離婚手続きはどうすればいい?基本的な離婚手続きの流れと注意点について解説
「離婚したいがどのように進めればいいのか分からない」
そのような悩みをお持ちの方は少なくありません。
離婚について,家族や友人など周りに相談するのは気が引けるという方もいらっしゃると思います。
夫婦の状況や離婚にいたる理由は,夫婦によって様々であり,適切な離婚の進め方は夫婦によって異なるでしょう。
今回は,基本的な離婚手続きの流れや注意点について解説します。
1 離婚手続きの種類
離婚には,大きく分けて,以下の3種類があります。
(1)協議離婚 (2)調停離婚 (3)裁判離婚 |
(1)協議離婚
夫婦が話し合って離婚の合意をし,離婚届を役所に提出して離婚する手続きです。
離婚全体の約9割が協議離婚です。
「早く離婚できる」,「費用がかからない」,「柔軟に離婚条件を決めることができる」などのメリットが挙げられます。
(協議上の離婚) 第七百六十三条 夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。 |
(2)調停離婚
家庭裁判所を通じて,調停委員の仲介のもと,離婚の話し合いを行う手続きです。
協議離婚との違いは,第三者が話し合いの仲介をするという点にあります。
夫婦で話し合ったが合意できない,一方が話し合いに応じないなどといった場合には,調停を利用することで話し合いがスムーズに行われ,合意にいたるかもしれません。
合意にいたれば調停が成立となり,婚姻関係が解消されることになります。
関連記事:協議離婚と調停離婚の違いって何?メリット・デメリットと選ぶポイント
原則として,いきなり離婚裁判を提起することはできず,まずは離婚調停を申し立てなければならないという決まりがあります。
このことを調停前置主義といいます。
(調停前置主義) 第二百五十七条 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。 (略)
(調停事項等) 第二百四十四条 家庭裁判所は、人事に関する訴訟事件その他家庭に関する事件(別表第一に掲げる事項についての事件を除く。)について調停を行うほか、この編の定めるところにより審判をする。
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(3)裁判離婚
調停離婚が成立しなかった場合には,離婚裁判を起こすことになります。
裁判離婚の場合は,法律で定められた離婚理由(法定離婚事由)が必要となります。
法定離婚事由が認められない限り,裁判で離婚することは認められません。
(裁判上の離婚) 第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。 一 配偶者に不貞な行為があったとき。 二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。 三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。 四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。 五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
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2 協議離婚の流れと注意点
協議離婚は,主に以下のような流れで進めていきます。
(1)離婚したいと伝える (2)離婚条件について話し合う (3)「離婚協議書」を作成する (4)離婚協議書を「公正証書」にする (5)離婚届を役所に提出する |
(1)離婚したいと伝える
まずは,「離婚したい」と伝えることから始まります。
ただし,離婚しようと決意したら直ちに離婚を切り出すのではなく,あらかじめ準備をしておきましょう。
たとえば,離婚の理由が配偶者による不倫やDVである場合には,複数の証拠を集めておきましょう。
証拠がないと言い逃れされてしまう可能性があります。
一度離婚を切り出すと,相手が離婚の理由を認めない場合,証拠を集めることが難しくなってしまいます。
また,離婚にともない財産分与や慰謝料の請求をしようと検討している場合には,証拠を集めておくとともに,夫婦の共有財産を確認し,相手の財産を把握しておきましょう。
さらに,どのような離婚条件を希望するかも考えておくと,話し合いがスムーズに進みます。
関連記事:不貞行為の証拠を出すタイミングは?夫または妻が不倫を認めない場合の対処法
(2)離婚条件について話し合う
離婚したいと伝えたとしても,相手が離婚条件に納得しなければ離婚の合意にはいたりません。
あらかじめ考えた希望条件を伝え,離婚条件について話し合いましょう。
たとえば,慰謝料や財産分与,年金分割,親権,養育費,面会交流などといった離婚条件が挙げられます。
(3)「離婚協議書」を作成する
離婚や離婚条件について合意にいたった場合には,離婚後に言った・言わないの争いを回避するため,「離婚協議書」を作成しておきましょう。
役所に離婚届を提出する前に,離婚協議書を作成することをお勧めします。
とにかく離婚したいという気持ちから先に離婚届を提出してしまうと,相手が話し合いに応じなくなる可能性があるためです。
離婚協議書の書き方や内容などについて,詳しく知りたい方は,以下のコラムをご参照ください。
関連記事:離婚協議書か公正証書どちらを選ぶべき?書き方完全ガイド
(4)離婚協議書を「公正証書」にする
「公正証書」とは,公証役場において,夫婦が話し合いにより合意した内容を公証人が聴き取り,これを書面にした公文書のことです。
すでに作成した離婚協議書を公正証書とすることも可能です。
公証人は、元々裁判官や検察官などの経験を積んだ法律の専門家であり,公平・中立な立場から法的に有効な書面を作成してくれます。
作成された公正証書は,公証役場に保管されるため偽造されるおそれがなく,紛失する心配もありません。
特に,離婚時に慰謝料や養育費などのお金に関する取り決めを行った場合には,公正証書にしておくことをお勧めします。
強制執行認諾文言のある公正証書であれば,相手が慰謝料や養育費などを支払わない場合に,ただちに強制執行を申し立てることが可能となります。
(5)離婚届を役所に提出する
離婚届を役所に提出し,受理されれば離婚成立となります。
上でも述べましたが,離婚の合意にいたったからといってすぐに離婚届を提出せず,離婚条件について合意し,離婚協議書を作成してから離婚届を提出するようにしてください。
3 調停離婚の流れと注意点
話し合いで合意にいたらない,相手が話し合いに応じてくれない,といった場合には,離婚調停を申し立てることになります。
離婚調停は,基本的に以下のような流れで進みます。
(1)家庭裁判所に申し立てる (2)調停の期日が決まる (3)調停が開催される (4)調停が成立あるいは不成立となる |
下記の裁判所ウェブサイトでも,10分ほどの動画で調停の流れが分かりやすく解説されていますので,ご参考にしてください。
(1)家庭裁判所に申し立てる
相手の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所に申し立てます。
管轄する裁判所を調べたい方は,下記裁判所ホームページをご覧ください。
関連記事:離婚調停は自分でできる?弁護士に依頼しないメリット・デメリット
(2)調停の期日が決まる
調停の申し立てると,1~2週間ほどで調停の期日が決まります。
指定される日は,申し立てから1~2ヶ月ほど先の平日です。
(3)調停が開催される
裁判官1名と調停委員2名のもとで,調停が開催されます。
実際の調停の進行は2名の調停委員に任せられており,夫婦が交互に呼ばれて調停室に入り,離婚についての話し合いを行います。
1回の調停にかかる時間は2時間ほどで,状況により長引く場合もあります。
初回の調停のみで調停がまとまるケースは少なく,第2回期日以降の調停は,基本的に1ヶ月~2ヶ月程度の間隔をあけて開催され,3ヶ月~4ヶ月,場合によっては半年以上の期間を要します。
関連記事:離婚調停で聞かれること7選!事前準備すべき3つのポイント
(4)調停が成立あるいは不成立となる
調停で合意にいたれば調停が成立し,合意にいたらない場合には調停が不成立となります。
なお,調停の終了としては,調停成立・不成立の他に,調停の取下げや調停をしない措置,当事者死亡による終了などがあります。
① 調停が成立した場合
調停が成立した場合には,夫婦が合意した内容を記載した「調停調書」が作成され,夫婦関係が解消されることになります。
調停調書は,確定判決又は確定した審判と同一の効力を有することとされ,調停調書に記載された内容を守らない場合には、強制執行手続きで強制的に財産を差し押さえることができます。
また,調停成立後10日以内に,本籍地または所在地の役所に調停調書謄本と離婚届を提出しなければなりません。
調停調書謄本は,調停成立後に裁判所へ申請すれば交付してもらえます。
10日を過ぎると,5万円以下の過料が課される可能性があるため注意してください。
第百三十七条 正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、五万円以下の過料に処する。 |
年金分割の割合を決めた場合には,年金事務所,各共済組合又は私学事業団のいずれかにおいて,年金分割の請求手続を行う必要があります。
② 調停が不成立となった場合
調停で合意にいたらなかった場合には,調停が不成立となり,裁判所による「審判」に移行するか,離婚裁判を起こすか,現状のままとするか選択することになります。
関連記事:離婚調停が不成立になった後、再度調停をすることは可能?
ア.審判に移行するケース
「審判」とは,裁判官が一切の事情を考慮したうえで,結論を決める手続きになります。
離婚調停の場合は,自動的に審判に移行することはありません。
しかし,「調停に代わる審判」という制度が利用されることがあり,離婚するのが相当と判断された場合に,一切の事情を考慮して離婚の審判がくだされる場合があります。
もっとも,当事者から異議が出れば効力が否定されることから,審判によって離婚となるケースは多くありません。
イ.離婚裁判を起こすケース
調停が不成立となった場合,離婚を希望する側は,裁判によって離婚を求めることになります。
詳しくは,後述する「4 裁判離婚の流れと注意点」をご覧ください。
ウ.現状のままとなるケース
調停が不成立となり,審判でも離婚が決まらず,裁判も起こさない場合には,現状のまま婚姻状態が継続することになります。
法定離婚事由がない場合には,裁判を起こしても離婚が認められません。
そのため,有責配偶者が離婚を求めており,相手が離婚を拒否しているといった場合には,現状のままとなるケースが多いです。
有責配偶者とは、不倫などにより自ら婚姻関係を破綻させた側の配偶者のことをいいます。
もっとも,この段階で別居している場合には,別居状態が続くことになり,別居期間が長くなれば,「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」として,離婚が認められるようになる可能性がでてきます。
4 裁判離婚の流れと注意点
調停で合意にいたらず調停が不成立となった場合,離婚を希望する側は,離婚の裁判を提起することになります。
裁判離婚は,基本的に以下のような流れになります。
(1)訴状を提出する (2)第1回口頭弁論期日が決まる (3)被告が答弁書を提出する (4)口頭弁論が開かれる (5)証拠調べが行われる (6)判決が下される |
(1)訴状を提出する
まずは,家庭裁判所に訴状を提出し,離婚裁判の訴えを提起します。
通常,訴状の提出先は,離婚訴訟の当事者である夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所です。
訴えに必要な書類と費用は,以下の通りです。
・訴状(2部)
・夫婦それぞれの戸籍謄本及びそのコピー
・年金分割のための情報通知書
・源泉徴収票や預金通帳などの証拠とする書類のコピー
・収入印紙(請求する内容によって異なるため,訴状を提出する家庭裁判所へ確認してください)
・郵便切手(家庭裁判所によって異なるため,提出先の家庭裁判所へ確認してください)
(2)第1回口頭弁論期日が決まる
裁判所が訴状を受け取ると,第1回目口頭弁論の日を決めて,相手方に訴状と呼出状が送られます。
第1回目の口頭弁論期日は,訴状提出から約一ヶ月後に決まることが多いです。
(3)被告が答弁書を提出する
訴えられた相手方を被告といい,被告は指定された日までに,訴状に書かれている主張に対しての反論を記載した「答弁書」を裁判所に提出することとなります。
(4)口頭弁論が開かれる
口頭弁論はおよそ1ヶ月に1回のペースで開かれ,以下のような流れで審理が進みます。
① 争点を整理する ② 原告から証拠が提出される ③ 被告から証拠が提出される |
口頭弁論は,1回で判決にいたることはほとんどなく,基本的に,第2回口頭弁論へと進みます。
また,第2回目以降は,裁判所の非公開の部屋で,裁判官と当事者のみで行われる弁論準備という手続きが行われることが多いです。
(5)証拠調べが行われる
原告と被告それぞれの主張や証拠の提出がなされると,証拠調べが行われます。
たとえば,本人尋問や証人尋問などがあげられます。
証拠調べに基づいて,裁判所は事実を認定します。
(6)判決が下される
証拠調べが終わると口頭弁論が終結され,約1ヶ月~3ヶ月後に判決が出されます。
なお,判決が出されるまで,当事者はいつでも和解が可能であり,和解によって訴訟が終了することもあります。
① 裁判で離婚が成立した場合
離婚を認める判決(認容判決)が出された場合,判決書が送達された日から2週間以内に被告が控訴しなければ,判決が確定することになります。
控訴とは,第一審の判決に対して不服がある場合に,上級裁判所へ新たな判決を求める不服申立てのことです。
判決が確定すれば,離婚が成立することになります。
調停の場合と同様に,確定した日から10日以内に,原告が離婚届を役所に提出しなければなりません。
② 裁判で離婚が認められなかった場合
裁判で離婚が認められない判決(棄却判決)が出され,納得いかない場合には,控訴を申し立てることになります。
控訴の申立ては,不服のある判決をした裁判所へ控訴状を提出することによって行われます。
5 まとめ
今回は,離婚手続きの流れや注意点について解説しました。
基本的に,離婚手続きは,協議,調停,裁判といった順に進められることになります。
手続きの段階によって注意する点は異なり,離婚したい場合には,感情的にならず慎重に進める必要があります。
しかし,配偶者と直接話し合ったり,親権などの離婚条件について争いが生じたりすると,どうしても感情的になってしまい,当事者で解決することは困難になってしまうケースが多くあります。
また,調停では,第三者である調停委員が仲介してくれますが,調停委員は公平・中立な立場から助言したり,解決案を示してくれるのであって,決して有利に交渉を進めてくれるというわけではありません。
裁判においては,裁判所に法律で定められた離婚事由を適切な主張と必要な証拠に基づいて認めてもらう必要があり,専門的な知識が無ければ,認められるはずの訴えも認められなくなるといった可能性があります。
もし,どうして良いか分からず,ご不安な様でしたら,一度弁護士に相談することをお勧めします。
このコラムの監修者
田中 今日太弁護士(大阪弁護士会所属)弁護士ドットコム登録
弁護士法人 法律事務所 ロイヤーズ・ハイの代表弁護士を務める。 大手法律事務所で管理職を経験し、また100人以上の方の浮気、不貞、男女問題に関する事件を解決。 お客様を精一杯サポートさせていただくことをモットーとし、 豊富な経験と実績で、最善策の見通しを即座に迅速かつ適切な弁護活動を行う。