夫・妻から離婚調停を申し立てられた!離婚を回避する方法
突然、家庭裁判所から配偶者(夫や妻)が離婚調停を申し立てたとの書類が届いた!
離婚調停(りこんちょうてい)という言葉を聞いたことがあっても、いざ自分が当事者になると色々な疑問が湧いてくることと思います。
・調停の手続はどのように進められるのか? ・相手が勝手に手続きをしてきたことなので、仕事・家事がある中、応じないといけないのだろうか? ・自分が思う様に手続きを進められるのだろうか? ・弁護士を頼んだ方がいいのだろうか? |
本コラムではこうした、疑問点や不安にお答えしていきたいと思います。
本コラムにより離婚調停の基本を押さえていただき、ご自身にとってどのような対応をすることが、よりよい解決につながるのか、ご参考にしていただければ幸いです。
目次
1 離婚調停を申し立てられたら、手続きの流れと必要な書類は?
まずは、離婚調停手続は、家庭裁判所で行われる調停手続の一種であり、裁判所における呼称は「夫婦関係調整調停」ということになります。
なお、夫婦関係調整調停の中には夫婦関係を解消すること(離婚)を求めるものだけでなく、夫婦関係を修復するためのいわゆる円満調停というものもあります。
夫婦関係調整調停が一方の配偶者(夫や妻)から申し立てられると、家庭裁判所から申立書や事務連絡の書類が他方の配偶者の元に送付されることとなります。調停の手続き上、調停を申し立てる側のことを「申立人」、申し立てられている側の方を「相手方」と呼びます。民事裁判で、請求をする方を「原告」、請求される側を「被告」と呼ぶことと似ています。
貴方の元に、夫や妻が申し立てた調停の書類が届いたということは、貴方が調停手続における当事者である「相手方」となっているということです。
申立書には、申立人の側が主張する請求内容が記載されています。離婚調停であれば、「離婚を求める」ということや、離婚した場合の、財産分与・養育費等についてこうするべきとの主張が記載されていることが一般的です。
そして、離婚の理由についても、(多くは簡単にですが)記載されています。例えば、性格の不一致や不貞行為、DV、モラハラ等で、離婚の理由とされている事情は多種多様です。
調停の手続きは、家庭裁判所において、中立な第三者である裁判所の選任する調停委員を間において、当事者となるお二人で夫婦関係についてどうするかを話し合って決めることを目的とした手続きです。
この点、「裁判所でも結局話し合いをするなら、夫婦で事実上話し合ういわゆる離婚協議とは何が違うのだろう?」という疑問も生じてくるものと思います。
大きくは以下の様な点が、離婚調停の特徴と言えます。
・裁判所という公的機関において、裁判所が選任した調停委員を挟んで話し合いをするので、夫婦お二人だと感情的になりがちな点についても、冷静に話し合う機会になることが期待されています。 ・裁判所が関わるので、ある程度法律に則った議論をすることが期待できます。 ・調停で決まったことについては、法的な拘束力があります。 |
調停の大まかな流れについても説明していきます。
申立人が調停の申立を行ってから、大体1~2か月のうちには、家庭裁判所における調停の期日が開かれることになります。
期日では、裁判所に双方当事者が出頭の上、事前に提出されている申立書や、当事者の主張を記載した書面の内容を確認したり、双方当事者の希望を聞いたりして、合意形成を図って話し合いをすすめていくことになります。
話し合いといっても、当事者同士で面と向かって話し合うというわけではなく、裁判所の選んだ調停委員にご自身の主張や請求について話していただき、調停委員から相手に話をしてもらうことになります。
調停委員は、お互いの言い分について整理して、基本的には法律に則った基準での解決を図って、調停成立(合意成立)を目指して活動していきます。
1回の期日で話し合いがまとまらなければ、次回の期日を定めて、その日までに双方準備をして、次回の期日にまた合意成立を目指して話し合うこととなります。
期日と期日の間の期間はおおむね1か月~1か月半程度となります。
事実関係について当事者双方の主張に隔たりがある場合には、双方どちらの主張が正しいかの議論を数回の期日に渡って重ねる場合もあります。
夫婦のどちらに離婚の原因があるか争われたり、離婚自体に争いがないとしても離婚後の財産分与について争われたりする場合には、調停が長引く場合があります。
離婚調停手続については、年単位で時間がかかることも珍しくありません。
調停の手続きの中で、お互いに妥協点を見つけ、合意に至った場合には、代理人の弁護士や裁判所の職員の方で調停条項という合意の条項を作成し、調停条項について当事者の了解が得られれば、裁判官により調停条項の読み合わせがあり、調停成立という運びとなります。
調停が成立した場合には裁判所が最終的に調停調書という調停条項が記載された公的な書類を作成します。
調停で話し合いがまとまらずに終わった場合には、調停は「不成立」ということになり、そこまでで調停手続は終了することになります。
以上が夫婦関係調整(離婚)調停の手続の大きな流れになります。
必要な書類についてもご案内します。
調停を申し立てる側であれば、申立の際に、夫婦関係を示す戸籍全部事項証明書(いわゆる戸籍謄本と同じものですが、現在の正式名称は戸籍全部事項証明書です)を用意して家庭裁判所に提出することとなります。
調停手続は話し合いとお伝えしましたが、期日当日に口頭で話し合いをするだけではなく、主張については事前に書面で提出することを求められます(主張書面などといいます)。
そのほか、離婚調停でどういった議論をするかによりますが、場合に応じて以下のような書類が必要になります。
婚姻費用や養育費について議論する場合 →夫婦双方の収入に関する資料(給与所得者なら源泉徴収票、自営業者なら確定申告書等です)
慰謝料について議論する場合 →慰謝料を基礎づける資料(不貞が離婚の原因なら不貞の証拠、DVが離婚の証拠なら怪我させられた診断書等です)
財産分与について議論する場合 →夫婦の財産に関する資料(預金、不動産、有価証券、その他の権利義務関係の資料)
お子さんの親権について議論する場合 →お子さんに関する資料(お子さんの生育環境・教育環境としてどちらの親がふさわしいのかということが議論になるので、お子さんの普段の生活に関する資料、親子関係を示す資料、経済力や人的な関係を示す資料が必要となります)
年金分割について議論する場合 →年金分割に関する情報通知書(年金事務所での手続きで取得する必要があります) |
2 離婚したくない場合、どうすれば離婚を回避できるか?
配偶者から離婚の調停を申し立てられた場合にどうすれば離婚を回避できるでしょうか?
そもそも離婚調停を申し立てられたら最終的に離婚することになってしまうのでしょうか?
まずは、離婚調停が行われたからといって、片方の当事者(貴方)が離婚自体に応じないということであれば、調停で離婚が成立するということはありえません。
調停はあくまでも話し合いによる合意形成を目指す手続きですので、合意なく離婚させられるということはないのです。
しかしながら、調停手続に出席し議論に応じる必要がないということではありません。
というのも、離婚調停は離婚訴訟の前段階に位置付けられており、そもそも貴方が調停に応じないという場合には、早々に離婚調停は不成立となり、次の段階の離婚訴訟に進むおそれがあります。
離婚訴訟においては、法律上の離婚事由が認められさえすれば、一方の配偶者からの請求で強制的に離婚が成立することがありえます。
したがって、前段階の調停から対応し、自身の主張を行っておくことが有益であるといえます。
また離婚調停においては、婚姻費用等の議論も行われることが多いので、請求する側であれば、調停に応じて議論を尽くす必要があります。
(なお、婚姻費用等については、訴訟ではなく審判という手続きが用意されています。)
離婚を回避するためには、調停には応じて、ご自身の主張を尽くしておくことが必要となります。
関連記事:婚姻関係が破綻していないことを示す証拠とは?離婚を回避するためのポイント
3 離婚に同意する場合、どうすれば有利な離婚条件を得られるか?
内心離婚はやむをえない、いつか離婚するだろうとは思っていた、という場合もあろうかと思います。
離婚自体は夫婦間で同意があれば、いつでもすることができます。
しかしながら離婚の条件次第で離婚するかどうか考えたいという場合には、手順を考える必要があります。
ここでは代表的な2つのポイントをお伝えしたいと思います。
①婚姻費用を請求する側かどうか
もし貴方が夫婦関係継続中に婚姻費用を請求できる立場にあるなら、急いで離婚に応じなくとも腰を据えて、納得のできる合意の条件が整うまで粘ることが考えられます。
②より離婚を望んでいるのはどちらか
もし、貴方よりも相手の方に離婚を強く望む理由、離婚を急ぎたい理由があるのであれば、離婚に早期に応じることを条件に離婚する際の条件について自身に有利なものを提示することが考えられます。
このほかの有利な条件を引き出すテクニック・考え方については、お客様の置かれた状況や相手の方の性格・状況等によっても異なるため、詳しくは法律相談に来ていただき、経験豊富な弊所の弁護士にお尋ねいただければと存じます。
関連記事:円満に離婚するための5つのポイントとは?円満に離婚できない場合の対処法も解説
4 離婚調停を申し立てられた際に弁護士に依頼するメリット
離婚調停は当事者での話し合いでの解決を目指す手続きとはいえ、裁判所において法律的な議論を交わす場というのが本質です。
離婚調停の行く末には、離婚訴訟(裁判)や審判が控えています。裁判や審判での議論は、民事裁判と同じく証拠に基づく事実の評価と法律の適用が問題となります。
率直に申し上げて、法律や裁判手続の知識のない一般の方が自身の思う結論に向かって、時機に応じた攻撃防御を尽くすのは、およそ不可能といってよいでしょう。
したがって、ご自身の望む夫婦関係の帰結に向かってどのような対応をすべきかについては、弁護士に依頼していただくことがより良い解決への近道であるといえます。
関連記事:離婚調停は自分でできる?弁護士に依頼しないメリット・デメリット
5 まとめ
調停は話し合いでの解決を目指す手続きですので、調停に応じなくとも離婚させられるというわけではありません。
しかしながら、調停の後には離婚訴訟や審判の手続きが控えているため、調停の段階からしっかりとご自身の主張を行っておくことが有益です。
また離婚調停においては付随して婚姻費用等の議論も行われるため、不利益を被らないためには対応することが必須の場合があります。
離婚の問題はこれに付随する法的な問題や交渉の進め方について、経験ある弁護士のサポートが不可欠な分野といえます。
お困りの際はぜひ弁護士への法律相談をご検討ください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。