離婚裁判を徹底解説!流れや判決に納得できなかった場合の対処法
「協議で離婚できず,調停でも離婚できませんでした。もう離婚するには裁判を起こすしかないのですが,裁判の手続きや全体の流れがよく分からないので教えて欲しいです。また,判決に納得できなかった場合には,諦めるしかないのでしょうか。」
協議や調停で離婚の合意にいたらなかった場合には,離婚を希望する側が裁判を起こすことになります。
しかし,当事者が納得の上で合意にいたる協議や調停と異なり,裁判は,裁判所が判決という形で一方的に判断を下します。
そのため,当事者が判決に納得できない場合もあります。
判決に納得できなかった場合,どのような対処をとることができるのでしょうか。
今回は,離婚裁判の手続きと全体の流れ,判決に納得できなかった場合の対処法などについて解説します。
1 離婚裁判の手続きと全体の流れ
離婚裁判は,基本的に以下のような手続きと流れになります。
(1)訴状を提出する (2)第1回口頭弁論期日が決まる (3)被告が答弁書を提出する (4)口頭弁論が開かれる (5)証拠調べが行われる (6)判決が下される |
(1)訴状を提出する
まずは,離婚を希望する側が家庭裁判所に訴状を提出し,離婚裁判の訴えを提起します。
通常,訴状の提出先は,離婚訴訟の当事者である夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所です。
(2)第1回口頭弁論期日が決まる
裁判所が訴状を受け取ると,第1回口頭弁論の日を決めて,相手方に訴状と呼出状が送られます。
第1回目の口頭弁論期日は,訴状提出から約1ヶ月後に決まることが多いです。
(3)被告が答弁書を提出する
民事訴訟においては,訴える側を原告,訴えられる側を被告といいます。
被告は裁判所から指定された日までに,訴状に書かれている原告の主張に対しての反論を記載した「答弁書」を作成し,裁判所に提出します。
(4)口頭弁論が開かれる
指定された期日に,口頭弁論が開かれます。
口頭弁論では,まず争点が整理され,原告から争点となる事実に関する証拠が提出され,被告から原告の主張を否定する証拠が提出されることになります。
口頭弁論は,1回で終結し判決にいたることはほとんどなく,通常,第2回口頭弁論へと進みます。
第2回で終結しない場合には,第3回,第4回と進むことになります。
なお,第2回目以降は,裁判所の非公開の部屋で,裁判官と当事者のみで行われる弁論準備という手続きが行われることが多いです。
(5)証拠調べが行われる
原告と被告,それぞれの主張や証拠の提出がなされると,本人尋問や証人尋問といった証拠調べが行われます。
証拠調べに基づいて,裁判所は当事者が主張する事実を認定します。
(6)判決が下される
証拠調べが終わると口頭弁論が終結され,約1ヶ月~3ヶ月後に判決が出されます。
離婚を認める判決が下され,確定した場合,離婚が成立することになります。
原告は,判決が確定した日から起算して10日以内に,離婚届を本籍地か住所地の市区町村役場に提出しなければなりません。
なお,裁判中であれば,当事者はいつでも和解が可能であり,和解によって訴訟が終了することもあります。
その他,訴訟が終了する事由としては,訴えの取下げや請求の放棄・認諾などがあります。
関連記事:離婚手続きはどうすればいい?基本的な離婚手続きの流れと注意点について解説
2 離婚裁判の判決に納得できなかった場合の対処法
離婚裁判では,当事者が主張する事実や提出した証拠に基づいて,裁判所が一方的に判決をくだすことになります。
そのため,当事者の一方あるいは双方が納得いかない内容の判決となる場合もあります。
しかし,判決が下されても,ただちに結論が確定するというわけではありません。
判決に納得できなかった場合は,控訴の申立てによって,結論を確定させず争うことが可能です。
控訴の申立てとは,第一審の判決に納得がいかない場合に,上級の裁判所に対して新たな判決を求める申立てのことで,控訴状を第一審(不服のある判決をした裁判所)へ提出することによって申立てを行います。
控訴期間は,第一審判決正本が送達された日の翌日から起算して2週間以内で,原告・被告のいずれからも控訴がないまま控訴期間を経過すれば判決は確定します。
3 離婚裁判にかかる費用
(1)裁判を起こすための費用
裁判をご自身で行う場合には,およそ2万円が目安となるでしょう。
離婚裁判を起こすには,裁判所に収入印紙や郵便切手を納める必要があります。
① 収入印紙代
離婚のみを求める場合,裁判所に納める収入印紙代は13,000円となります。
ただし,離婚にともなって慰謝料を請求する場合には,13,000円以上の収入印紙代がかかります。
また,財産分与や養育費,面会交流なども求める場合には,1項目につき1,200円ずつの収入印紙代が加算されます。
② 郵便切手代
裁判所によって異なりますが,6,000円程度の郵便切手を裁判所に納める必要があります。
納める郵便切手の値段や種類の内訳については,訴えを提起しようと検討している裁判所のホームページや問い合わせにて,ご確認ください。
③ その他
その他,離婚裁判にかかる費用としては,戸籍謄本の取得代金450円や交通費などがあげられます。
(2)弁護士費用
離婚裁判における弁護士費用の相場は着手金で30万円から60万円万円前後です。成功報酬は,出した成果によって異なります。
通常は,裁判から依頼をされるのではなく,離婚の交渉や調停から依頼をされることになるでしょうから,その分,離婚裁判の着手金が値引きしてもらえることもあります。
調停でも弁護士に依頼しており,調停に引き続き同じ弁護士に依頼するといった場合には,調停の際の費用と合わせて70万円~110万円が一般的な相場です。
ただし,弁護士費用は,依頼内容によって変わってきます。
たとえば,離婚のみが問題となっていて,そのほかの慰謝料や財産分与,親権などがあまり問題にならないケースと,それらの点も問題になるケースとでは,弁護士費用は変わってきます。
また,離婚の代理人を依頼するのか,離婚協議書や公正証書のみを依頼するのかによっても弁護士費用は異なります。
また,実際の費用は法律事務所によっても異なってくるため,必ず依頼を検討している法律事務所に確認してください。
弁護士に離婚裁判を依頼するメリットについては,後述します。
関連記事:面会交流調停でかかる弁護士費用の相場は?費用を抑えるポイント
4 離婚裁判はどのくらいの期間で終わる?
(1)一般的にかかる期間
離婚裁判は,判決が確定するまで,一般的に8ヶ月~10ヶ月程度かかるでしょう。
もっとも,離婚裁判にかかる期間は,事案によって大きく異なります。
早いと半年ほどで終わりますし,長いと2~3年かかることもあります。
(2)離婚裁判が早く終わるケース
離婚裁判が早く終わるケースとしては,和解となる場合や争点が少ない場合があげられます。
裁判中,当事者はいつでも和解を行うことができるため,半年以内に終わるケースもあります。
また,争点が離婚原因のみといった場合や親権のみといった場合には,裁判所が判断しなければならない事項が絞られるため,裁判が比較的早く終わる可能性があります。
(3)離婚裁判が長くかかるケース
逆に,当事者が互いに譲らないため和解できず,争点が多いといったようなケースでは,離婚裁判が長くかかってしまう可能性があります。
たとえば,離婚原因である不貞行為の有無について争い,不貞行為を原因とする慰謝料請求の金額についても争い,財産分与についても争うといったような場合です。
争点が多いと,争点を明らかにするための証拠調べにどうしても時間がかかってしまいます。
また,財産などについて調査を行う必要がある場合には,調査を行う期間を要するため,その分どうしても裁判が長くなってしまいます。
その他,事実を明らかにする決定的な証拠がないような場合にも,裁判が長くかかってしまうでしょう。
5 弁護士に離婚裁判を依頼するメリット
離婚裁判は,弁護士に依頼せず,ご自身で行うことも可能です。
実際に弁護士に依頼せず,離婚裁判を起こす人もいますし,離婚裁判を起こされ対応する人もいます。
しかし,弁護士に依頼した場合には,以下のようなメリットがあります。
(1)裁判をスムーズに進めることができる
弁護士は,裁判に必要な手続きや流れを理解しており,事案に応じて何が必要か必要でないかを判断することが可能です。
そのため,離婚裁判がスムーズに進むでしょう。
離婚裁判がスムーズに進むことによって,結果として,裁判期間の短縮にもつながります。
(2)裁判で主張が通りやすくなる
弁護士は,法律のプロであり,いかなる事実の主張をすべきか,どのような証拠が必要かを適切に判断することができます。
そのため,裁判で主張が通りやすくなる可能性が上がり,裁判を有利に進めることができるでしょう。
(3)状況に応じた適切な判断ができる
弁護士であれば,相手からの反論をあらかじめ予想することができ,相手の反論に応じた適切な判断が可能です。
また,状況次第では判決よりも和解する方がご自身にとって良い場合があります。
弁護士であれば,どのタイミングで,どのような内容の和解をすべきかにつき,適切な判断が可能です。
(4)安心感が得られる
離婚裁判を弁護士に依頼すれば,安心感を得ることができます。
離婚裁判ともなれば,離婚手続きのみならず,そもそも離婚できるのか,財産はどうなってしまうのか,子どもと一緒に暮らすことはできるのかなど,不安の種は尽きません。
面倒で複雑な手続きを弁護士に任せれば,それだけでご自身の負担が軽減され,日常生活に専念することができます。
また,弁護士に相談することによって,今後の見通しがある程度分かり,対策を講じることが可能となるだけでも不安は和らぐでしょう。
(5)時間や手間が省ける
離婚裁判となると,書類作成や事実の主張,証拠の提出などをしなければなりません。
また,先に述べたように,裁判が長くかかってしまうケースもあります。
長い間,裁判手続を行うとなると,一般の方にとっては心労面で大きな負担となってしまいます。
また,裁判は平日にしか行われませんので,平日に仕事をしている人は裁判の対応は難しいかもしれません。
弁護士に依頼すると,弁護士がすべての手続きを代わって行いますので,裁判にかかる時間や手間が省けます。
結果として,心労面での負担が軽減されるでしょう。
6 まとめ
今回は,離婚裁判の手続きと全体の流れ,判決に納得できなかった場合の対処法などについて解説しました。
協議や調停で離婚できなかった場合,離婚を希望する側は,離婚裁判を起こすことになります。
訴状の提出から判決にいたるまで,原告と被告は,主張と反論を繰り返し,必要に応じて証拠を提出します。
裁判所は,当事者の主張・立証に基づいて,一方的に判決を下すことになるため,当事者が納得のいかない場合もあるでしょう。
判決に納得いかない場合には,控訴を申し立てて,上級裁判所に新たな判決を求めることが可能です。
もっとも,控訴が認められると,それだけ裁判は長くかかることになります。
裁判が長くかかるケースは控訴が認められる場合に限ったことではなく,和解できない,争点が多い,といった場合にも裁判は長くかかってしまいます。
裁判が長くなると,その分,当事者にとって負担は大きくなるでしょう。
もし,どうして良いか分からず,ご不安な様でしたら,一度弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。