夫が離婚届に署名してくれない!強制的に離婚する方法
「夫と離婚したいんだけど、夫が離婚届に署名をしてくれない。どうしたら離婚できるんだろう…」
そんな悩みを抱えておられる方は、おられませんか。
当事務所は、事務所設立以来、夫婦関係のお悩みについて、数多くのご相談にのってきました。当事務所のこれまでの経験を踏まえて、今回の記事では、夫が離婚応じてくれない場合に、夫と離婚するための方法を解説いたします。
本記事を読めば、離婚に応じてくれない夫と離婚するためにどのような方法をとれば離婚できるかがわかります。離婚をするために、何から始めていけば良いのか詳しく解説していきます。
目次
1 夫が離婚に応じてくれない場合に、強制的に離婚する方法
結論として、離婚したいのに夫が離婚に応じてくれない場合でも、強制的に離婚することは可能です。
離婚訴訟を起こして、裁判官が離婚を認める判決を下してくれれば、離婚することができます。
ただし、離婚訴訟では、どんな場合でも離婚が認められるわけではないため、注意が必要です。法律で定められた離婚原因がなければ、離婚を認めてもらうことができません。離婚原因は、その裏付けとなる証拠も必要となります。
2 別れさせるために必要な2つの準備
離婚に反対する夫と別れるためには、次の2つの準備をしておくことが大切です。
(1)別居
(2)証拠の収集
(1)別居
裁判では、浮気、身体的暴力があれば、それだけで離婚を認められることがあります。
しかし、実際には、夫による浮気、身体的暴力がないこともあります。夫による暴言、夫と性格と合わないといった理由から離婚したい方もおられるかと思います。浮気や身体的暴力があっても、根拠となる証拠がないこともあります。
その場合には、一定期間の別居期間があれば、離婚が認められる可能性が出てきます。
離婚訴訟で離婚が認められるためには、離婚原因が必要です。離婚原因には、「婚姻関係を継続し難い重大な事由」があります。長期間の別居は、婚姻関係を継続し難い重大な事由にあたります。
別居期間の目安は、法律には書かれていません。これまでの裁判例では、離婚の裁判が終わる時点で、別居して5年ぐらいが経っていれば、離婚が認められる可能性が高まります。
このように、離婚に反対する夫とは、別居を開始し、別居期間を重ねておくことが大切です。
離婚に反対する夫との離婚を望まれる方は、夫との別居の準備から始めることをおすすめいたします。
また、それだけでなく、実際に別居をしていれば、相手もあなたに対する執着や恋愛感情も失われていくことになるので、その意味でも、離婚するために別居をすることは有効であると言えます。
関連記事:家庭内別居は何年続くと離婚できる?財産分与はどうなる?
(2)証拠の収集
強制的に夫と別れるためには、証拠の収集も大切になります。
裁判官は、ご自身の言い分を言うだけでは離婚を認めてくれません。離婚を認めてもらうためには、主張を裏付ける証拠を裁判所に提出する必要があります。
例えば、浮気の場合には、メール、SNSのやり取り、画像などです。夫による暴力の場合は、診断書、写真を証拠となります。
このように、裁判で離婚を認めてもらうためには、証拠が必要であることから、あらかじめ証拠を収集しておくことをおすすめいたします。
夫と離婚する場合には、財産分与の話し合いもしていくことがあります。財産分与とは、離婚の際に、夫婦が一緒になって形成した財産をお互いに半分ずつわけることです。離婚の話し合いに際して、夫は、財産関係の資料を見せてくれるとは限りません。そこで、夫から財産分与をもらうためには、夫名義の財産関係に関する資料も収集しておくことが良いです。
夫と別居をしてしまうと、資料を集めることも難しくなってきます。そこで、離婚を考えておられる場合には、別居前から離婚原因や財産関係の資料を集めることが望ましいです。
もちろん、夫に資料を集めていることが発覚してしまうと、資料を隠されてしまいます。見つからないように、資料を収集するようにしてください。
関連記事:【完全版】旦那の浮気の証拠がつかめない?不倫の証拠14選を紹介
3 離婚するための3つの方法
離婚するための代表的な方法は、以下の3通りです。
(1)協議離婚 (2)調停離婚 (3)裁判離婚
(1)協議離婚
夫婦で話し合って、離婚することに合意した場合に、離婚することを①協議離婚といいます。この場合には、離婚届を作成する必要があります。協議離婚は、一番よく使われている離婚の方法です。
(2)調停離婚
(2)調停離婚は、裁判所で、調停委員を介して、当事者が話し合いをして、調停で離婚することをいいます。
調停は、当事者間で、直接の話し合いをすることが難しいような場合に、第三者である調停委員が当事者の間に入って、離婚の条件を調整する話し合いの場です。
協議離婚、調停離婚は、いずれも話し合いで離婚をする方法です。
協議離婚、調停離婚では、相手が離婚に応じなければ、離婚をすることはできません。
(3)裁判離婚
それでも離婚したいと思う場合に使う最終手段があります。
それは、離婚訴訟です。
離婚訴訟は、裁判官が法律で定められた離婚原因が認められるかを判断し、最終的な判決を下します。
(3)裁判離婚が認められた場合には、相手方が離婚に反対しても、強制的に離婚をすることができます。
離婚を希望しているのに、夫が離婚届にサインをしてくれない場合は、離婚訴訟の手続を行うことになります。
4 離婚調停、離婚訴訟のメリット・デメリット
(1)離婚調停のメリット
・柔軟な解決の可能性
離婚調停は、話し合いですので、当事者が合意さえできれば、柔軟な解決をすることができます。例えば、住宅ローンが残っている自宅がある場合に、自宅の名義変更、住宅ローンの支払義務者の変更なども協議することは可能です。もちろん、最終的には、銀行の承諾が必要にはなります。
当事者は、離婚以外にも、財産分与、親権、養育費など、他の条件もまとめて協議することができます。
・調停委員がいる安心感
離婚調停は、男女ペアの2名の調停委員が間に入って、調停委員に話をすることになります。調停委員は、聞いた内容を相手方に伝えます。調停委員は、相手方から聞いた内容も、伝えてくれます。
ご自身で、直接、相手に話をするわけではありません。
夫婦で直接話をした場合には、言いづらいこともあります。でも、調停委員が間に入ってくれるため、安心して、相手方への要望を伝えることができます。
(2)離婚調停のデメリット
・離婚はあくまで話し合い
離婚調停は、あくまで話し合いです。自分が離婚をしたいと思っていても、相手方が離婚に応じない頑な態度であれば、離婚することはできません。調停委員は、夫に、離婚を説得してくれるかもしれませんが、離婚を強制することまではできません。
(3)離婚訴訟のメリット
離婚訴訟のメリットは、強制的に離婚をすることができます。
離婚裁判で、裁判官が離婚を認める判決を書いてくれれば、離婚をすることができます。裁判離婚の場合には、相手方が離婚に反対をしていても、離婚をすることができます。
(4)離婚訴訟のデメリット
・離婚原因が必要になること
・事前に調停の手続を経ておく必要があること
・裁判が専門的であること
・離婚原因が必要になること
裁判官は、どんな場合でも離婚を認めてくれるわけではありません。離婚訴訟で、裁判官に離婚を認める判決を下してもらうためには、離婚原因が必要となります。
離婚原因は、民法770条で定められています。
1 配偶者に不貞な行為があったとき。 2 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 3 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。 4 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 5 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき |
この中でも、5の「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」が問題となる事例が最も多いです。
婚姻を継続し難い重大な事由があるといえるには、一定程度の別居期間を重ねていくことが大切になってきます。
離婚原因の裏付けとなる証拠は、別居前から事前に収集を始めておくことが大切になります。
・事前に調停の手続を経ておく必要があること
夫と離婚したいと思って、離婚訴訟を起こそうと思っても、いきなり裁判を起こすことはできません。離婚訴訟を起こす前に、離婚の調停を起こしておくことが必要になります。離婚の調停は、相手方が住んでいる裁判所の近くにある家庭裁判所に申立をすることになります。
・専門的であること
離婚訴訟は、裁判所での専門的な手続です。手続を円滑にすすめていくためには、法律知識が要求されます。裁判に出席したり、書面を提出したりと手間もかかります。弁護士に依頼をすれば、そのようなデメリットは避けることができます。
5 離婚で慰謝料が請求できる場合
慰謝料は、精神的な苦痛を被った場合に、その苦痛を慰めるために、支払われるお金です。
慰謝料を請求するには、相手方に離婚に至った原因があることが必要です。離婚をすれば、必ずもらえるものではありません。
慰謝料を請求することができる代表例は、夫が浮気をした場合、夫から暴力を振るわれた場合などです。夫からの浮気、暴力によって、離婚まで至ったのであれば、夫に慰謝料を請求することができる可能性があります。
ただし、単に性格の不一致や、お互いにどちらも悪かった場合には、慰謝料を請求することはできません。
関連記事:精神的苦痛(不倫・DV・モラハラなど)による慰謝料請求をするには?
関連記事:DVモラハラを原因とした離婚慰謝料請求~相場や請求方法を解説~
6 まとめ
今回の記事では、夫が離婚に応じてくれない場合に、離婚するための方法を紹介しました。
離婚に反対する夫と離婚をするためには、離婚訴訟を起こして、判決をもらえば離婚をすることができます。
そのためには、別居期間を重ねておくことが重要です。離婚原因を裏付ける証拠を事前に集めておくことも必要です。
離婚訴訟は、専門的な法律の知識も必要となります。離婚の手続をすすめていくうえで、ご不安な点がございましたら、弁護士にご相談ください。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。