不倫相手が妊娠!どう対処すればいい?中絶・出産どちらも慰謝料請求される?させた夫、知った妻の対応をそれぞれ解説
目次
1 はじめに
もし,あなたの不倫相手に子どもができた場合,あるいはあなたの夫の不倫相手に子どもができた場合,不倫相手との間だけでなく,あなたの家庭内でも様々な問題が生じます。
以下では,不倫相手に子どもができた場合の対応方法と法律問題について,妊娠させた夫とそれを知った妻,不倫による妻の妊娠を知った夫の順で解説していきます。
2 不倫相手が妊娠したらとるべき対応(妊娠させた夫の場合)
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(1)事実確認をする
不倫相手から妊娠したことを告げられたとしても,妊娠を確認していない場合や不倫相手の勘違いの場合もあります。まず,不倫相手と一緒に病院に行き,妊娠の事実を確認する必要があります。なお,妊娠の事実が確認できるのは妊娠5週目以降となります。
(2)不倫相手と子どもについて話し合う
不倫相手が妊娠をした場合,放置せず不倫相手と話し合う必要があります。放置した場合,不倫相手が家庭や職場に押しかけ様々な問題が生じる可能性がありますし,不倫相手が妊娠の事実を話す可能性もあるからです。
この話し合いでは,不倫相手の精神的な負担を解消,軽減するように努めながら話し合いをする必要があります。
また,不倫相手と話し合う場合,中絶が可能な妊娠22週目までに結論を出す必要があります。
(3)不倫相手と自分の関係について話し合う
①不倫相手が中絶を選択した場合
不倫相手が中絶を選択した場合には,不倫関係が終了する場合が多いと考えられます。
そして,中絶には,中絶費用が発生します。法律上は,二人で折半することが多いですが,女性には中絶手術で体に負担が生じるので,男性側が全額負担する方が妥当であると考えられます。
②不倫相手が出産を選択した場合
不倫相手が出産を選択した場合,奥さんと離婚して不倫相手と結婚すること,不倫関係を継続すること,不倫関係を終了させることが想定されます。
不倫相手が妊娠したことを理由にあなたに結婚を求めてきた場合は,様々な問題が生じるのを覚悟しなければなりません。
この場合,不倫相手が奥さんの方に連絡したり,奥さんに連絡するよう要求したりする結果,奥さんは不倫の事実や不倫相手の妊娠の事実を知ることになります。これにより,離婚・養育費・慰謝料などの問題が現実化していきます。
そのため,あなたは自分の家族と話し合い,その結果を不倫相手に伝える必要があります。
(4)不倫相手の妊娠の事実を妻に打ち明ける
一般に,不倫相手が妊娠した場合,夫の方はこの事実を妻に隠したいと思う傾向にあります。
しかしながら,不倫相手が,子どもを産みたいと言ったり,妻と別れてほしいと求めている場合には,妻に対し不倫の事実と妊娠の事実を打ち明け,謝罪し,妻の意見を聞くことも検討した方がよいでしょう。
(5)不倫相手に子どもができた場合の法律問題
不倫相手に子どもができた場合,次のような様々な法律問題が生じます。
①不倫相手からの慰謝料請求
まず,中絶をした場合,肉体関係も中絶も同意のうえであれば慰謝料は原則として発生しません。しかし,中絶は,費用もさることながら,女性にとって精神的に非常にショックな出来事ですし,術後の感染症による不妊の可能性など母体への身体的負担も大きなものです。そのため,妊娠が発覚してからのあなたの対応が悪ければ,あなたは,不倫相手から,不倫相手の経済的,精神的,身体的負担を軽減,解消するように努める義務の違反を理由とする慰謝料請求がされる場合があります。
一方,子どもを産む場合には,慰謝料は生じません。もっとも,子どもを産むかどうか関係のない場面で,精神的な苦痛を与えた場合には,慰謝料を請求される可能性があります。
②不倫相手が出産した場合の子どもの認知・養育費
不倫相手が子どもを出産した場合,非嫡出子(婚姻によらない子)となります。このままでは,法的にはその子とあなたは全く関係のない状態となるため,不倫相手が認知を要求すると考えられます。
認知する場合,認知により,子どもの養育費を支払う義務が生じます。また,法的に父と子どもの関係が生じるので,認知をしたあなたが死亡した場合に,妻との間の子どもだけでなく,不倫相手との間の子どもが法定相続人となります。
認知をするかどうかは本人の意思によるものですが,不倫相手は,認知請求をすることができます。また,認知請求に応じない場合は,DNA鑑定等により強制認知を求められる可能性もあります。
上記の通り認知により法的に父子関係が生じるため,その事実が戸籍に記載されることになります。戸籍の記載を奥さんに隠し通しても,いずれは発覚する可能性を常に秘めている状態ですので,遅かれ早かれ不倫の事実を奥さんに打ち明ける必要が生じます。
また,認知をした場合,あなたは法的には支払い義務を負うことになります。その内容は協議によって決まりますが,そもそも養育費を払うのか,子どもが何歳になるまで払うのか,いくら払うのかをしっかり話し合う必要があります。
仮に,様々な支払いによって財産状況がひっ迫し,破産しようと思った場合であっても,慰謝料支払義務は一部を除き(破産法第253条1項2号)免責されますが,養育費支払義務は免責されません(破産法第253条1項4号)ので,いくら払うのか十分に話し合う必要があります。
養育費の支払いを一方的に拒否すると,調停を申し立てられたり,裁判を提起されたりするリスクがあるので注意しましょう。
なお,支払うことになる養育費ですが,厚生労働省の調査による平均額は以下の表のとおりです。
全体平均 | 子の人数別の平均 | |||
1人 | 2人 | 3人 | ||
母子世帯 | 43,707円 | 38,207円 | 48,090円 | 57,739円 |
父子世帯 | 32,550円 | 29,375円 | 32,222円 | 42,000円 |
※平成28年全国ひとり親世帯等調査(ひとり親世帯の平成27年の年間収入)より
関連記事:離婚慰謝料はどう決まる?子供の有無で変わる金額と条件
関連記事:養育費を踏み倒すとどうなる?問われる罪と支払えない場合の対処法
③妻からの離婚請求
奥さんは,あなたの不貞行為の事実と不倫相手との間に子どもが生まれたことを知り,離婚を求める場合があると考えられます。
この場合,話し合いにより離婚が成立すれば離婚請求の問題は終了しますが,あなたが離婚請求に応じずに,裁判となった場合には,裁判で離婚の請求が認められる可能性が高いです。
また,離婚に伴ってあなたは,奥さんから様々な金銭の請求がされることが想定されます。
奥さんは,あなたに対し,慰謝料を請求することが考えられます。相場としては,数十万円から500万円程度です。
慰謝料請求以外には,婚姻費用や財産分与,年金分割の請求がされることも考えられます。
婚姻費用とは,夫婦の別居期間中の収入が多い方から少ない方に渡す生活費をいい,あなたの年収が奥さんよりも高い場合には,別居開始から離婚までの婚姻費用を請求されることになります。
財産分与とは,婚姻中に築いた共有財産を分け合うことをいいますが,奥さんが専業主婦の場合には折半することが多いです。
年金分割とは,婚姻期間中に拠出した年金を夫婦で按分する制度をいい,これも奥さんから請求される場合があります。
さらに,金銭面以外では,あなたと奥さんとの間に子どもがいる場合には,子どもの親権をいずれかにしなければなりません。話し合いで親権が決まる場合もありますが,双方が親権を譲らない場合,調停や裁判で親権者が決められることになります。
④妻から不倫相手への慰謝料請求
奥さんが不倫相手に対し慰謝料を請求することが想定されます。
まず,奥さんがあなたと離婚する場合には,通常,あなたと不倫相手の両方を相手に慰謝料請求することが考えられます。
一方,離婚しない場合には,家計が事実上同一の場合が多いため,あなたに慰謝料請求するのは無意味であるので不倫相手にのみ慰謝料請求をすると考えられます。
関連記事:不倫相手から慰謝料請求を回収できない場合の不倫配偶者への請求
3 不倫相手が妊娠したらとるべき対応(夫が妊娠させたことを知った妻の場合)
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(1)事実確認をする
稀なケースではありますが,不倫相手が,あなたの家庭を崩壊させて旦那さんと添い遂げるために,架空の妊娠を主張する場合もあります。そのため,やはりまずは事実確認をしましょう。旦那さんに病院で相手の妊娠を確認したのか確認し,していなければすぐに確認させることが重要です。
(2)夫と不倫相手の子供について話し合う
上でご説明しました通り,仮に不倫相手が子どもを出産するとなれば旦那さんに認知の問題,養育費の問題が生じてきます。これは次の話題とも重複しますが,旦那さんとの再構築を選んだ場合,家計が事実上同一である以上,旦那さんの養育費の支払いはあなたやあなたの子どもの生活にも関わってきます。
また,離婚する場合であっても,旦那さんとの間に子供がいる場合,あなたも養育費の支払いを旦那さんから受けることができます。旦那さんが不倫相手へ養育費を支払う場合,あなたとあなたの子どもへの養育費の支払い能力に影響することも考えられます。
参考:裁判所|平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について
ただし,不倫相手が中絶するか,出産するかは,究極的には旦那さんと不倫相手の問題で,あなたが中絶を強要することはできません。旦那さんとどうするのかしっかりと話し合う必要があります。
(3)夫と自分の関係について話し合う
旦那さんの不倫が発覚したのですから,このまま婚姻関係を継続して再構築を目指すか,離婚して新たな人生をスタートするか話し合う必要があります。
特に,不倫相手が出産するとなった場合,不倫相手とその子どもへの養育費への支払いがあなたやあなたの子どもの生活へ影響を与えることは先ほど説明いたしました通りで,この話し合いをするうえで十分に考慮しなくてはなりません。
(4)夫の不倫相手に子供ができた場合の法律問題
①夫への離婚・慰謝料請求
あなたが旦那さんと離婚したいといっても,旦那さんはあくまであなたとの婚姻関係の継続を望んでくることも十分考えられます。しかし,旦那さんの不倫相手が妊娠している以上,旦那さんは不貞行為をしたと考えられるため,裁判で旦那さんとの離婚を請求することができます。離婚する際には,財産分与や婚姻費用,慰謝料,お子さんがいれば,親権,養育費といった問題が生じます。
また,不倫相手が妊娠した場合には,旦那さんの行為が悪質であるとして,高額の慰謝料を旦那さんへ請求することもできます。
②不倫相手への慰謝料請求
不倫相手が,旦那さんが既婚者であることを知りながら肉体関係を持っていた場合,あなたは不倫相手に対して慰謝料請求ができます。相場は上で説明いたしました通り,数十万円~500万円で,旦那さんと離婚する場合には高額の慰謝料を請求することができます。
もっとも,旦那さんと離婚せずに再構築を目指す場合,不倫相手が求償権を行使して旦那さんへ求償することも考えられます。この場合,高額の慰謝料を得ることができても,旦那さんと家計が事実上同一のため,実質的に慰謝料が半減してしまう恐れもあります。そのため,不倫相手と交渉する際は,慰謝料の支払いだけでなく,求償権の放棄も併せて合意してもらえるように動く必要があります。
4 不倫相手が妊娠したらとるべき対応(妻の妊娠を知った夫の場合)
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(1)嫡出推定を覆す
婚姻期間中に妊娠し,又は婚姻後200日経過後婚姻終了後300日以内に生まれた子については,法律上あなたの子どもとして推定されます(嫡出推定)(民法第772条)。
そのため,あなたにはその子どもを扶養する義務が生じ,奥さんと離婚した場合でも養育費を支払わなければなりません。また,法定相続人にもなるため,あなたが死亡した場合にその子どもにあなたの財産が相続されることになります。
そこで,奥さんの不倫と妊娠が発覚した場合,奥さんが出産した後,生まれた子どもについてDNA鑑定等であなたの子どもかどうか確認しなくてはなりません。
自分の子どもでないことがわかった場合,子の出生を知って1年以内に(民法第777条),嫡出否認の調停(民法第774条)を申し立てましょう。調停が不調に終わった場合には,裁判所に嫡出否認の訴えを提起することになります。
なお,「子の出生を知った時」を「否認すべき子の出生を知った時」と解釈して期間制限を緩和した審判例(東京家審S42.2.18家月19巻9号76頁)もありますが,いずれにしても出生後はDNA鑑定等で自分の子か急いで確認し,嫡出否認を試みる必要があります。
子の出生を知って1年が経過していた場合,親子関係不存在確認の訴えを提起することも考えられますが,この訴えは一般に「推定されない嫡出子」や「推定の及ばない嫡出子」の場合のみ提起できる訴えです。つまり,例えば「授かり婚」のように婚姻前に子どもを妊娠して婚姻後200日経過以内に生まれた場合(推定されない嫡出子)や,夫が長期の単身赴任中に妻が妊娠出産したような明らかに夫の子でない場合(推定の及ばない嫡出子)にしか訴えの提起が認められないのです。
DNA鑑定によって父子の血縁関係が否定された場合にも「推定の及ばない嫡出子」であると考える余地もありますが,残念ながら,最高裁はこれを否定し外観上夫による妊娠が不可能であることが明らかな場合に限って「推定の及ばない嫡出子」とする立場を採用しています(最判S44.5.29民集23巻6号1064頁)。そのため,一般的な「妻が不倫して不倫相手の子を妊娠してしまった場合」に,子の出生を知ってから1年を経過すると,親子関係を否定することは事実上不可能になってしまいます。
不倫した奥さんが子どもを産んだ場合には,できる限り速やかに自分の子か否か確認し,違うのであれば直ちに嫡出否認をしなくてはなりません。
また,これは不倫した奥さんが出産した場合であり,中絶を選んだ場合には問題となりません。
(2)その他の対応
奥さんと再構築するか・離婚するか,奥さんと不倫相手に慰謝料請求するかという問題は上の説明と同様です。
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ここまで説明させていただきました通り,不倫相手に子どもができた場合にとらなければならない対応は多いです。また,不倫相手に子どもができたときは様々な法律問題が生じることになります。そのため,ご自身の判断だけで動かれると取り返しのつかない不利益を被ることになる可能性もあるので,専門家である弁護士に相談されることを強くお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。