用であること、または、居住用不動産を取得するための金銭を受け取り、その金銭で居住用不動産を取得したこと ・不動産を受け取った人、または金銭で取得した人が、受け取った次の年の3月15日までその不動産に住んでいて、その後も住み続ける見込みがあること |
また、もともと贈与税には110万円の基礎控除額があるため、配偶者控除が適用できれば、合計で2110万円まで贈与税がかからないことになります。
離婚成立前に慰謝料として不動産を受け取る場合は、一度弁護士や税理士に相談することをお勧めします。
④偽装離婚であると判断される場合
偽装離婚である場合、離婚慰謝料として受け取ったお金は贈与税の対象となります。
離婚の実態がない場合、離婚にともなう精神的苦痛は認められません。
精神的苦痛を受けていないのにお金を受け取ったということは、そのお金は慰謝料ではなく、単なる贈与ということになるのです。
(2)支払う側に対する税金
支払う側に税金が課される対象は、支払った離婚慰謝料ではありません。
支払う側に税金が課されるのは、以下のようなケースです。
①慰謝料を代わりに支払ってもらった場合 ②慰謝料を不動産などの「資産」で支払った場合 |
①慰謝料を代わりに支払ってもらった場合
慰謝料を支払うために、両親などの第三者に立て替えてもらった場合、贈与税がかかることがあります。
慰謝料を支払う側が、第三者から立替金の贈与を受けたことになるからです。
②慰謝料を不動産などの「資産」で支払った場合
慰謝料を所得税法上の課税対象となる「資産」によって支払った場合、譲渡所得税がかかる場合があります。
税務上、資産による慰謝料の支払いは、資産を売却したという扱いになるためです。
もっとも、譲渡所得税が課税されるのは、資産を取得した時よりも手放したときの価値が高い場合です。
また、売却費用や購入費用を差し引くこともできます。
さらに、慰謝料の支払いとしてマイホームを譲渡した場合、その時点で夫婦関係になければ3000万円の特別控除を受けることができる場合もあります。
つまり、離婚成立後であれば、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる場合があるのです。
課税の対象や特別控除の適用については、専門的な知識を要します。慰謝料を不動産などの資産で支払う場合には、一度、専門家である弁護士や税理士に相談することをお勧めします。
3 まとめ
原則として、離婚慰謝料は課税の対象となりません。
しかし、例外的に、税金がかかってしまうケースもあります。
慰謝料に税金がかかってしまうと、結果として、受け取る側の慰謝料が少なくなってしまいます。
税金がかからないようにするためには、慰謝料を支払う側と受け取る側、お互いが協力し合うことが必要です。
もっとも、慰謝料や税金については、専門的な知識を要するため、一度弁護士や税理士に相談することをお勧めします。
「課税」もしくは「非課税」を書いてください。
法律を想定して書けていないので、「もらう側」「払う側」の分類がおかしければ消していただいて構いません。見出しに「離婚慰謝料」「課税」が入っていれば、見出しを自由に変えていただいて構いません。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。