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産後クライシスが原因で離婚!妻から慰謝料を請求されるケースとは

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「先日,妻から離婚を求められました。理由は,私が育児に非協力的で,この先一緒にやっていける自信がないからとのことでした。確かに,子どもが生まれてから育児は妻に任せきりで,家をしばらく空けたりすることもあり,夫婦仲は悪化していました。私としては,離婚を受け入れようと思っているのですが,慰謝料を請求されるケースもあるのでしょうか。」

産後における環境の変化から,夫婦仲が急激に悪くなることがあります。

このことを「産後クライシス」といいます。

産後クライシスが長期に及び,結果として,離婚する夫婦は少なくありません。

今回は,産後クライシスが原因で離婚する際に,慰謝料請求されるケースや注意点などについて解説します。

関連記事:マタニティーブルーが原因で離婚や慰謝料請求はできるのか?親権や養育費についても解説

 

 

1 なぜ、産後クライシスになると離婚する夫婦が多いのか

一度,配偶者に不信感や違和感を抱くと,払拭・解消することは容易ではありません。

産後は,環境の変化などによって夫婦関係が悪化しやすく,配偶者に不信感や違和感を抱きがちです。

夫婦が互いにコミュニケーションをとって理解を示し,協力し合わなければ,夫婦仲は悪化の一途をたどってしまいます。

そのため,産後クライシスになると,離婚する夫婦が多いと考えられます。

 

(1)産後クライシスとは

出産後,急激に夫婦仲が悪くなることです。

特に,子どもが生まれた直後は,子ども中心の生活へと変化し,それまでの生活環境が大きく変わります。

このタイミングで夫婦が協力できないと,一気に夫婦の気持ちが冷めてしまい,夫婦仲が悪化の一途をたどって,離婚問題へと発展してしまうのです。

以下のような症状がある場合は,産後クライシスを疑いましょう。

□1.些細なことで相手にイライラしてしまう

□2.夫婦の会話が減った

□3.一緒にいるのが辛く感じるようになった

□4.口喧嘩が絶えない

□5.スキンシップをとることが無くなった

□6.お互いの愛情が冷めたように感じる

□7.家事や育児に非協力的である

□8.相手が子どもにかかりきりで,不満を感じる

 

(2)産後クライシスの原因

産後クライシスの原因として,以下のような事柄が挙げられます。

① 生活環境の変化

② 妻の産後に起こるホルモンバランスの変化

③ 育児に対する夫婦の温度差

④ 夫婦のコミュニケーション不足

 

① 生活環境の変化

子どもが生まれた直後は,子ども中心の生活へと変化し,それまでの生活環境が大きく変わります。

どうしても妻の負担が大きなものとなりがちで,夫の協力によって,妻の負担を少しでも軽くすることが重要となります。

 

② 妻の産後に起こるホルモンバランスの変化

出産直後の女性は,女性ホルモンの分泌が急激に減少し,情緒不安定な状態が続くことがあります。

情緒不安定な状態が続くと,軽度のうつ症状であるマタニティーブルーや,重度のうつ症状をともなう産後うつとなる可能性もあります。

これらが原因となって産後クライシスになってしまうことがあり,夫の理解が求められます。

 

③ 育児に対する夫婦の温度差

妊娠から出産にいたるまで,女性は子どもを受け入れる準備が整っていく傾向がありますが,男性はその変化についていけない,あるいは,ついていこうとしないケースも珍しくありません。

育児に対して,夫婦で温度差があると,妻のストレスの要因となります。

 

④ 夫婦のコミュニケーション不足

妻は生まれた子どもを優先する生活になり,夫婦間のコミュニケーションが希薄になることがあります。

夫が,そのような妻に不満を感じ,お互いに会話やスキンシップが減り,すれ違いが生じてきます。

夫婦のすれ違いが解消されないでいると,産後クライシスが長期に及び,やがて離婚問題に発展します。

 

(3)産後クライシスの解決法

まずは,夫婦が状況を理解し合うことが大切です。

特に,妻は妊娠・出産・育児によって,身体的にも精神的にも疲れ切っています。

このような妻の状況を夫が理解し,寄り添う姿勢を見せることが大切となります。

夫が「手伝う」のではなく,主体的に動けるかが重要なポイントとなるでしょう。

二人で協力し合い,産後をうまく乗り越えられると,いつまでも良い夫婦仲が築けるかもしれません。

 

2 産後クライシスで離婚し、慰謝料を請求されるケース

産後クライシスが原因で離婚する夫婦は,少なくありません。

夫婦は,話し合いによって合意にいたれば,どのような理由であっても離婚することができます。

しかし,離婚によって,常に慰謝料を請求されるわけではありません。

慰謝料を請求されるケースとしては,例えば,産後クライシスの背景に,夫による不貞行為やモラハラなどがあった場合です。

 

(1)慰謝料とは

不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償金のことです。

産後クライシスであることは,不法行為といえず,ただちに慰謝料請求が認められるわけではありません。

 

(2)慰謝料を請求されるケース

産後クライシスとなった原因や背景に,不法行為が認められる場合には,慰謝料を請求されることがあります。

例えば,以下のような事実が認められる場合です。

① 不貞行為があった

② DVやモラハラがあった

③ 悪意の遺棄があった など

 

① 不貞行為があった

不貞行為が認められる場合,妻から慰謝料を請求されます。

出産直後は,女性ホルモンの低下によって,妻の性欲が減退します,

また,子ども中心の生活環境となることによって,夫婦のスキンシップが無くなることがあります。

そのため,夫が配偶者以外の女性と不貞行為に及んでしまうことがあるのです。

このように,産後クライシスの背景に不貞行為が認められると,不法行為責任を負うこととなります。

関連記事:不倫(不貞行為)での慰謝料は減額・拒否できる?5つのポイントと相場判例

 

② DV・モラハラがあった

妻に暴力を振るっていたり,人格を否定するような発言を繰り返したりする事実があると,妻から慰謝料を請求されます。

DVは,殴る蹴るといった暴力に限られず,暴言や束縛による精神的DVや生活費を入れずに金銭の自由を奪うという経済的DV,人付き合いや行動を制限したりする社会的DVなども含まれます。

モラハラについては,以下の記事で詳しく解説していますのでご参考ください。

関連記事:モラハラを理由とする慰謝料請求

③ 悪意の遺棄があった

「悪意の遺棄」とは,民法で定められた「同居義務」,「協力義務」,「扶助義務」のいずれかに反する行為です。

例えば,正当な理由なく同居を拒む,健康であるのに働かない,ギャンブルなどで浪費して生活費をいれないといった場合です。

産後クライシスが原因で,夫が一方的に出て行く,生活費を入れないといった事情から慰謝料請求が認められるケースがあるため,注意してください。

 

3 産後クライシスで離婚を考えた際に注意すべきこと

ご自身にとって,離婚することが本当に良い選択であるのか,今一度考えることをお勧めします。

後悔しないためにも,産後クライシスで離婚する際には,以下のような点に注意しましょう。

 

(1)すぐに離婚を決意しない

産後クライシスとなって,それほど期間が経っていない場合には,夫婦仲を修復することは困難ではありません。

産後クライシスは,多くの方にとって一時的なものです。

まずは,相手と話し合い,相手の気持ちを理解し,改善点を見つけましょう。

「子はかすがい」と言われるように,夫婦が,生まれきた子どものことを優先に考えると,お互い歩み寄れるかもしれません。

 

(2)親権と面会交流について取り決める

どうしても離婚するという場合には,親権や面会交流について話し合いましょう。

夫婦が離婚する際には,必ず子どもの親権者を定めなければいけません。

夫婦間の話し合いで決まらない場合には,最終的に,裁判で,監護実績や経済力,生活環境などによって総合的に判断されることになります。

もっとも,子どもが小さい場合には,母親が親権者になることが多いのが実情です。

そのため,面会交流権の取り決めが重要となってきます。

面会交流権とは,子どもと離れて暮らす非監護親が,子どもと直接会うなど,親子の交流を図る権利です。

離婚を考えた際には,親権や面会交流権について,必ず夫婦で話し合いましょう。

産後クライシスによる離婚の場合,どうしても感情的になりやすく,直接話し合うことが難しいかもしれません。

そのような場合には,一度,弁護士に相談することをお勧めします。

関連記事:離婚時の親権はどうやって決まるの?具体的な決め方と流れ

関連記事:子どもの親権を取り戻したい!離婚後に親権を取り戻す方法

4 まとめ

今回は,産後クライシスが原因で離婚する際に,慰謝料請求されるケースや注意点などについて解説しました。

産後クライシスとは,出産後,急激に夫婦仲が悪くなることです。

産後クライシスとなった原因や背景に,不法行為が認められる場合には,慰謝料を請求されることがあります。

例えば,不貞行為やDV,モラハラなどが認められる場合です。

もっとも,産後クライシスは,一過性の場合が多く,離婚がベストな選択とは限りません。

それでも離婚すると決めた場合には,一度,弁護士に相談することをお勧めします。

弁護士であれば,あなたに代わって相手と交渉することが可能であり,慰謝料請求に限らず,親権や面会交流権を含む離婚問題全般について解決することができます。

このコラムの監修者

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