「好きな人ができたから離婚したい」と言われたら|慰謝料請求できる場合とは?
浮気とは程遠い、真面目な夫と大恋愛の末の結婚。
子どもも生まれ、ローンではあるが一軒家も購入し、周りからは「おしどり夫婦」と言われ、はや数年。
順風満帆な結婚生活を送っているものと信じて疑わなかった妻。
しかし突然夫から、「好きな人ができたから離婚したい」と言われました。
このような夫の突然の告白に対し、妻として、どうすればいいのでしょうか。
「まだ夫のことが好きだから離婚は絶対にしたくない」
「私に愛情がない夫とは一刻も早く離婚したい」
「こんな事を言ってくる夫に愛情はないが、子どものために離婚はしたくない」
「こんな夫と離婚するのはいいが、できるだけ多くお金を払わせて離婚したい」
などなど、どのような感情になるかは人それぞれだと思います。
そこで、今回は、夫から「好きな人ができたから離婚したい」と言われた妻としての対応について、弁護士の立場からお話していきたいと思います。
目次
1 「好きな人ができたから離婚したい」と言われたらまず考えるべきこと
(1) 「好きな人ができた」理由が不貞関係にあるのかどうか確認する
夫から、「好きな人ができたから離婚したい」と言われた場合、まずあなたは何を思うでしょうか。
「『好きな人』ってどういうこと?どういう人?」と、あなたはまず思うのではないでしょうか。
この「好きな人」というのは、既に夫と不貞関係にある人であるのか、そうではなくただ夫が一方的に「好き」になっているだけのことであるのか、といった点が重要です。
もし、この「好きな人」というのが、既に夫と不貞関係にある女性であれば、この夫は、いわゆる「有責配偶者」と評価されます。
この有責配偶者というのは、離婚原因(夫婦関係を破綻させた原因)を作った責任のある配偶者のことをいいます。この有責配偶者が自ら離婚をしたいと他方配偶者に求め、これに対して他方配偶者が離婚に反対した場合、有責配偶者が裁判によって離婚を請求したとしても、この離婚請求は原則認められません。
ですので、妻が夫からの離婚請求に応じない限り、夫としては離婚ができないという結果になります。
別居期間が長期間に渡る場合など、例外的に有責配偶者からの離婚請求が認められる場合もあります。詳しくは次のコラムをご覧ください。
「有責配偶者からの離婚請求は拒否できる?請求された場合の対処法」
(2) 「婚姻費用」を請求する
もし、あなたが、「まだ夫のことが好きだから離婚は絶対にしたくない」、「こんな事を言ってくる夫に愛情はないが、子どものために離婚はしたくない」と考えているのであれば、あなたが離婚を拒否すれば、仮に夫が裁判によって離婚を請求してきたとしても、原則その請求は認められないので、あなたの希望は叶うことになるでしょう。もっとも、夫との別居期間が長くなれば長くなるほど、夫からの離婚請求が認められる可能性が高くなっていきます。
仮にこのような状態で夫が一方的に自宅を出て、別居に至ってしまった場合はどうしましょう。
この場合、妻は夫に対して、「婚姻費用」を請求すべきです。「婚姻費用」とは、婚姻中の夫婦とその子の生活費のことです。離婚後の養育費は、子を養うための費用を言いますが、「婚姻費用」は子だけでなく配偶者の生活費も含みますので、養育費よりも高額になります。
もし、話し合いによっても夫が婚姻費用を払わない場合は、調停を申し立てるなど裁判手続きを通じて、夫に対して婚姻費用を払わせることも可能です。
このように、有責配偶者からの離婚請求は原則として認められませんが、これに妻が同意するのであれば離婚は成立します。もしあなたが、「私に愛情がない夫とは一刻も早く離婚したい」と、離婚の成立を第一に考えるのであれば、離婚届を役所に提出すればいいのです。
ですが突然、夫から「好きな人ができたから離婚したい」と言われた場合、多くの人は、慰謝料等のお金をできるだけ多く夫に払わせて離婚したいと考えるのではないでしょうか。
2 「好きな人ができたから離婚したい」と言われて慰謝料請求できる場合
もし、あなたが、「こんな夫と離婚するのはいいが、できるだけ多くお金を払わせて離婚したい」と考えるのであれば、不貞行為をした夫やその不貞相手に対して、慰謝料請求をすることが可能となります。
ただし、この場合は不貞行為の事実や不貞相手の存在を証明することができる具体的な証拠が必要となります。
(1) 「好きな人ができた」理由が不貞行為にあると認めている場合
「好きな人ができた」と告白してきた夫が、その女性との不貞行為の事実も認めているのであれば、夫に対する慰謝料請求に関しては、証拠は必要ありません。
夫は有責配偶者にあたる以上、夫が裁判手続きにより離婚を求めてきたとしてもその請求は原則認められません。ですので、夫からすれば、妻であるあなたが離婚に応じない限り、離婚を成立させることはできないのです。一刻も早くその女性と一緒になりたいと考えている夫は、慰謝料を支払えば離婚に応じるという態度を妻が示しているのであれば、その妻が求める慰謝料を支払ってでも早く離婚を成立させたいと考えるでしょう。また、これが別居中であって、婚姻費用の月額が調停等により定められている場合であればより効果的です。
このように、「好きな人ができた」と告白してきた夫が不貞行為自体も認めていながら(もしくは不貞行為を証明できる証拠が揃っている)、その夫から離婚を求められた場合は、「有責配偶者からの離婚請求は原則認められない」ことを交渉のカードとして、夫にできるだけ多くの慰謝料を払わせたうえで離婚することができる可能性が高くなります。
(2) 「好きな人ができた」理由が不貞行為とは断定できず、証拠もない場合
問題は、夫から「好きな人ができたから離婚したい」と言われたものの、夫は不貞行為自体は認めず、またその不貞行為を証明する証拠もなかった場合です。
この場合でも、夫はその「好きな人」と一緒になるために、できるだけ早く離婚したいと考えるでしょう。仮に、夫が不貞行為を認めず、その証拠がなかったとしても、妻側に民法770条1項が挙げる離婚原因や既に夫婦関係が破綻しているといった事情がない限り、裁判において夫の離婚請求が認められる可能性は低いでしょう。
ですので、できるだけ早く離婚したいと夫が考えているのであれば、慰謝料という名目ではなくとも、財産分与や解決金という名目の金銭の支払を夫が応じる可能性があります。
もっとも、既に別居しているという事実があれば、有責配偶者からの離婚請求が認められる期間よりも短い別居期間で、離婚が認められてしまう可能性はあります。
このように、夫の不貞行為を証明する証拠がなかったとしても諦める必要はありません。夫との交渉次第によっては、妻であるあなたが求める金銭を夫に支払わせることも可能かもしれません。
関連記事:夫(嫁)から一方的に離婚を切り出されたらどう対応する?慰謝料は請求できるのか?
3 離婚したいと言われて困ったら弁護士にご相談を
いかがでしたでしょうか。
今回は、突然夫から、「好きな人ができたから離婚したい」と言われた場合の妻としての対応について、弁護士の立場からお話させて頂きました。
永遠の愛を誓ったはずの夫から突然、「好きな人ができたので離婚したい」と言われた場合、怒りと悲しみ、自分や子どもの将来への不安で頭がいっぱいになってしまうこともあると思います。
この離婚の求めに応じるか、応じないか、応じるとしても慰謝料を支払わせたいと考えるか、その考えは人ぞれぞれですので、何が正解ということはありません。
ですが、もし、夫からの突然の離婚の求め自体に悩み、婚姻費用や養育費、親権者の指定や慰謝料請求についてのお悩みがあれば、まずは法津の専門家である弁護士へ相談されることをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。