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不倫(不貞行為)での慰謝料は減額・拒否できる?5つのポイントと相場判例

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ポイント説明

不貞の慰謝料の相場はどのくらいでしょうか。どういった事情があれば慰謝料が高額になり,どうすれば減額できるのでしょうか。不貞相手の配偶者は,怒りの感情から高額な慰謝料を請求してくるかもしれません。その額が妥当なのか,ご自身では判断が難しいものです。
ここでは,どういった事情があれば慰謝料を減額できるのか,具体的にお話ししていきます。

今回の記事の流れ

1 不貞行為で離婚をすれば高額に!?相場や判例を紹介

不貞行為で離婚をすれば高額に!?相場や判例を紹介
不貞が原因で離婚をした場合,慰謝料は高額になるのでしょうか。
これまでの判例上,慰謝料額の相場は

別居・離婚なし50~100万円
別居100~150万円
離婚100~200万円

と考えられていました。

しかし,平成31年2月19日に,気になる最高裁判決が出ています。

【事案】XとAは,婚姻関係にあり,二児を設けていた。XAは同居していたが,Xは仕事のため帰宅しないことも多く,いわゆるセックスレスの状態にあった。Aは,Yの勤務する会社に入社してYと知り合い,半年後に不貞行為に及ぶようになった。しかし、これがXの知るところとなったため,AはYとの不貞関係を解消し,XAは同居を続けた。

不貞関係を解消して約4年後,長女の大学進学を機に,XAは別居し,連絡を取ることもなかった。Xは,Aとの間で離婚調停を申し立てる一方,Yに慰謝料を請求した。

【判例の要旨】夫婦の一方は,他方に対し,有責行為を原因とする離婚により精神的苦痛を被ったとして慰謝料請求できるが,本件は,夫婦間の問題ではなく,夫婦の一方と不貞関係にあった第三者に対して,他方が離婚に伴う慰謝料を請求するものである。

協議離婚と裁判上の離婚のどちらであっても,離婚による婚姻の解消は,本来夫婦間で決められるべき事情である。そのため,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これによって夫婦の婚姻関係が破綻して離婚したとしても、他方に対して不貞行為による不法行為責任を負うべき場合は別として,直ちに当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない。第三者が離婚自体を理由とする不法行為責任を負うのは,当該夫婦を離婚させることを目的にその婚姻関係に不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚せざるを得ない状況に追いやったと評価できる特段の事情があるときに限られる。

本件において,Yは,Xの妻Aと不貞行為に及んでいるが,これが発覚したころに不貞関係は解消されており,離婚成立までに上記特段の事情があったとは認められないため,Xは,Yに対して離婚に伴う慰謝料を請求できない。

本判決で最高裁は,「離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である」から,不貞により夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,不貞相手は,「直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない」と述べています。
そして,離婚に伴う慰謝料を不貞相手に請求できるのは,「特段の事情」がある場合のみだと判示しています。ここでいう「特段の事情」とは,「単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき場合」です。
つまり,不貞によって離婚した場合でも,「特段の事情」がない限り,慰謝料の相場は50~100万円になる可能性がある,ということです。

この最高裁判決に基づく裁判例の蓄積が待たれるところではありますが,仮に「離婚したから」という理由で高額な慰謝料を請求されたのであれば,最高裁判決を理由に,減額交渉をできるかもしれません。

関連記事:不倫の離婚慰謝料の増額と減額~判例ごとの相場も紹介~

 

2 そもそも慰謝料の支払い自体に応じない場合 以下の場合には、そもそも慰謝料の支払い自体を拒否することができます

そもそも慰謝料の支払い自体に応じない場合 以下の場合には、そもそも慰謝料の支払い自体を拒否することができます

(1)不貞行為が存在しない・証明できない場合

「不倫」というと,「浮気」と同様に,妻・夫以外の男女と交際することも含まれると思われます。しかし,慰謝料支払義務の根拠となる不法行為法上、「不倫」とは「不貞行為」と同義に考えられており、妻・夫以外の男女と肉体関係を持つことが必要です。
なので,例えば一緒に食事に行く程度では不貞行為があったとは認められず,少なくとも婚姻生活を破壊したと認められる必要があります。
また,裁判等では不貞行為の存在は慰謝料請求をする側が証明する必要がありますが立証できなければ,不貞行為の慰謝料請求が認められないことになります。

 

関連記事:慰謝料請求に必要な「証拠」とは

(2)相手が既婚者であると知らなかった場合

不倫による慰謝料請求は,法的には不法行為に基づく損害賠償請求として請求されることになります。そのため,これが成立する要件である①権利侵害,②故意・過失,③損害,④因果関係を請求側において主張・立証しなくてはなりません。
もし,不倫相手が既婚者と肉体関係を持った際に,既婚者とは知らなかった場合,不倫相手に上記②故意・過失が認められないため,そもそも成立要件を充たさず,慰謝料を請求できないということになります。
不倫相手としては,例えば既婚が「自分は独身である」と嘘をついていたメール・LINE等のスクリーンショットを示すことで,相手が既婚者であると知らなかったと主張して慰謝料請求が認められない方向にもっていくことができます。

(3)不貞行為の時点で既に婚姻関係が破綻していた場合

主に「不倫相手」への慰謝料請求は,不倫相手が当該夫婦の婚姻関係を破綻させたことを理由として認められます。そうだとすると,不貞行為の時点で婚姻関係が破綻していたのであれば,不貞行為によって破綻すべき対象がなくなるため,慰謝料請求が認められないことになります。
もっとも,不貞行為によるものではなくとも、夫婦の婚姻関係に影響を及ぼしたといいうる場合には、不貞行為がなくとも,慰謝料請求が認められる余地があります。

関連記事:婚姻関係破綻(夫婦関係破綻)と認められるには?

(4)不倫がバレてから3年以上経過している場合

先ほど説明した通り,慰謝料請求は不法行為に基づく損害賠償請求として請求されます。その消滅時効の期間は,「被害者…が損害及び加害者を知った時から三年間」,「不法行為の時から二十年」です。
そのため,不倫が配偶者にバレた時から3年間,肉体関係を持った時から20年間,いずれかの期間が経過した時点で慰謝料支払請求権の時効消滅を主張できます。

関連記事:慰謝料の時効とは

3 慰謝料の減額要素

慰謝料の減額要素
ここまでお話ししてきた慰謝料額の相場は,あくまで幅のあるものです。具体的な額を確定するための考慮要素はたくさん存在します。当然相場を大きく上回る慰謝料を請求された場合には,裁判まで争ったとしても相場程度の金額に落ち着くことから,この大きく上回る場合について減額交渉をすることが可能です。

ここでは,相場を大きく上回る場合以外の,慰謝料を減額する方向にはたらく要素をお話しします。

関連記事:弁護士に依頼してまでも減額すべき慰謝料請求

 

(1)不貞期間

不貞期間の長短は,慰謝料額の考慮要素になります。不貞期間が短かったり(半年程度),また,不貞の回数が少なかったりといった事情が存在すれば,慰謝料の減額事由になり得ます。

(2)不貞への積極性

不貞への関与が受動的だった場合など,不貞行為の悪質性が高くないと判断される可能性がありますから,慰謝料は減額される傾向にあるでしょう。
具体的には,関係を迫ったのは相手からだった,「夫婦関係はうまくいっていない」と聞かされていた,「離婚するから一緒になろう」と言われていた,等の事情が考えられます。

(3)反省・謝罪

不貞発覚後の事情も,慰謝料額を決める考慮要素になり得ます。不貞がバレた後,直接謝罪をしていたり,謝罪の手紙を作成している等の行動は,慰謝料減額の方向にはたらく事情だといえるでしょう。

(4)経済力

慰謝料を支払うだけの資力がないという場合,仮に裁判などになればその点は考慮してはもらえません。ただ,交渉段階であれば,「経済的に厳しく,今用意できる限度はこれだけだ」と誠意を持って対応すれば,減額に応じてくれるかもしれません。

(5)社会的制裁を受けたか

不貞が会社に知られたことによって,会社に居づらくなり,退職したという方も,中にはいらっしゃるのではないでしょうか。この場合,不貞によって仕事を失っているわけですから,「社会的制裁を受けている」と判断される可能性があります。
慰謝料は,精神的苦痛を補填するために支払うものですが,支払う側にとっては,「制裁」という意味合いも含まれます。そのため,既に十分な制裁を受けていると考えられる場合には,慰謝料の減額要素として考慮されると考えられます。

(6)求償権を放棄する

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不倫による慰謝料は,法的には既婚者と不倫相手の二人が共同して支払い義務を負うものです(不真正連帯債務)。そのため,一方が慰謝料の全額を支払った場合,他方に対して他方が負担すべき分の金額を求償できます。
不倫による慰謝料の支払いを示談・合意で取り決める際,この求償権をあらかじめ放棄することも併せて約束すると,これを考慮して慰謝料を少なくすることができます。
なぜなら,配偶者と既婚者が離婚しない場合,二人の家計は事実上同一である場合が殆どで,後になって求償されるよりも,求償権を放棄してこれを考慮して合意したほうが合理的だからです。
例えば,AとBが婚姻していてBがCと不倫し,A受けた精神的苦痛が150万円と算定され,BとCの責任割合が1:1だったとします。AがCに対して150万円を請求し,Cが満額を支払った場合,Cは不倫の当事者であるBに1/2の75万円を求償できるのです。

この場合,AとBが離婚せずに再構築を目指す場合,その家計は事実上同一である場合が殆どですので,A家としては求償後得られる金額は実質的に75万円ということになってしまいます。また,合意して慰謝料を支払った後に,A家が不倫相手のCからの求償に備えなければならないというのもAとしては気分のいいものではありません。
そこで、Cとの示談の際に,慰謝料額を減額する代わりに,あらかじめ求償権を放棄させることで今後一切関わらないとする方が合理的だとも考えられます。

このように,慰謝料の合意・示談の際に,相手の精神的損害を見積もったうえで,求償権の放棄を併せて考慮してもらい,見積もった精神的損害額の半分程度に減額してもらうことができます。

関連記事:「慰謝料請求の減額テクニックとは」

4 慰謝料支払いの合意が成立してしまったら…

慰謝料支払いの合意が成立してしまったら
既に相手と合意書を取り交わし,慰謝料支払いの約束をしてしまったが,その額があまりに高額だった,という場合,もはや減額は不可能なのでしょうか?
裁判所を通さない,手書きの合意書や誓約書であっても,お互いの意思が合致している以上合意としては有効です。相手が任意に応じてくれない限り,合意の内容を変更することはできません。

ただし,「1000万円を支払う」という合意が成立した等,あまりに法外な額の支払いの約束を取り交わしてしまったという場合には,その合意は無効だと判断される可能性があります。
また,騙されて気付いたら合意書にサインさせられていた,脅されて強制的に合意書にサインさせられた場合には,詐欺行為・強迫行為があったことを理由に,合意を取り消すことができる可能性があります。

原則として,当事者間の合意内容を変更することは困難ですが,これらの事情がある場合には,合意内容を変更することも可能だと思われます。そのため,既に合意書にサインをしてしまったという場合でも,諦めずに,弁護士に一度ご相談なさることをお勧めします。

関連記事:合意した慰謝料請求を拒否すると

 

5 慰謝料を減額したいと困っている方は,慰謝料被請求を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

不倫による慰謝料は一般に数十万円を超えて請求されることが多く,請求された当初はどうしたらよいか困惑すると思われます。また,どうしても請求側である配偶者の感情が入ってくるため,当事者同士の交渉は泥沼化しやすいことになります。ぜひ間に弁護士を入れて,スマートに減額交渉をしましょう。
弊所は,慰謝料被請求事件を多く取り扱い,実績を積み重ねてまいりました。慰謝料を減額したいと困っている方は,慰謝料被請求を多く取り扱う大阪市・難波(なんば)・堺市の弁護士法人法律事務所ロイヤーズ・ハイにご相談ください。

このコラムの監修者

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