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離婚後も「共同親権」になると出てくる問題点とは?共同親権のメリット・デメリットを解説

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離婚後も「共同親権」になると出てくる問題点とは?共同親権のメリット・デメリットを解説

2023年7月現在,日本では,子どもがいる夫婦が離婚すると父母のいずれか一方が親権者となり,単独親権制度が取り入れられています。

一方で,イタリアやドイツ,フランスなどの多くの国では父母の双方を親権者とする「共同親権」が認められています。

イギリスや南アフリカおいては,父母のいずれもが,それぞれの親権を単独で行使することができます。

アメリカのワシントンDCでも,離婚後に共同行使するものについて,条文上限定が加えられていません。

今日では,日本においても「共同親権」を認めようとする動きがあり,2023年4月に開かれた国の法制審議会の部会においては,「共同親権」を導入する方向で具体的な検討を進めることに合意しました。

今回は,そんな「共同親権」のメリット・デメリット,注意すべき問題点などについて解説します。

※本コラムは,2023年7月時点の法令および情報を基に作成しています。

参照:父母の離婚後の子の養育に関する海外法制調査結果の概要|法務省

目次

1 離婚後の「共同親権」を導入検討する背景とは?

離婚後の「共同親権」を導入検討する背景

政府の統計によると,2020年における婚姻件数は525,507組,離婚件数は193,253組で,およそ3組に1組が離婚し,約20万人の未成年の子どもが親の離婚を経験しています。

参考:令和4年度 離婚に関する統計の概況|厚生労働省

 

先進国では,離婚後も共同親権である国がほとんどで,離婚後も両親が愛情をもって子どもの成長,発育にかかわることが子どもの利益となり,二人の親を持つという子どもの権利を守るものとして,共同親権制度を採用しています。

一方,日本では,離婚後の親権について,単独親権制度を採用しています。

(離婚又は認知の場合の親権者)

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父を親権者と定めることができる。

4 父が認知した子に対する親権は、父母の協議で父を親権者と定めたときに限り、父が行う。

5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。

6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる。

引用:民法|e-Gov 法令検索

 

しかしながら,単独親権制度を定める民法819条は,明治時代に規定された法律です。

社会や家族の在り方など大きく変化しており,様々な問題を引き起こしていることから,「単独親権は社会の風潮に合わない」という指摘や批判を受け,「共同親権」の導入を検討するに至りました。

特に問題となっているのが,子どもの連れ去り問題です。

日本が単独親権制度であること,裁判所が親権決定の判断基準として「監護の継続性」を考慮していることから,子どもの連れ去りを誘発し,「子どもの連れ去り勝ち」を引き起こします。

日本国外での離婚の際に,日本人の親が子ども連れて日本に帰国し,外国にいる親が子供に会えなくなるという問題が生じ,諸外国から批判を受けていました。

現在,このような事例については,連れ去った子どもを原則として居住国へ返還することを義務づけるハーグ条約によって解決されるに至っていますが,日本においても「共同親権」の導入が検討されるきっかけの1つとなりました。

なお,日本国内における子どもの連れ去り問題については,いまだ解決に至っていません。

参考:ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)|外務省

 

2 離婚後の共同親権のメリット・デメリットとは?

離婚後の共同親権のメリット・デメリットとは?

共同親権といっても,現時点で具体的な内容が定まっているわけではありません。

そこで,以下では,一般的な共同親権のメリットとデメリットについてご紹介します。

 

(1)共同親権のメリット

①離婚後も両方の親が子どもと交流できる

②両親が協力して子どもを養育・教育できる

③離婚時の親権争いを避けることができる

④養育費の不払いが生じにくい

 

①離婚後も両方の親が子どもと交流できる

子どもにとって,両親と交流を持ち,両親から愛情を受けることは非常に大切なことです。

ところが,親権で両親が争った場合や離婚理由などによっては,離婚した両親同士の関係が非常に悪く,親権をもたない親と面会が行われないといったケースがあります。

面会交流の拒否については,親権が変更される理由になりかねませんが,実際そういったケースは珍しくありません。

共同親権であれば,両方の親に子どもを監護・養育する権利があるため,子どもと同居している親が一方的に面会を拒否することはできません。

自然な形で面会交流が実現し,子どもは制限なく両親から愛情を受けることができます。

ただし,現行法下でも,面会交流は正当な理由がなければ拒否することは難しく,争いになった場合でも,子どもに対するDVなどがない限りは,面会を認める方向での審判が出されることが多いです。

関連コラム:子どもの親権を取り戻したい!離婚後に親権を取り戻す方法

 

②両親が協力して子どもを養育や教育ができる

単独親権の場合は,両親のいずれかが働きながら育てる場合がほとんどであることから,一方の負担が大きくなります。

一方で,共同親権では,両親それぞれが養育する権利や教育の義務,責任があり,2人が協力して子育てをすることとなります。

離婚後も両親が協力して子育てできるため,一方の負担は軽減されるでしょう。

 

③離婚時の親権争いを避けることができる

単独親権制度である日本では,子どものいる夫婦が離婚する場合,激しい親権争いが発生することは珍しくありません。

親権争いによって,協議や調停にとどまらず,裁判手続きにまで至るケースもあります。

そのような場合,両親の間で確執が残り,離婚後の面会交流がスムーズに行われない,養育費の支払いがされないといった事態が生じかねません。

一方で,共同親権が認められれば,離婚時に親権を争うことなく,両親が協力して子どもを養育していくことが可能となります。

関連コラム:離婚時の親権はどうやって決まるの?具体的な決め方と流れ

 

④養育費の不払いが生じにくい

離婚後も親権者と子どもは共に生活することになりますが,親権を持たない親は子どもと接する機会が減少します。

子どもと会えないのに養育費を支払い続けるということになるため,養育費を支払うことをためらうようになるケースがあるのです。

共同親権であれば,子どもとの関わりが途絶えず,良好な関係を築けるため,養育費の不払いが生じにくくなります。

 

(2)共同親権のデメリット

①子どもが二重生活を強いられる

②遠くへ引っ越すことが難しくなる

③教育方針の違いから揉めやすい

 

①子どもが二重生活を強いられる

共同親権となった場合,子どもが頻繁に父母の家を行き来して生活する事態が生じる可能性があります。

実際,すでに共同親権制度を採用している国では,子どもが両親の家を頻繁に行き来しているケースがあり,子どもにとっては,大きな負担となっています。

 

②遠くへ引っ越すことが難しくなる

共同親権の場合,両親が互いに親権を有しているため,頻繁に会わせる必要があります。

子どもと一緒に住んでいる親が遠くへ引っ越し,一緒に住んでいない親が頻繁に子どもと会えなくなった場合,一緒に住んでいない親の親権を侵害することになります。

そのため,遠く離れた場所に住みたいと思っても,一緒に住んでいない親から離れたところに引っ越すことはできません。

 

③教育方針の違いから揉めやすい

離婚した夫婦は,何らかの理由に基づいて離婚しています。

離婚理由によっては,親同士の意見の対立が激しく,子どもの教育方針についても例外ではありません。

父親と母親の教育方針の対立によって,最終的に被害を受けるのは子どもです。

両親の教育方針がバラバラであると,子どもはどちらの話を聞いて良いのか分からず混乱してしまい,ストレスを感じることでしょう。

 

3 すでに離婚している人も共同親権の対象になる?

すでに離婚している人も共同親権の対象になる?

(1)具体的な内容が定まっていない 

日本において,共同親権制度が導入された場合,すでに離婚している人も対象になるのかという疑問が生じると思います。

このような疑問に対して,2023年7月時点でお答えすることは難しいです。

法律は将来に向かって適用され,過去の事実については適用されないという原則があります。

そうすると,すでに離婚しているケースについては,共同親権制度が適用されないということになります。

しかし,これはあくまで原則であって,実際に改正された内容によっては,すでに離婚しているケースについても共同親権制度が適用されるかもしれません。

2023年4月に開かれた法制審議会の部会においては,「共同親権」を導入する方向で具体的な検討を進めるに合意したに過ぎず,共同親権の内容や改正される時期などについては具体的に決まっていません。

そのため,現時点で断定してお答えすることができないのです。

 

(2)親権が認められたとしても一緒に住めるわけではない

仮に,共同親権制度が導入され,すでに離婚している人も対象となったとしても,別居している親が一緒に住めるようになるわけではない点に注意しなければなりません。

すでに共同親権が導入されている諸外国でも,子どもが離婚した両方の親と同居することはありません。

もっとも,自然な形で面会交流が行われており,子どもと一緒に過ごす時間は増える可能性はあります。

 

4 離婚後の共同親権制度の導入による問題点

離婚後の共同親権制度の導入による問題点

上記「2 共同親権のメリット・デメリットとは?」でお伝えした通り,共同親権にはメリットもあればデメリットもあります。

また,共同親権を導入することによって生じる問題点もあります。

 

(1)DVや虐待による支配が続く可能性がある

一方のDVや虐待などの理由で離婚した場合には,共同親権が悪用され,支配され続ける可能性があります。

DVや虐待についての支援は,少しずつ改善されていますが,共同親権制度が導入されると更なる問題が生じるでしょう。

共同親権制度を導入する前に,子どもの利益に適った法整備や公的機関による支援体制の構築・改善が必要となります。

 

(2)子どものためにならない可能性がある

 

様々な点において,両親の意見が合わず紛争となることが考えられます。

受験や学校でのトラブル,病気の治療など,両親の方針が違うと紛争となりかねません。

紛争となった場合の取り決めや,共同親権制度の内容次第では,結果的に子どものためにならないという可能性もあるでしょう。

そのため,共同親権制度の導入にあたっては,慎重な議論を重ねる必要があります。

 

5 まとめ

両親が離婚した場合,先進国の多くで「共同親権」が認められている一方,日本では未だ「単独親権」が採用されています。

社会や家族の在り方など大きく変化しており,様々な問題を引き起こしていることから,「単独親権は社会の風潮に合わない」という指摘や批判を受け,「共同親権」の導入を検討するに至りました。

子どもの連れ去り問題は,共同親権の導入を検討する1つの要因に挙げられます。

しかし,「共同親権」を導入することによって,すべての問題が解決されるわけではありません。

「共同親権」には上で述べたようなメリットやデメリットがあり,また日本において導入される場合の問題点や課題も指摘されています。

今後,慎重な議論の積み重ねによって問題点や課題を克服し,子どもの利益に適った共同親権制度の導入が期待されています。

このコラムの監修者

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