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離婚協議中の子の連れ去りは違法?親権争いに与える影響とは

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離婚協議中の子の連れ去りは違法?親権争いに与える影響とは

日本では,「共同親権」が認められておらず,夫婦が離婚する際には,必ず子どもの親権者を決める必要があるため,しばしば親権争いが生じます。

その際,子どもの意思に関係なく,一方の親が勝手に子どもを連れ去って別居してしまうことがあります。

今回は,そんな子どもの連れ去りは違法なのか,親権争いに与える影響,連れ去られた場合の対処法などについて解説します。

関連記事:離婚時の親権はどうやって決まるの?具体的な決め方と流れ

 

目次

 

1 勝手に子どもを連れ去るのは違法?

勝手に子どもを連れ去るのは違法?

結論からいうと,子どもの連れ去りは,違法となる場合もあれば,そうでない場合もあります

子どもの連れ去りとは,夫婦の一方が,相手の同意なく,一方的に子どもを連れて別居してしまうことをいいます。

相手の同意なく,子どもを連れ出す行為は,相手の親権を侵害する行為であると同時に,子どもの自由を侵害する行為でもあるため,刑法224条の未成年者略取等罪に該当し,違法となる可能性があります。

しかし,子どもの連れ去りに,正当な理由がある場合には,違法とならない場合もあります。

(未成年者略取及び誘拐)

第二百二十四条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

引用:刑法|e-Gov 法令検索

 

 

2 違法となるケース,違法とならないケース

違法となるケース、違法とならないケース

(1)違法となるケース

以下のようなケースでは,違法となる可能性があります。

① 親権を争っている時に連れ去る

② 離婚後に元配偶者の家へ行って連れ去る

③ 保育園や学校などの帰りに連れ去る

④ 同意のうえで連れだしたが帰さない

 

① 親権を争っている時に連れ去る

親権を争っている時に連れ去る行為は,違法となる可能性があります。

協議や調停などの話し合いで親権者が決まらなかった場合には,家庭裁判所による審判や判決で親権者が決まります。

家庭裁判所は,現在の生活環境が大きく変化することは,子どもに不安や混乱を与え,子どもにとって不利益になると考えているため,親権を決める際に,監護の実績・継続性を判断要素の1つとしています。

そこで,子どもを連れ去って別居にいたれば,監護の実績を作れることできると考え,親権を争っている時に,一方の親が子どもを連れ去るというケースはよくあります。

しかし,子どもの意思に関係なく連れ去る行為は,子どもに不安や混乱を与え,子どもの精神を不安定にするだけでなく,後述するように,親権争いにおいて不利な影響を与える可能性もあります。

そのため,親権を争っている時に連れ去る行為は,適切な方法とはいえません。

 

② 離婚後に相手の家へ行って連れ去る

離婚時に,親権者が相手に決まった後,相手の家へ行って連れ去ることがあります。

しかし,このような行為も違法となる可能性があります。

また,子どもを連れ去る目的で相手の家の敷地内に立ち入る行為は,刑法130条の住居侵入罪に問われる可能性もあるため,決して相手の同意なく,立ち入らないようにしましょう。

 

③ 保育園や学校などの帰りに連れ去る

保育園や学校などの帰りに,待ち伏したりするなどして,連れ去るといった場合も違法となる可能性があります。

保育園や学校の先生の承諾のもと,連れ出したとしても,そのことで適法となるわけではありませんので注意してください。

 

④ 同意のうえで連れだしたが帰さない

相手の同意があれば,連れだした行為自体は違法となりません。

しかし,事前に決められた日時に帰らない,長期にわたって連れ出すといった場合には,違法となる可能性があります。

連れだしが適法だからといって,その後に帰さないことも適法となるわけではない点に注意してください。

 

(2)違法とならないケース

子どもの連れ去り自体は,未成年者略取等罪に該当するとしても,正当な理由がある場合には,違法とならないケースが存在します

以下のようなケースでは,違法とならない可能性があります。

① 相手が暴力を振るっていた

② 子どもの生命や身体が脅かされていた

③ 夫婦間で合意があった

 

① 相手が暴力を振るっていた

子どもが相手から暴力を受けている場合,子どもを保護する目的で連れ去る行為は,直ちに違法といえません。

また,連れ去った親自身が暴力を受けていた場合も,子どもに被害が及ぶ可能性があるため,連れ去る行為は違法とならない可能性があります。

 

② 子どもの生命や身体が脅かされていた

病気や災害などで,子どもの生命や身体に危険が及んでいる場合には,子どもを連れ去る行為が違法とならない可能性があります。

子どもの生命や身体に危険が及んでいる場合,子どもを連れ去る行為は,子どもの利益を守るための行為といえます。

 

③ 夫婦間で合意があった

夫婦間で,子どもを連れだすことにつき,合意がある場合は,違法となりません。

ただし,話し合いによって,子どもを連れだす期間に制限を設けた場合には,その期間を超えた時点から違法となる可能性があります。

後々トラブルにならないよう,夫婦間の合意を示す証拠として,文書やメッセージなどを残しておくようにしましょう。

 

3 子どもの連れ去りが親権争いに与える影響

子どもの連れ去りが親権争いに与える影響

過去,家庭裁判所は,親権を定めるにあたり,子どもを連れ去る行為をあまり問題視しておらず,監護の継続性や監護実績などを重要視して判断する傾向にありました。

しかし,ハーグ条約を締結した平成25年頃から,子どもの連れ去り別居を問題視し,別居にいたる経緯などを重要視するようになりました。

そのため,違法な子どもの連れ去りは,親権を定めるにあたって不利な影響を与える可能性があります

親権争いは、「連れ去り勝ち」と聞いたことがあるかもしれませんが,現在においては,必ずしもそうではありません。

参考:ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)|外務省

4 違法にならず子どもを連れだす方法とは?

違法にならず子どもを連れ出す方法とは?

相手の承諾なく,子どもを連れ去る行為は,刑事罰に問われる可能性があるほか,子どもの環境を大きく変え,子どもに悪影響を与える可能性もあるため,避けるべきです。

子どもの利益のためにも,法的な手続きに従って,子どもを連れだしましょう。

違法にならず子どもを連れだす方法としては,以下のような方法が挙げられます。

 

(1)相手と合意する

まずは,配偶者との話し合いによって,合意をしてから子どもを連れて別居することを考えましょう。

相手が納得する条件などを提示すれば,合意にいたる可能性があります。

 

(2)調停を申し立てる(子の引渡し調停,子の監護者指定調停) 

申立ては,相手方の住所地又は当事者の合意で定める家庭裁判所に対して行います。

子どもの養育状況や家庭環境,子の利益の観点などから,第三者である調停委員が事情を聴取し,必要に応じて資料を提出してもらうなどして,子どもの意向も含めて取り決めができるよう,話し合いが行われます。

調停で合意にいたらなかった場合には,調停不成立となり,自動的に審判手続きに移行することになります,

審判手続きでは,裁判官が一切の事情を考慮して,父と母のいずれが監護者として適切かを判断し,一方的に決定を下すこととなります。

審判で子どもを引き渡すよう決定が下されたにもかかわらず,相手が子どもを引き渡さない場合には,強制執行が可能となります。

調停では,何が有利な事情となるのか判断して,適切に手続きを進める必要があるため,申立てを検討する際には,一度弁護士に相談することをお勧めします。

参考:子の引渡し調停|裁判所

参考:子の監護者の指定調停|裁判所

5 離婚協議中に子どもを連れ去られた場合の対処法

離婚協議中に子どもを連れ去られた場合の対処法

子どもが連れ去られた場合,自力で連れ戻そうと考える方も多いかと思います。

しかし,離婚協議中である場合には,相手にも親権があり,自力で連れ戻すことは違法と判断されかねません。

子どもが連れ去られてしまった場合も,法的な手続きに従って対処すべきであり,具体的な対処法としては,以下のような手続きが挙げられます。

 

(1)調停を申し立てる(子の引渡し調停,子の監護者指定調停)

子どもを連れだす方法と同様,子の引渡し調停と子の監護者指定調停を申し立てます。

調停で合意にいたらない場合には,自動的に審判となり,審判で申立てが認められた場合にもかかわらず,相手が子どもを引き渡さない場合には,強制執行が可能となります。

 

(2)保全処分を申し立てる

子どもに差し迫った危険がある場合など,現状を放置していたのでは調停・審判による紛争の解決を図ることが困難になる場合には,審判の申立てのほかに保全処分の申立てをすることが可能です。

家庭裁判所は,申立人に子どもを仮に引き渡すように命ずる処分(保全処分)についての判断を行い,裁判所が認めれば、仮に子の引渡しを命ずることができます。

 

(3)強制執行を申し立てる

家庭裁判所が子どもの引渡しを決定したにもかかわらず,相手が子どもを引き渡さないといった場合には,家庭裁判所に強制執行を申し立てることが可能となります。

強制執行には,「間接強制」と「直接強制」があります。

間接強制とは,子どもを引き渡さない場合に制裁金を課すことで,決定に従わない相手に心理的圧迫を加え,自発的な引渡しを促すというものです。

強制執行とは,執行官が直接に相手の監護を解き,子どもの引渡しを強制的に行わせるというものです。

まずは,間接強制を申し立て,相手に対して自発的な子どもの引渡しを求め,それでも子どもを引き渡さない場合には,直接強制を申し立てることになります。

参考:子の引渡しの強制執行|裁判所

 

(4)人身保護請求を行う

人身保護請求とは、拘束が子どもの利益に反していることが明白であるときに、拘束されている子供を取り戻す手続きです。

審判によって、子供の引渡しが認められたにかかわらず、相手方が引渡しを履行せず、強制執行も実現しなければ、人身保護請求することができます。

ただし,請求が認められるための要件は厳しくなっています。

また,請求する場合には,原則として,弁護士を代理人としなければならないため,弁護士に依頼する必要があります。

第二条 法律上正当な手続によらないで、身体の自由を拘束されている者は、この法律の定めるところにより、その救済を請求することができる。

② 何人も被拘束者のために、前項の請求をすることができる。

引用:人身保護法|e-Gov 法令検索

関連記事:子どもの親権を取り戻したい!離婚後に親権を取り戻す方法

6 まとめ

今回は,子どもの連れ去りは違法なのか,親権争いに与える影響,連れ去られた場合の対処法などについて解説しました。

共同親権が認められていない日本においては,離婚の際に親権を争うことがしばしば起き,子どもの連れ去り問題が後を絶ちません。

子どもの連れ去りは,違法となる場合もあれば,そうでない場合もあります。

過去には,違法な子どもの連れ去りによって監護の実績を作った場合,親権争いが有利になることがありました。

しかし,現在において,違法な子どもの連れ去りは,親権争いにおいて不利に扱われる可能性もあります。

また,子どもの意思に関係なく,一方的に連れ去る行為は,子どもに不安や混乱を与え,重大な不利益を及ぼしかねません。

そのため,違法な子どもの連れ去りは避け,法律に従って対処するようにしましょう。

もし,どうすればいいか分からないという場合には,一度,法律の専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

このコラムの監修者

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