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養育費を踏み倒すとどうなる?問われる罪と支払えない場合の対処法

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養育費を踏み倒すとどうなる?問われる罪と強制執行などの手続きについて

離婚の際に、元配偶者(元夫、元妻)に対して養育費の支払いを約束したとしても、将来に渡って支払いが継続できるとは限りません。

もしも経済状態の変動によって養育費を踏み倒すことになった場合、どのような罰則(ペナルティ)があるのでしょうか?

また、元配偶者や子どもに対する養育費が支払えなくなってしまった場合に、どうすればよいのでしょうか?

このコラムでは、養育費を踏み倒した場合の罰則や強制執行などの手続きについて説明し、支払えない場合の対処法を弁護士が詳しく解説します。

関連記事:【対処法とリスク】慰謝料を踏み倒して払わないとどうなる?慰謝料請求から逃げられる?

 

目次

1 養育費を踏み倒すとどんな罰則があるのか、4つのリスク

養育費を踏み倒すとどんな罰則があるのか

もちろん、子の福祉の観点から養育費は適正に支払われるべきなのですが、経済状況の悪化や急な出費の必要から、養育費がどうしても支払えないという場合もあるかと思います。

約束した養育費を支払えないと、何か罰則が科されないだろうかとご不安に思う方もいるでしょう。

しかしながら、養育費を支払わないこと自体について、法的に刑事罰のような罰則が科されているかというとそういうわけではありません。

法律上は養育費の未払いは元夫婦間、親子間の民事的な問題として扱われることとなります。

民事上の問題としては、合意した養育費を支払えなかった場合には次のような4つのリスクが考えられます。

(1)裁判や調停等の法的手続きを取られてしまう

(2)強制執行によって給与・預金、不動産等の権利・資産を差し押さえられてしまう

(3)遅延損害金の請求を受けてしまう

(4)財産開示の手続きを受けてしまう

 

それぞれ具体的に見ていくと次のような不利益があります。

 

(1)裁判や調停等の法的手続きを取られてしまう

裁判(訴訟)であれば、地方裁判所、家事調停・審判であれば家庭裁判所で手続きが行われます。

合意した養育費の支払いがなされない場合や、養育費の合意がない場合に養育費については決定する場合等、養育費を請求する側としては、話し合いでの解決ができない場合には、民事裁判や家事調停・審判といった裁判所を通じた手続きを行うこととなります。

こうした手続きにおいては、裁判所から被請求者(養育費を請求される側)に裁判所への呼び出しの連絡があります。この呼び出しに応じない場合でも強制的に連れていかれるということはないのですが、手続きに参加しない場合には、ご自身に不利な決定がなされ、その決定に基づいて相手方が強制的な手段によって権利を実現するという可能性が高まります。

したがって、このような裁判所を通じた手続きが開始した場合には、ご自身に不利益な決定が出ないようにできる限りの対応をする必要があります。

しかしながら、裁判・調停の手続きは平日の日中に行われ、通常でも半年から1年は継続することも多いので、ご自身での対応には大きな負担があります。

また、手続きの中でどのような主張をすればご自身にとって有益であるかは、法律の知識を有さない方には難しい問題かもしれません。

 

(2)強制執行によって給与・預金、不動産等の権利・資産を差し押さえられてしまう

この点については下記2で詳しく述べたいと思いますが、養育費の支払いをせずに強制執行の手続きを取られると、予期しない時機にご自身の財産が利用できなくなり相手方の支払いに充てられるというリスクがあります。

 

(3)遅延損害金の請求を受けてしまう

養育費は金銭的な請求権ですので、この未払いについては、少なくとも法定利率である年3分(年利3%)の遅延損害金が生じていきます(民法404条2項)。

養育費の金額にもよりますが、未払いの状態が長期間継続することで、遅延損害金が膨らみ、最終的に大きな負担をしなくてはならなくなるリスクがあります。

 

(4)財産開示の手続きを受けてしまう

強制執行の手続きの一環として、財産開示の手続きが法律上認められています(民事執行法197条以下)。

この財産開示手続きについては、裁判所に呼び出されて財産についての情報を開示することが求められます。

この手続きについては近年の法改正において、罰則が強化され、財産開示の期日に不出頭や虚偽を述べたものに対しては「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科されるようになりました(民事執行法213条1項5号及び6号)。

 

2 養育費を踏み倒すと強制執行などの手続きはどのように行われるのか

養育費を踏み倒すと強制執行などの手続きはどのように行われるのか

約束した養育費を支払えないという場合には、まずは強制執行のリスクについて考えなくてはいけません。

強制執行は、強制的に権利を実現させる手段であり、例えば、預金口座を差し押さえられたり、会社に対する給与の一部を差し押さえられたりといったことが想定されます。

請求する側は、このような財産・権利の差し押さえによって、未払いの養育費を強制的に回収することを考えます。

ただし、約束した養育費を支払わなかったからと言って、直ちに強制執行がされるとは限りません。

 

(1)債務名義の存在と範囲を公的に証明した書類(公正証書など)の作成

強制執行を行うにはまずは、「債務名義」という強制執行を行う権利の存在と範囲を公的に証明した書類が必要となります。少し、難しい表現となりましたが、例えば、養育費についてですと、誰が誰に対して、いつからいつまで、どれくらいの金額を支払うのかということが決められた公的な書類が必要ということになります。

債務名義の代表例としては、裁判所の判決書・和解調書、家庭裁判所の調停調書・審判調書及び公証役場で作成される公正証書などが挙げられます。

配偶者(夫婦)の間で、養育費についての合意(取り決め)をするということも多くあるのですが、書面での合意をしていたとしても、裁判所や公証役場等の公的な機関が作成したものではないので、直ちにこの合意の書面で強制執行をするということはできません。

もちろん、配偶者(夫婦)間の合意が無効であるということではありませんが、その合意に基づいて強制執行をするには、民事裁判や家庭裁判所での調停等の手続きを経て、債務名義となる書類を取得する必要があります。

債務名義を取得した場合には、裁判所に対して強制執行をすることが可能になります。

基本的に債務名義については、被請求者(請求される側)にも知らされるものですので、裁判所からの通知を受け取って確認していれば、相手方が債務名義を取得したことは容易に知ることができます。

 

(2)財産や給与の一部を差し押さえる強制執行手続き

しかしながら、相手方がご自身の財産や収入についてどの程度把握しているかはわからない場合もあり、いつどの財産・権利に対して強制執行されるかを予期することは困難です。

債務名義を取得した相手方が、貴方の財産(銀行口座、自動車、不動産)や勤務先を把握していれは、財産を差し押さえたり、会社に対して給与の一部を差し押さえたりといった強制執行の手続きを行うことができます。財産を差し押さえられると、対象となった財産を自由に処分できなくなったり、強制的な手続きでお金に換えられたりして、未払いの養育費の支払いに充てられる恐れがあります。

勤務先の会社に対して、給与の一部(養育費ですと給与の2分の1までという制限があります)を差し押さえられると、会社は差し押さえられた部分については、通常通りの給与の支払いができず、相手方の請求に応じて相手方に支払いをしないといけない状態となります。会社にとって通常の給与の支給手続きとは異なる対応を取らなければならなくなるため、会社との関係で事実上の影響は大きいといえます。

 

3 養育費が支払えない場合はどうすればよいのか

養育費が払えない場合はどうすればよいのか

以上に見てきたようなリスクを考えたときには、養育費の未払いは避けるべきであるのですが、どうしても養育費の支払いの見込みが立たないという場合もありうると思います。

そのような場合の対処について解説していきたいと思います。

 

(1)当事者同士で話し合う

まずは、合意での解決を試みることが大事です。

養育費については、当事者同士での話合いで決めることが可能ですので、すでに養育費について合意している場合でも、まずはご自身の状況について相手方にお伝えして、金額や支払い時期を調整することについて協議してみてください。

一度合意している場合には相手方の反応も厳しいものにはなると思われますので、支払えない事情については説得的にお話いただくことが重要です。

相手方が説得に応じた場合には、そのような話し合いがあったことについては、書面等の形に残しておくことが望ましいです。もちろん、書面に残す以上はご自身にとって不利な資料ともなりえますので、約束する内容については慎重な検討が必要です。

相手方との話し合いがうまくいかない場合や合意内容について不安がある場合には、法律専門家へのご相談もご検討ください。

 

(2)家庭裁判所で調停手続きを行う

次に、家庭裁判所の調停等の手続きを利用することが考えられます。

一度、当事者同士で養育費について合意した場合でも、合意したときから収入・経済状況が大きく変動した場合には、家庭裁判所の調停手続きを行うことで、現時点の収入に基づいた養育費を算定することができる可能性があります。

養育費については、裁判所の公表する算定表があります。

東京家庭裁判所HP:養育費・婚姻費用算定表

 

 こちらに基づいて基本的な事例については、相当な養育費の金額を算定することができます。

なお、離婚した夫婦の双方が子を養育する場合や、元夫婦のいずれかが再婚した場合等、簡易な算定表によっては計算が難しい場合もありますので、こうした場合については法律専門家にご相談してみてください。

調停等の対応については、平日の日中の対応も必要になりますので、ご自身での対応が難しい場合には、法律専門家に代理人として手続きへの出頭を依頼することも可能です。

 

4 まとめ

養育費を支払えない場合でも刑事的な罰則まではありませんが、民事的な裁判・調停などの手続への対応をしなくてはならないリスク、強制執行を受けるリスク、遅延損害金の請求を受けるリスクがあります。

強制執行が行われると預金や給与などの資産・権利が差し押さえられ、強制的に未払いの養育費の支払いに充てられるおそれがあります。

このようなリスクが生じる前に、養育費に関する問題は早期に解決しておくことが重要です。

相手方との協議による解決や調停等の裁判手続きを利用した解決等、相談者の実情に応じて適切な手段は異なりますので、まずは法律専門家にご相談ください。

このコラムの監修者

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